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collaboration.2
「英国出身の迷ヰ犬」の番外編(?)になります。
ののはなさんとのコラボです。
collection.1
https://tanpen.net/novel/67ced1c3-dad6-446e-83d1-522b3741e934/
ルイスside
「えっと、港の方に行くとワゴンのクレープ屋さんがあるんです!」
そうなんだ、と僕は答えながら辺りを見渡す。
此処は矢張り横浜だ。
可能世界と言えども、見て分かる違いがあるわけではない。
でも、僕がいた世界とは同じだとしても、何処か違う。
誰一人知り合いの居ないのは少しばかりツラい。
でも、この世界の住人は誰も|戦神《僕》を知らない。
そう思うと、少しだけ心が軽くなったような気がした。
「所で、さっき云ってた《《狙われる》》と云うのは……?」
紅葉が確か、そんなことを言っていたような気がする。
探偵社とマフィアが手を組むなんて、どれだけ厄介な組織なんだ。
「最近、外国から来た組織の人達が横浜を荒らし回っているらしくて……」
「此処の二つの組織で争っている場合では無いな、と……一時休戦している感じです」
「……ふーん」
組織についての情報は無い、ね。
此方の世界には居なかった組織だろうか。
というか、僕から聞いておいてアレだけど部外者に話していい内容なのかな。
「そうだ! 折角来たんですから、少し観光していきましょうよ!」
「オ、オイ……」
えっ、と変な声を出してしまった。
普通に唐突だな。
「大丈夫かなぁ…アハハ…」
「楽しそう」
「あっちに見える建物は有名な赤レンガ倉庫です!」
「急に始めるな」
中也君はどの世界でもツッコミか。
「知ってると思う」
「大分有名だからね……」
「う、うん……」
流石に僕の世界にもあるから知ってる。
「うぅ……あ、じゃあ大桟橋は?」
それもあるな。
まるでガイドさんのように観光をしていく桜月ちゃん。
このまま元いた世界へ帰る手掛かりを探してもいい。
でも、流石に観光名所ばかりでは情報なんて何もないだろう。
「そ、其れ位にしてクレープを食べに行こっか」
「クレープ!」
「クレープ!」
「ま、全く同じ反応だ……」
思わず口に出して驚いてしまった。
敦君の言葉に全く同じ反応をしているのだ。
「一応双子だからな。性格は正反対に限りなく近いが」
「双子、なんだね」
姉妹かと思っていたが、双子か。
確かによく似ている。
「あ、あそこだ!」
「見っけたー!」
敦君の視線の先には、確かにワゴン販売のクレープ屋があった。
話している間に目的地に着いている。
潮風が気持ちいいな、と思っていたらふと、鏡花ちゃんが呟いた。
「お金持ってきてない」
「あ、忘れちゃった」
桜月ちゃんもそう言っていた。
普通に異能世界に財布があるんだけど、取り出すわけにもいかないよな。
何故なら、僕は|英国《イギリス》人だから。
彼女達から見れば、僕は監視対象でしかない。
突如マフィアのビル前に現れた異国人。
そして、横浜を荒らしまくっている海外の組織。
無関係と考えることの方が難しいだろう。
(……中也君が着いてきたのは僕の監視もあるのかな)
思わず笑い出しそうになった。
僕の過去を誰も知らないことに喜んでいた数分前の自分が、莫迦みたいだ。
誰も僕を知らないなら、《《彼らではない彼ら》》との関係も信用も何もない。
本当に、莫迦だな。
どうにか笑い出すことを堪えて、僕は冷静に会話に加わることにした。
「僕も持ってきてないな……」
「それ以前にお客さんに奢らせる莫迦と阿保はあの自殺マニアしかいませんよ!!」
「自殺マニア……」
「あの糞太宰の事だ」
「糞太宰……」
この世界でも、太宰君は色々な渾名が付けられてるんだな。
本当、酷い言われようだ。
No side
「はっっっくしゅっ」
「太宰君、風邪かい?」
「此処で風邪をまき散らすな! この迷惑噴霧器が!」
「(私の噂話かな? イケメン過ぎる探偵社員がいたとか((」
ルイスside
「僕もお金無いよ」
どうやら、敦君もお金がないらしい。
「ってことは……」
「俺が全員分奢るのかよ!」
「ごっめーん中也~」
「桜月手前絶対ェ思ってねぇだろ」
「はいはいルイスさんが居るから」
桜月ちゃんと中也君、仲良いな。
僕の世界の彼にもこういう人はいるのだろうか。
そんなことより、中也君に謝らないとな。
「あ、なんかごめん……」
「いっいや違います! ルイスさんには奢ってあげてと!」
「ルイスさんはそうだが手前には買わねェ!」
「えぇ~」
反応が毎回可愛いな、桜月ちゃん
「桜月ちゃん可哀そうに……自業自得だけど」
「私も無いの?」
「3人共強いなぁ」
そんなこんなで、中也君が全員分払うことになった。
