公開中
かくれんぼ 5
時は20年ほど前に遡る__
当時小6だったわたし・|遊佐零花《あそされいか》は、いじめられていた。
佐奈、真那、和子、優花に。
その時、わたしは「かくれんぼしよう」と言われた。わたしだけが逃げで、ほかが鬼。
わたしはトイレの個室に隠れた。怖くて、怖くて、殴られないか不安だった。電気を消しているから、暗くて、何がどこにいるかわからない。
まるで、亜美と里美たちみたいだった。
亜美は、わたしが来たから助かった。だけど、わたしのもとに、『レイ』は来なかった。もともと、遊びは好きだった。なのに、|遊び《いじめ》を受けていたから、余計に嫌いになった。
「見ーっけた」
リーダー格の里美が来た。
その瞬間、個室のドアがガチャガチャとなにかされた。「出てこいよーっ」という和子や真那、優花の声がした。
その瞬間、光が漏れた。個室のドアが開いた。そこには、意地悪そうな笑みを浮かべる、佐奈たちがいた。
「零花、見ーっけた」
「ああっ!?」
きゃはははは、と、みんなは高らかに笑った。そして、優花がわたしを個室から出した。
「えいっ」
「よいしょ〜っと」
怖くなって、目をつむった。そして、ドンッという衝撃が、下半身にあった。
トイレの奥にある、換気用の窓。小学生がすんなりと入れる大きさの窓。
その窓から、わたしは突き落とされた。
「きゃあああああああ!!!」
本当に、意識を失いかけた。
__「きゃはははは!」__
微かに、4人の声が聞こえた。
ああ、1階に隠れればよかったな…
次こそは、本当に遊びを嗜みたいな…
---
ピーポーピーポーと、煩いほどに救急車の音が鳴る。それは、|遊ヶ丘小学校《あそがおかしょうがっこう》へと向かう。ローカルニュースのアナウンサーが、いつもより真面目な顔をして、ニュースを読み上げた。
「遊ヶ丘小学校の小学6年生・遊佐零花さん12歳が、トイレにある換気用の窓から飛び降りて亡くなりました。警察らは自殺の可能性とみているそうです」
このニュースは、やがて全国の新聞にも載ることになった。
同級生に聞き込みを行ったが、4人を除くすべての人が「知らない」とそっけなく答えた。
ただ、4人だけは、少しばかり青ざめて「知りません」と話していたという。警察は「仲が良かったんだな」と思い込み、4人を疑うことはなかった。