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まさか、あなたですか? 第1〜5話総集編
総集編です。
夜月怜愛は中学2年生の女子。
私立中学校の寮生で、一匹狼タイプ。
読書とポテチが好き。
あだ名は怜愛ちゃん、れいちゃん、れーちゃん。
登校中、交通事故に巻き込まれ、2週間自宅療養をしていた。
療養を終えてやっと帰寮。
もう目と鼻の先には数週間離れた寮だ。帰ったら何しようかな?
平日で誰もいないはずだからのんびり過ごして明日から頑張ろう。
ふと自分の4人部屋を思い浮かべた。
送ってくれた母と別れて寮に入ると寮母さんと中2女子寮生担当の先生 橘 杏先生が出迎えてくれた。
「れいちゃん、お帰りー」
「れーちゃん、元気なった?」
寮母さんが笑顔できいてきた。
「はい!」
笑顔で答え、一通り会話を終えると、橘先生の顔が笑顔から真面目な顔に切り替わった。
「れいちゃん。申し訳ないけど荷物片付けたら事務所に来てくれる?」
「わかりました。」
なんだろう。橘先生があんな真剣な顔をするなんて。きっと何かあったに違いない。
なんか私悪いことしたっけ?
とりあえず靴箱にいってスリッパに履き替えて荷物を片付けに居室へ向かった。
2階の居室エリアで私は違和感を覚えた。
女子寮生全員部屋にいる。部屋の前にスリッパがある。しかもいつも騒がしい感じなのにしーんとしている。
自分の部屋に入ると部屋員の子全員がベットの中にいた。
私が入ってきたのに気づいた詩音ちゃんが
「おかえり〜」
といってくれた。声をかけてくれたのは彼女だけだった。
いつも下品な話をして、時には劇をする騒がしい部屋なのにしーんとしていた。
なんかあったなと思いながら荷物を片付けて1階の事務所へ行った。
そこにはさっきは感じなかった異様な光景がすぐ目に入った。
女性の警官がいたのだ。
私が法に反することをいつした?交通事故のことをききにきたのか?
ドキドキしながら橘先生に声をかけた。
「先生。」
「れいちゃん片付け終わったの?」
「はい。一応。」
そう答えながらも私の目は橘先生ではなく女性警官の方を向いていた。
それを察した橘先生は焦りながらいった。
「あ、こちらの方は警察の方だよ」
女性警官がいった。
「夜月怜愛さんですね。名前は伺っています。わたくし、中央警察の新木です。この寮で起きた事件のことについて捜査しています。」
この寮で起きた事件?なんじゃそりゃ
「れいちゃんにはまだ話してないよね。今から説明するから、とりあえず面談室に行こうか。」
橘先生が滅多に使われない寮の面談室を使うというからなんとなくワクワクしていたがそれ以上に事件のことが気になった。
私と橘先生と女性警察官の新木さんは面談室へ入った。
全員が席に着くと橘先生がこの量で起きたことについて説明し始めた。
「実はね、昨日この女子寮で殺人事件が起きたの。」
「さ、殺人?ですか?」
「そう。もしかしたら自殺かもしれないけど」
いやいや、ちょっと待って。寮から死者がでるって何事?
「そうなんですね、、、」
「そこで誰が関係しているのかわからないかられいちゃんに事件の真相を突き止めてもらいたいんだよね。
れいちゃんは事件に直接関係してるとは思えないからね。あ、だけどしたくなかったらしなくてもいいよ。」
なるほど。先生が真相を調べるのには限界があるってわけか。
確かに私は自宅療養中だったから事件には全く関係がないだろう。
いや待てよ。これを引き受けたら内申点も多少はあがるだろうし(というのは冗談で)、なんといったって楽しそうじゃないか。
ここは引き受けるべき!
