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第二話
見て、不快に感じても自己責任です。
闇の世界を一人で歩いている、黒髪の少女。その少女について行く、青い宝石の竜。あの竜、もしかして、宝石人間の核?俺は少女が建物の方へ入るのを見届けて、姿を消した。
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藍は四角い建物の中に入った。中は真っ暗で、つまずかないように慎重に移動する。
「ねぇ、霄。」
『ん?』
「ここ、どこだろう?」
『知らね。』
呑気な返事に、藍は思わずずっこけそうになる。霄って頼りにならない……。
『悪かったな。頼りにならなくて!』
すねた言い方に、藍は霄には思っていることがバレるのだと思い出した。
「さっきから、下に向かってる……?」
『正解。いつ気づくかと思ったよ。藍って以外と鈍感。』
いちいち無駄に一言多い霄に苛立ちをおぼえる。
「あっ、灯りだ。」
藍は灯りがある場所に行く。そこは、広々としたホールで、台上には緑の宝石、エメラルドの竜が乗っていた。
「あれも……。」
『元宝石人間の核だな。』
「ここは、闇オークション……?」
『多分な。とっとと出ようぜ。』
霄に促され、藍は会場から出ようとする。
「返せ!」
少年が台上に走った。少年の前に、黒いスーツを着こなした成人男性が立ちはだかる。たちまち、少年は捕まってしまった。
「離せ!葉菜は俺のだ!」
少年は男性の腕にかぶりつく。
「いてっ!お前!」
男性はこめかみに青筋を立てる。そして、少年の胸ぐらを掴むと、鳩尾を思いっきり殴った。
「カ、ハッ…………。」
少年は鳩尾を手で押さえ、うずくまる。
「これで、終わりだ!」
男性は再び拳を振り上げた、その時だった。
**パンッ!**
銃声がなり響き、男性の脳みそが床にばら撒かれた。男性は倒れる。床には血が広がる。会場は静まり返る。その隙に、少年は台上へ駆け出した。藍は見ていた。何者かが、窓とも呼べない小さな穴から男性を狙撃したのを。まぐれじゃないとしたら、かなり正確な狙撃手だ。あいつは。
「誰だ……?」
藍は穴を凝視する。すると、円柱形のなにかが投げ込まれた。それは、床に落ちると煙を撒いた。煙幕弾って奴だろうか……?なにも見えない。狙撃手はなにが目的なんだろう。宛もなく彷徨ってると、誰かにぶつかった。
「すいません……!」
いつもの癖で謝った。
「おまえ、こんなところでなにしてんだ?」
ぶつかった人に聞かれる。よくよく目を凝らすと、ぶつかったのは少年だった。ボサボサで伸びきった艶のない黒髪。そこからのぞいている目は、火のついたように光っている。
「……逃げるぞ!」
少年に強引に手を掴まれ、引っ張られる。
「あなたは誰?」
走りながら藍は聞く、少年は振り返ることなく無愛想に返事をする。
「|東西 緑菜《とうざい みどな》。そっちの宝石は|葉菜《はな》。」
「名前があるの?」
「あたりめぇだ。」
「…………もしかして、あなたも契約者……?」
藍が聞くと、緑菜は黙って、立ち止まってしまった。
「あんたも、か?」
「……うん。私は彩待弖藍。こっちは霄。」
「……そっか。お前も、藍も宝石ハンターに狙われてるのか?」
「うん………。それで、旅を始めた。」
「その旅、俺も混ぜてくれないか?」
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俺は、少女、藍の返事を待っていた。
「こんなとこでなにやってるんだ、|鹿狼《しろう》。」
聞き慣れた声が後ろから聞こえる。俺は微笑みながら振り返る。
「見ての通りだよ、|幽璽《ゆうじ》。」
幽璽と呼ばれた成人して間もないであろう青年は、ニヤッと笑う。
「《《弟》》の告白を盗み見か?趣味悪いぞ。」
「残念ながら、告白じゃない。」
俺は大袈裟に肩をすくめる。それから、再び藍達にいる方を見る。気がつくと、藍と緑菜は消えていた。
「あ~あ。幽璽のせいで、大事な返事を聞き逃しちゃったじゃないか。」
俺はわざと大きくため息をつく。
「告白じゃないんだろ?」
幽璽は動じずに、煙草に火をつけ、息を鹿狼に吹きかける。
「やめろよ幽璽。寿命が縮む。」
鹿狼はむせ込みながら幽璽に文句を言う。
「心配ありがとさん。」
「てめぇの心配はしてない。俺がてめぇの煙草の煙吸ったら寿命が縮むからやめろって言ってんだよ。」
「オォ~すまんすまん。」
幽璽はケラケラ笑いながら謝る。
「そんで、次の目当ての宝石は?」
鹿狼は呆れながら幽璽に聞く。幽璽は口角を上げる。
「オパールだ。」
「そうかい。」
風が吹く。風が吹き終わった頃には、男二人は姿を消していた。
あとがき
ここまで見ていただき誠にありがとう御座います。
幽璽と鹿狼の絡みが書いてて滅茶苦茶楽しいです。
では、また第三話でお会いしましょう。