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約束の市民プールと、ふたつのアイス
れもん
終業式が終わって、待ちに待った夏休みが始まった。
カンカンと照りつける太陽のもと、葵(あおい)は青いバッグを肩にかけて、約束の市民プールの受付前で待っていた。
(陸(りく)くん、もう着いてるかな……)
少し緊張しながらキョロキョロしていると、「葵ー!」と元気に名前を呼ぶ声が聞こえた。
白いTシャツにハーフパンツ姿の陸が、手を振りながら走ってくる。
「ごめん! 妹が『一緒に行く!』ってきかなくてさ、お母さんに説得するのに時間かかっちゃった」
息を切らしながら頭を下げる陸を見て、葵は思わずクスッと笑ってしまった。
「ううん、全然待ってないよ。行こう!」
市民プールは、たくさんの子どもたちで賑わっていた。
学校のプールとは違って、流れるプールや大きな滑り台があって、どこを見ても楽しそうだ。
「よし、まずは学校でやったバタ足のおさらいからな!」
陸は頼もしいお兄ちゃんのような顔をして言った。
ふたりで浅いプールに入り、練習を始める。陸のアドバイス通りに力を抜いて泳ぐと、葵はスイスイと前に進むことができた。
「すごじゃん葵! もうバタ足完璧だよ!」
「陸くんが教えるのうまいからだよ、ありがとう!」
練習のあとは、流れるプールにプカプカ浮かんだり、大きな水しぶきをあげて遊んだ。水の中で陸と目が合うたびに笑い合って、時間はあっという間に過ぎていった。
プールから上がると、夕方の風が少しだけ涼しく感じられた。髪をタオルで拭きながらベンチに座っていると、陸が売店からふたつのアイスキャンディーを持って戻ってきた。
「はい、葵の分! ソーダ味でよかった?」
「わあ、ありがとう! ソーダ味、一番好き」
ふたりで並んでベンチに座り、アイスをかじる。プールでたくさん遊んだあとのアイスは、とびきり美味しかった。
「ねえ、葵」
陸がアイスを見つめながら、ぽつりと言った。
「夏休みに入ったら、学校で毎日会えなくなるから……ちょっと寂しいなって思ってたんだ」
葵は心臓がドクンと跳ねるのを感じた。持っていたアイスの手が止まる。
「でも、今日こうして一緒に遊べて……すごく楽しかった。誘ってよかったよ」
陸は照れくさそうに葵のほうを見て、ニッと笑った。夕日に照らされた陸の顔が、いつもより少し大人っぽく見えた。
「私も……すごく楽しかったよ。陸くんと過ごす夏休み、始まったばかりだね」
葵が微笑むと、陸は嬉しそうに頷いた。
「うん! まだまだ夏休みは長いし、今度は夏祭りも一緒に行こうよ!」
「うん、絶対行こうね!」
夕空に浮かぶ大きな道に、ソーダ味のアイスの甘い香りが優しく広がっていく。葵にとって、この夏休みは特別なものになりそうだった。