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焔凍不鉄-2
「やだなーまじでやだなー古文!!なんで貴方は出来るんですか?『また来る際なり、我等は現れうらぬことなり』なんて何言ってるか俺理解不能なんすけど…!!」
「またそれが来る時は、私達は現れるだろう、って意味ですね。確かに古文は難しいけど貴方の方がテスト高かったですよね」
「いやいやいやいや…そんなことは…ある…けど……それとこれとは違うじゃないですか!」
他愛もない、だが瀬野にとっての灰色の日常を染めたその会話は、沈黙ありながら、途切れながらも、|和田原平音《わだはらへおん》が家に着くまで続いた。
「んじゃまた明日、サラダバー」
そう言うなり瀬野は今歩いてきた方向を走って戻っていった。
「なんでわざわざこっちまで来るかな、バーカ。」
そう皮肉る言葉は、青味がかった空をバックに走る瀬野の耳には聞こえなかったみたいだ。
喘息、花粉症、運動不足。その全ては走ると言う動作に対して十分に不利な足枷だ。
(何で俺走ってんの……?)
『おかえりー!!』
「た……だいま………」
荒ぶる息を押さえながら瀬野は言う。
「ちょちょちょ、どうした…?何があった…?一回呼吸整えろ…」
「はっ………ひゅーっ、ひゅーっ、……ゔ、っ……。ごめ、ん…兄貴。何にもないよ、走っただけ」
「ダウトー!!」「違えよ!」
息を殺した青白い笑顔、何百回とやった事なのに何か罪悪感を感じる。
やがて息が整ってくるとやっと違和感に気付いた。
「そういや、菓子谷先輩今日来てないの?」
「んーとね…たぶんその辺のヤンキーにでも絡まれてんじゃない?」
「いやお菓子かなんか買いに行ってんだろ。」
「先に言っとく、争うなよ。まあなんとなく分かった、ありがと」
神主兄弟は何も言わず、瀬野の目を見つめている。
何か無理しているのを悟られた気がして、動揺を隠すように言った。
「…何?」
「いやなんか」「綺麗な目だなーって」
「やだ照れる…ん…っておめえら何言わせてるんだよしばくぞ!!……なんか言ってよ気まずいじゃん!!うんとかすんとか!」
兄弟は少し考えて言った。
「うん」「すん」
「んーしばくぞ?……あそういえば今日弟習い事だ」
「なにしてんだよ帰ってやれ!」
叫ぶ神主弟の声に背中を押されて瀬野は走り出す。「ばいばーいまた明日!」
少しの静寂の後、神主兄が口を開いた。
「お客さんだよ、ひょう。こんな暗い時によく来るよ。」
「え、……ああ。」
やがて足音が止まると、神主兄が来客に向かって言った。
「お久しぶりだな」
【悲報】国語3の俺氏、伏線張りができない模様