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天才ちゃん!5
私はこのクラスが気に入っている。
授業が簡単じゃなくて普通になったし、みんなと話せる!
もう何もいらないと思う。
「ねぇ! 今日一緒に博物館行かない? いま特別展やっているんだ!」
しずちゃんに聞いてみた。
「何の?」
「人間国宝のものを集めている展」
「もうちょっと勉強になるのもはないの?」
「うーん…じゃあ、こっちの博物館行こう!すぐそばだし、地学と生物の勉強はできるよ!で、その後こっちに行くの!」
「うーん、まぁ、そこならいっか。その代わり、解説してね。」
「わかった。」
やったー! しずちゃんがついてきてくれる! なんか久しぶりな気がする。
あ、そうだ。
「いろはちゃん、今から博物館行くんだけど、一緒に行かない?ここなら親も大丈夫だよね?」
「博物館?そこなら親も怒らないと思うわぁ。」
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博物館? そこって友達と普段から行くところだったっけ?
何か特別なときに行くところのような気がするのだけれど。
「? どうした?」
悠ちゃんの行動に少し驚き、少し世間ずれしたところに呆れながら、けど、そんなところもかわいいなぁ、と癒されていたら、不思議に思われたらしい。
「ううん。とりあえず、いけると思う。」
「やったー!」
あぁ〜本当に癒される。
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聞いてみたところ、乃蒼ちゃんは今日は塾だそうだ。
頭がいい人は大変だと思う。
だからきっと、授業で先生に当てられても、しっかり答えられるのだろう。
私は授業を普通に受けているつもりだけど、当てられない。先生にも怖がられている気がする。
「勉強した勉強した。」
「久しぶりかもしれないなぁ。塾以外でこんなにしたのは」
「本当?あんまり細かいところは教えられなかったけど…」
「十分十分」
「ところで悠ちゃんはどこでああいう知識を知ったの?」
「小学校の時から、ああいう博物館とかには行っていたから。放課後に。」
「どうりで職員さんと顔なじみだったんだねぇ。」
「まぁここらへんに来たのは中学からだけど。で、何回も言っているうちに、職員さんに顔を覚えてもらえて、で、話しかけてくれるからいろいろ聞くようになった。」
「あ、そんな事情があったんだ!そういえば今まで聞いたことなかった。」
「そういえばそうかも。今まで聞かれたことなかった。」
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私は金糸雀悠が嫌いだ。
小学校は、あいつと同じ学校だった。
中学校でも高校でも、そうなった。しかし、私はあいつがいるかぎり、1位をとることができない。
中学も、高校も、私はあいつの首席の次、あいつが休んだら、挨拶を考えることになる次席だった。
私は高3までの12年間中、8年間も同じクラスだったことがある。
私はあいつのことが好きではなかったから話しかけなかったし、あいつも私には話しかけてこなかった。
あいつの評判は、追いつけそうなものはあいつを嫌い、完全に追いつけない者はあいつを崇拝する。そんな感じだった。
あいつは私と小中高が一緒だったとは気づいていないのだろう。
そして、1位以外を今まで取ったことがないのだろう。
普通の人間ならするミスをしない、人外だ。
小学校の時だって…
あいつは他に何人も100点を取っていたから自分を普通だと思っている。
しかし、あのテスト、最後の方の難易度は高く、全教科で100点を取ることは難しい。みんな、取れていたとしても2教科くらいまでだった。
つまり、そういうことだ。
あいつは周りに興味を持っていない。それなのに自分は話しかけてもらえないときっと思っている。そういうところもムカつく。
高校でもあいつは崇拝を受けていた。
当たり前だ。首席の上に容姿も良く、テストでミスらしいミスをしない。いつも100点で1位は当たり前。
これが崇拝の対象にならないわけがあろうか?
さすがに日本で一番偏差値の高い高校だから、崇拝よりは、憎しみがみんな勝つだろう、などと生ぬるいことを考えていたときもあった。
しかし、みんな崇拝をする。
そして、2位である私には目もくれない。
高校3年生で、また再開したときは、しゃべるようになっていて、これなら超人も普通に感化されるかと思ったが、そうはなっていなかった。
あいつは、あくまでも金糸雀悠。
その本質は変わらない。
いつまでも受動的で、被害者打っているだけ。それで周りに悪影響を与える、いうならば、災厄だ。
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