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春
夢を見ています。もしかしたら違うかもしれませんが、夢ということにしておきます。
少し暖かくなる季節。
私は列車に乗っていました。
いくつか踏切を通過し、遠くの街の明かりさえ消えていくような時間に、その場所へ向かっていたのです。
トンネルの中で、窓に写った半透明の自分と目が合いました。
それは、当たり前と異例の区別がつかない人の目をしていました。
怖かったけど、体は不思議と動きませんでした。
何故でしょうか?
おそらく、この時点でもう夢なのだと思います。
自身が死んでいることに気づかず幽霊となる人のように、この時はまだ私も夢らしき場所にいることに、気づきませんでした。
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辺りに乗客は居ない。
在るのは桜の木だけ。
半透明の自分は、未だにこちらを見つめています。
列車の僅かな揺れる毎に、桜の花びらが前を横切る度に、一瞬だけ視線が離せます。
最後にトンネルの外を見たのは何時だったでしょうか?
私の隣の席にも、桜が生えてきました。
桜の枝葉で隠されて、車内の明かりも薄くなってきました。
もう時期、何も見えなくなります。
暗闇の中、永遠に自分と目が合っている感覚と、桜の匂いだけが残り続けます。
桜の匂い…死の香りです。
昔聞いた話では、桜は毒を持ち、周囲の植物を枯らせるらしいです。
私も死ぬのでしょうか?
私は今、自分が何処にいるのか、自分が何処へ行くのか、自分はちゃんと在るのか、何も分かりません。
全てが始まるこの季節。
同時に、取り残され、無理やり処分されるようなことも、あるのかもしれません。
読まれたからといって助かる保証など無いですが、私はこの文章が誰かに読まれることを、切に祈っております。