何かお礼、と考えたけど異能空間から財布が取り出せないのでは何も渡せない。
でも、そんなことより──。
「美味しい…」
「ですよね!」
モクモクと食べている鏡花ちゃん可愛いな。
こういう女の子らしい面もあるのかな、僕の世界の彼女にも。
「私もたーべよ……美味し!」
「何か済みません僕迄」
「結局こうなンのかよ~!」
「ほら、私の半分あげるから」
「駄々を捏ねてる子供の扱いをすンなー!」
まるで恋人だな。
そんなことを思いながら笑っていると、敦君と鏡花ちゃんも笑っていた。
「要らないんだったら食べるよ~」
「ぁ、た、食べる……」
「え、何急にかわいい」
「うるせーっ! 何だこれ美味ッ!?」
「確かに、このお店のクレープは美味しいね」
「ですね!」
「最初から食べるって云えばいいのに」
皆が幸せそうに笑っていた。
どうしても、元の世界の彼らと比べてしまう。
そして、もしかしたらと想像してしまうのだった。
「あれは……?」
ふと見た沖の方に、不思議な光景が広がっていた。
まるで海面に垂直に刺さっているかのような、一筋の光。
誰もが僕が指差した先にある光景を見て、驚きの声をあげる。
「少し、近づいてみますか」
「そうだね……」
「危険じゃねェか!?」
「得体の知れないものだし……」
ん~、と少し考え込む桜月ちゃん。
何か分からない物に迂闊に近づくのは、確かに危ない。
でもアレが帰る為の手掛かりになるかもしれない。
なら、近づかないわけには──。
「それじゃあ、」
桜月ちゃんが何かを言おうとした、その瞬間。
ふと、視界の端で何かが消えた。
「鏡花ちゃん!?」
「居ねェ……!?」
先程までそこに居た筈の鏡花ちゃんの姿が、どこにも見当たらない。
軽く全方向見渡したが、それらしい人影はない。
「消えた……?」
「うそ、でしょ……!?」
桜月ちゃんが動揺しているのが分かる。
何処なの、お姉ちゃん。
そう、彼女は呼びながら探していた。
「──!」
その時だった。
ほんの一瞬、本当に一瞬のことだ。
あの海面へ刺さって居る光が、此方に向かってくるのが見えた。
そして、いつの間にか桜月ちゃんの足元には穴のようなものが空いている。
視界の中、目の前に彼女が居たからこそ分かった。
その表情はもう、諦めている。
落ちていく桜月ちゃんを見て、僕は異能力を発動しようかと考える。
異能空間に送ることが出来たら彼女は助かる。
でも、此処で発動したら──。
「させねェよ!」
僕の真横を何かが通り過ぎる。
正体を理解したのは、少ししてからだった。
「中也っ! でも多分中にお姉ちゃんが! ルイスさん、敦くんは大丈夫っ?」
「僕達は大丈夫!」
「桜月ちゃん、朱雀を放って!」
中也君が、助けに行ったのか。
重力操作で自身の負荷を軽くすることで出来る高速移動。
まだ正体がハッキリしていないのに行動してしまうのに驚きながらも、僕は疑問を口に出す。
「桜月ちゃんの、異能は……奇獣の使い手?」
「嗚呼。あと季節の奴が如何とか云ってたな」
「ッ、判った! 奇獣『朱雀』! お姉ちゃんを、連れ帰って来て!」
そして桜月ちゃんは、朱雀と呼ばれた異能生命体であろうものを穴の中へと放った。
きちんと地面に立とうとしていたが、ふらついたのだろう。
倒れそうになる彼女を、中也君が受け止める。
まだ気が動転しているのだろう。
確かに鏡花ちゃんが戻って来れなかったら、と考えると拳を握る力が強くなる。
「朱雀だ!」
そんな敦君の声がした。
顔を上げると、そこには朱雀と鏡花ちゃんの姿があった。
すぐには動けそうにない桜月ちゃんに代わり、僕は急いで駆け寄る。
「お姉ちゃん、大丈夫……?」
「っ……」
魘されている。
悪夢でも見ているのか。
否、寝てないから夢じゃないな。
軽く診てみたけど、傷などはなく気絶しているだけのようだった。
「気絶しているようだね」
「其れだけで済んで本当に良かった……」
「だな……」
穴の中がどうなっていたのか分からないが、少なくとも怪我する原因はなかったのだろう。
何かあるといけないから、今すぐマフィアのビルか与謝野さんに診せないと。
一応の為に辺りを見渡したが、穴はもう無くなっていた。
アレが元の世界へ戻る手掛かりなのか。
それとも、横浜を荒らし回っている組織の攻撃なのか。
現段階では流石に見当が付かない。
とりあえずは撤退したように見える。
今回はギリギリ全員無事だった。
だが次はどうか、分からない。
「……さて、どんな敵が待っていることやら」
そう呟いた声は、誰にも届くことなく消えた。
はい、てことでコラボの二話目です。
投稿が遅くなり済みません。
ルイスくんは元の世界に帰れるんですかね?
次回もどうぞお楽しみに。
ののはなさんの「文豪ストレイドッグス!」もよろしくお願いします!
もちろん「英国出身の迷ヰ犬」もよろしくお願いします!