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焔凍不鉄-7
また暫く後々、神々再び現れむ。
なぜ来たと人聞くに、焔乃神答えるる。
「……なんとなく」
鳥肌が立った。
何も考えずにそのままを吐き出したようなたった一つの単語それなのにそればかりを反芻してしまう。
菓子谷は机に突っ伏し、深い溜息をついた。
横隔膜が上がり切って身体が震え始めた時、無気力そうに顔だけを上げ、縋るように言う。
「なんとなく、なんて言うなよ……。」
散らかった机、ノート、辞書。
部屋の端に乱暴に投げられた古文の参考書は、大きな音を立てて壁にぶつかった。
「勇也、何事…」
「うるせー喉弱者バカ母!!のど飴でも食ってろ!!」
「和田原君、国語って誰先生担当ですか?」
「加藤先生です」
「あっ…まじですか…」
家路、瀬野が乗る駅を通り過ぎる。
「急にどうしたんですか?」
和田原が聞く。
「いや…恥ずかしながら俺あの…授業聞いてなくて、ノート取れてなくて…。」
「あー。頑張ってください」
「頑張ります…」
完全に諦めた瀬野は空を見上げた。
「…空綺麗ですね」
「そうですね」
入道雲は散り、薄くなびいた雲が色の境目に花を添えるように浮かんでいる。
沈みかけた光はそれを真紅に染めた。
「あの古文の題名、何から来てるんですかね」
ぼんやりと、和田原が呟く。
「さぁ、初めの2文字はわかりますけど後の2文字が…なんでしょうかねあれ」
「明日便覧見てみますか…」
いつのまにか日は落ちて、街灯が足元を照らしていた。
「じゃ、また明日」
家に入っていく和田原に手を振りながら、瀬野は気づいた。
「古文のノート…どうしよ」
「ただいま!!」
「おーうおかえり奏架、待って待ってお茶入れる」
神主兄は慌ただしく走っていく、それを見て瀬野は苦笑した。
「そんな慌てなくていいって…。」
「あっれ、奏架帰ってんじゃん、おかえり」
神主弟が柱から顔を覗かせた。
「へーい、ただいま。…そうだ、お前ら神主だよな、古文って得意?」
「んー、まあまあってとこじゃない?物によるけど。」
瀬野がバッグから教科書を取り出しながら聞く。
「じゃあさ、焔凍不鉄って知ってる?」
「あーーー、知ってる、めちゃくちゃ知ってる。有名よな。烈火兄貴のあだ名の烈火もそれに憧れた奴が付けてったから。」
「えっ…そうなの!?」
「いえーす」
茶を持ってきた神主兄が答える。
やがて隣に座った。
「急に古文の話するなんて珍しいじゃん、奏架」
「ノート取れてないから分からなくてさ、1番わかりそうな人がお前らだったんだよ」
「勇也の方が分かるんじゃない?俺達より。ね、ひょう」
「…ん、まあそうじゃない?知らんけど」
「いや…菓子谷先輩古文苦手だから自分でやれって言われてさ、やばいんだよ俺…」
瀬野は懇願するように神主兄弟を見つめる。
やがて立ち上がって、吐き捨てるように言った。
「……ちっ、イケメンがよ!!羨ましーな!!」
【朗報】テスト期間中の俺氏。「勉強が嫌いだぁぁぁぁ!!でも絶対400取ってやるぜ!!待ってろ5ぉぉぉぉぉ!!!」
だそうです。
塾の自習室で書いてる模様。