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彼女
俺の名前は|鈴合ゆう《すずごうゆう》。
|漢字《やまなしかえで》の事が好きだ。
勉強も運動もできるところが好きだ。
でも、俺が一番好きなところが優しいところだ。
山梨は誰にでも優しい。
でも、この恋は叶わないだろう。
俺は山梨と話したことがほとんどない。
最近山梨は隣のクラスの男子とよく話していて、周りの奴らは山梨はその男子が好きなんだろうな、と言っている。
悔しい。
俺だって山梨の事好きなのに。
そして次の日、スマホをいじっている俺の耳に驚きの言葉が飛び込んできた。
「山梨さんはご両親の仕事の都合のため転校します」
その瞬間頭が真っ白になった。
転校する?
山梨が転校してしまえばこの恋は叶うことは絶対にない。
そう思った男子は他にもいたのか、放課に山梨に告白していた。
しかし、山梨は全員を断った。
ちなみに俺は告白してないからまだチャンスはある。
でも、不安で告白できないまま山梨は転校していった。
~5年後~
俺は大人になって東京にやってきた。
毎日忙しくて山梨の事を考える暇もなかった。
そしてある日、俺の勤める会社に新人が入ってきた。
そいつは前にどこかで見たことがあるような顔だった。
そいつはにこりと笑うと自己紹介を始めた。
「山梨かえでです」
頭が真っ白になった。
まさか山梨だったとは。
また会えたんだ。
その感情で後の言葉は聞いていなかった。
その後の仕事はミスを連発してしまい上司に怒られてしまった。
やっとのことで仕事が終わり帰ることにした。
「あのー。あなたって鈴合ゆう君だよね」
突然俺の名前を呼ばれて驚いた。
急いで振り返るとそこには少し不安げな表情の山梨が立っていた。
俺は立ち上がり山梨の正面に立つ。
「そうだけど、お前って○○高校のあの山梨かえでだよな?」
そう言葉を返すと山梨はニコッと笑い、俺に近づいて耳元でささやいた。
「そう!ねえ、この後○○商店街のカフェに来てよ。話したいことがあるの!」
俺は周りの奴らにバレないように小さくうなずいた。
そして俺たちはカフェに向かって歩いた。
そのカフェは最近できた場所で、高校生から会社員、お年寄りまでさまざまな年代の人が利用している。
俺たちは一番端の席に座るとそれぞれ俺はコーヒー、山梨はオレンジジュースを注文した。
山梨が「オレンジジュースにしよ」と言ったときは驚いて笑いそうになった。
その後は特に会話もなく山梨は注文したオレンジジュースをストローでかき回しながら、外を見ていた。
その沈黙に耐えられなくなった俺は山梨に声をかけた。
「なあ、山梨。お前の言ってた話ってなんだ?」
すると山梨は急に真剣な表情になって俺の目を見た。
「鈴合君。私ね、鈴合君の事が好きだったんだ」
俺はパニックになった。
俺の事を山梨が好きだった?
一言もしゃべらない俺を見て山梨はまた話し出した。
「いつもカッコいくて優しい鈴合君がいつの間にか好きになってたんだ」
その言葉を聞いても俺は何も言葉を話すことができなかった。
頭の中がごちゃごちゃになって訳が分からない。
そんな俺を見ると山梨は悲しそうな顔をした。
「ごめんね。こんな話迷惑だよね。鈴合君が私のこと好きなわけないのに……」
そんな山梨を見てやっと俺は話すことができた。
「実は俺もお前のこと好きだ」
そのとたん山梨はパッと顔を上げて笑った。
「ねえ!それってつきあってもイイってことでしょ?やったぁ!」
俺の返事も待たず喜ぶ山梨を見て俺は思わず笑ってしまった。
山梨はキョトンとした顔をすると、
「なんで笑うの?私なんか変なこと言ったっけ?」
と言ってきた。
俺は返事を待たずに喜ぶ山梨が面白くって笑ったと伝えると今度は山梨が大笑いした。
「あはは。そういうことだったんだね……って、つまり私とつきあえないってこと?」
山梨は興奮気味でパニックになっているようだ。
「おいおい、少し落ち着けよ」
そう声がけするも山梨は全然落ち着かない。
何度も声をかけてやっと山梨は話すのをやめた。
俺は落ち着いた山梨に静かに話しかけた。
「お前とつきあいたい。さっきは誤解させてしまったかな。ごめんな」
山梨はホッとしたようで、机にうつぶせになっていた。
その後俺たちは会計を済ませて家に帰った。
俺たちは2年付き合った後めでたく結婚した。
そして現在も幸せに暮らしている。
END
長くなってしまいましたね……。
読むのお疲れさまでした。
最近ホラー小説だけ書いていたので、たまにはハッピーエンドの小説を書こうと思ったのがこの小説ができたきっかけです。