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2 「正装の怪物」「黒紫蝶」
〈〈side |読心者《マインダー》
「半分持つよ」
そう言い、正装の怪物さんは書類の全てを軽々と持ち上げた。
「ありがとうございます」
コードネーム、正装の怪物。
近距離ボスだ。赤茶色の短髪で筋肉質、つり目、そして何よりどんな時、場合でも正装を身に着けている。
癖は嘘を吐くこと、何の嘘を吐いているのかまでは知らないけれど。
手は平均より大きくて厚め、呼吸は早め。
こんなに設備が整っているのなら、書類を自室に運べる機会ぐらいあればいいのにと毎度のように思う。
「読心者様も居たんですね」
エレベーターの方から声がして、そっちの声がする方を見た。
そこには黒紫蝶さんがこちらに向かって走ってきていた。
コードネーム、黒紫蝶。
近距離部下だ。黒髪を下で1つに結っていて、彼岸花と紫の蝶、黒の蝶が描かれた黒い羽織か特徴的な綺麗な顔立ちをした男性だ。
手は平均サイズで薄め、呼吸は普通の速さ。
「こんにちは、読心者様。お久しぶりです」
「私が書類持ちますよ、どこに届ければ?」
黒紫蝶さんは続けてそう言葉を発した。
ありがとう、と軽く会釈した正装の怪物さんは黒紫蝶さんに書類を受け渡した。
そして、書類の一番上に置かれた2つの薄い書類を手に取って、まじまじと見つめていた。
「それは私の部屋に」
「了解いたしました」
そんな言葉に私はそう言葉を返した。そういうと、黒紫蝶さんは1人エレベーターの方に向かって歩いていった。
「これはなんの情報かい?」
黒紫蝶さんが去ったあと、黙っていた正装の怪物さんがそう私に声をかけた。
「狂水さんとコインさんに届ける、拷問で漏らした情報です」
「1人で2人分届けるのは腰が折れるだろう、私はコインに届けよう」
そう言った正装の怪物さんは私に1つの書類を渡して、私が礼を言うより早く何処かに去っていった。
私は狂水さんに届けるのか、と心の溜め息をついていたが、命令されたのなら行動するしかないと心を入れ替え、私もエレベーターに向かった。