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第11話:最後の命令
ターゲットの工作員からファントムの真の目的を聞き出した4人は、怒りに震えていた。長年信じてきた「楽園」が、自分たちを操るための卑劣な檻だったという事実は、彼らの心を深く傷つけた。
「あの男は、私たちの中にあったわずかな人間性すら、利用していたんだ」
白藍が、静かな怒りを込めて言う。
「もう許さない」
仄は、スティレットを握りしめる。
「あいつの思い通りにはならない」
雷牙は、男から得た情報を元に、ファントムの本拠地を突き止める計画を立てていた。しかし、その前に、彼らは捕らえた男をどうするか決める必要があった。
「この男は、証人として重要だ。安全な場所に隠そう」
玲華が提案する。
彼らが男を連れて隠れ家に戻ろうとしたその時、ファントムから彼らのスマートフォンにメッセージが届いた。
『裏切り者は排除せよ』
メッセージには、男の写真が添付されていた。ファントムは、彼らが男を捕らえたことをすでに察知していたのだ。
「奴め、どこから監視してるんだ!?」
雷牙が周囲を見回すが、監視カメラの類は見当たらない。
『そして、お互いを殺し合え』
次のメッセージには、4人それぞれの写真が添付されていた。
「ッッッ!!」
4人は、息をのんだ。ファントムは、彼らの絶対のルールである「仲間は傷つけない」ことを知った上で、彼らにお互いを殺し合うという非道な命令を下したのだ。
「あいつ、マジで許さねぇ……!」
雷牙が怒りを爆発させる。
「ファントムは、私たちが感情的になって自滅することを狙っている」
玲華が冷静に分析する。
「彼にとって、私たち4人全員が邪魔になったのよ」
男は、震えながら呟いた。
「奴は、あなたたちが仲間割れして自滅するのを、楽しみにしているんだ…」
仄は、白藍の顔を見た。白藍もまた、仄を見つめ返した。その目には、恐怖ではなく、深い愛情と決意が宿っていた。
「私たちは、お互いを傷つけたりしない」
白藍が宣言する。
「それが、私たちに残された唯一の人間的なルールだ」
雷牙と玲華も、互いに頷き合った。彼らは、ファントムの非道な命令を拒絶し、自分たちの意志で行動することを選んだ。
『命令に従わなければ、君たちが永遠に楽園に戻ることはない。そして、私が直接君たちを排除しに行く』
ファントムからの最後の警告。しかし、彼らにとっては、もはや「楽園」は偽りの檻でしかなかった。
「ファントム、覚悟しろ」
雷牙が、怒りに満ちた声で言う。「お前が作った偽りの楽園を、俺たちが終わらせてやる」
彼らは、捕らえた男を解放し、ファントムの本拠地へと向かう準備を始めた。長年の支配から解放され、真の自由を求めて戦う彼らの目には、希望の光が宿っていた。
🔚