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《紙避行記》曲パロ
紙を折って月に行こう!
現実から逃げるために。
君も一緒に、幸せになろう。
**僕ら月でも一緒だよ。**
--- ✕月✕日(火) ---
--- 今日もみんなに虐められちゃったね。僕のことが嫌いなんだって。 ---
--- 殴ってきたからやり返したら、先生に怒られた。 ---
--- お友達を殴っちゃいけませんって。あの子達とは友達じゃないのになぁ。 ---
--- でも、今日もユリが弁明してくれたよね。 ---
--- 僕の友達はユリだけだよ。 ---
--- いつもユリを巻き込んじゃってごめんね。 ---
--- 助けてくれてありがとう。 ---
---
--- ☓月☓日(水) ---
--- 知らなかった、てっきり、スグリには私以外にも友達いると思ってたよ。 ---
--- んー、私は友達として当然のことをしただけだし、お礼なんていらないよ。 ---
--- でもスグリが辛い思いをするのは嫌だから、助ける。 ---
--- ようやくスグリが幸せになれる日だよ、明日は。頑張ってね。 ---
---
僕は交換日記を読み切って、パタンと閉じる。
いよいよ、明日だ。
僕がユリに教えてもらった、《《幸せになれる方法》》を実行するのは。
寝る前に交換日記を新聞紙で包んで、そっと燃やした。
ユリ曰く、僕らが幸せになろうとしてるのがバレたらいけないんだって。だから、なくすの。
えっと、まずは紙を折る、っと。
僕はユリにもらった紙に書いてある通りに、紙避行記をつくる。
ただの紙飛行機じゃないんだよ、現実から逃げ切るための飛行機さ。
にしてもユリ、なんでわざわざ黒い紙に白ペンで書いたんだろう__まぁ、この際どうでもいいや。
僕は紙避行記を完成させた。見た目は普通の紙飛行機だけど……でも、ユリが言ったんだし、大丈夫。
これを百個作るらしい。大変だけど、幸せになるため。
僕は家から持ち出したありったけの紙を、全部紙飛行機にしていく。
授業参観の書類も、赤点のテストも、全部全部なかったことにしていくんだ。
ホッチキスで留められていたものは外してひとつひとつ折っていった。
なんだか、魔法使いになったみたいで楽しかった。
最後の一個は特別なんだ。
学校から盗んできた大きい画用紙で折ったんだ。本当に月まで行けそうだった。
「よし……それじゃあ、行くよ」
ユリには何もしてやれなかったけれど、それは僕が嫌だから、最後にとっておきのお菓子をあげた。
ユリが好きな桃のお菓子。
君も一緒に、だよ。
僕はふっと笑みを浮かべ紙避行記に乗り、屋上から発った。
月まで行けるさ。きっと。
ユリも、一緒だから。
なんか、サイコパスになりましたね。
結構伏線とか入れ込めた気がします、私にしては。
ユリとスグリの花言葉とか、縦読みとか、ごにょごにょごにょ……。