「わかりました。最善を尽くして取り組みます。」
そういうと橘先生と新木さんの顔に少しだけ安心した顔が見えた。
「ありがとう。」
橘先生は感謝の言葉を口にした。橘先生は新木さんに目線を向け、新木さんがそれを受けた。
「ではまず。事件の概要について説明します。
殺害されたのは中学2年部屋番号24の今田梨華さん。昨日の午前7時頃に居室内で窒息死した模様です。ちなみに目撃者はおらず、まだ手掛かりは掴めていません。」
今田梨華。隣のクラスの女子か。まだ同じクラスにも同じ部屋にもなったことがない。
一応相槌を打った。新木さんは続けた。
「そこでまずお願いしたいのは中学2年生の観察です。なにか変な動きをしている人がいたら教えてください。情報共有は毎週日曜日の午前9時にしましょう。」
はあ。勝手に話を進められた。その時間、私の大切な紅茶と読書の時間なんだが。まあ反抗しない方がいいことは一目瞭然。
「わかりました。」
「れいちゃん、手間暇かけるようなことお願いしてごめんね。」
「いえ。大丈夫です。できる分だけ頑張ります。」
そういって私は面談室を後にした。
まず中2女子寮生は16人。部屋ごとに順番に思い浮かべる。中2のエリアは部屋番号21〜24。ちなみに中3が1階にある15〜20で、中1が2階の中2と同じフロアにある25〜30。1〜15は空き部屋であった。
部屋番号21
武藤優佳、青木茜、石川秋葉、吉野凛。
部屋番号22
夜月怜愛、瀬尾奈々、佐々山詩音、倉本彩乃
部屋番号23
八重桜優美、衛藤舞花、盛岡花、酒井愛玲奈
部屋番号24
三浦紗季、寺田春菜、今田梨華、上野美香
一体誰なんだろう。
今田さんの部屋員は?寺田さんは今田さんと仲が良かったし、性格も悪くない。三浦さんは血が怖いからっといって絶対医療ドラマをみない。上野さんは性格こそ悪いがどうも人を殺す人だとは思えない。いやわかんないかも。上野さんはお嬢様気質でよく盛岡花を引き連れているイメージ。まさか、上野さんと盛岡さんの共謀、、、。
いやこれはまだ候補でしかないし、盛岡さんは真面目なところがあるからいくら上野さんの命令だとしても従わないだろう。
一応私の中で上野さんは候補の一人だ。
他の部屋の人は、、。思い当たるのは何人か浮かぶ。殺人ドラマが好きで、なおかつ今田さんと仲が悪かった八重桜さん。いつも何しているかわからない青木さん。今田さんと一時期喧嘩しまくっていた武藤さん。武藤さんの取り巻き連中。
もう候補が多くなりすぎて全員を疑ってしまう。
ふと頭の中にひとつの考えが思い浮かんだ。窒息死でなくなったのなら紐で殺されたか、なんらかの跡が残っているはずだ。
私はどのような形でなくなったのか詳しく聞こうと思った。
きっとまだ新木さんはいるはずだ。
しかし、新木さんはもういなかった。そのかわり橘先生がいたので、先生に話をきいた。
「先生。今田さんの死亡時の様子はどんな感じだったんですか?」
「窒息死。でもどうやって窒息したかはまだ新木さんからきいてないからわからない。
きっと明日わかる。」
なるほど。まだ捜査がそこまで進んでいないのか。
今日が土曜日。明日新木さんが来るからまたそこできいてみよう。
私は自分の部屋へ行き、楽な格好に着替えてベットに座り込んだ。
あり得ない人を消去法で消していく。
まず私はあり得ない。そして仲が良かった寺田さんは消される。血を怖がる三浦さんは絶対に人を殺さない。今思えば武藤さんも殺さないだろう。殺せば評点が下がる。石川さんはめんどくさがりだし、意外と真面目で怖がりだから考えにくい。今思えば八重桜は意外と力がないし、体力もない。そのうえ、持病持ちだから人を殺すわけがない。
そう考えていくと全員が候補からなくなってしまった。それはイメージやいつもの行動と違う動きをする可能性だってあるからなんとも言えない。
こういうことを入浴時や食事中も考えていた。
変な動きをする人は見た感じだといない。
日曜日午前8時55分ごろ。
新木さん、橘先生と私は面談室にいた。
「夜月さん、なんか変な動きをしている人はいましたか?」
「いいえ、いませんでした。それに私が思うにこの学年の人では無いと思います。」
「そうですか、、」
新木さんは困った顔を浮かべ、視線をメモ帳に向けた。
まだメモ帳の開かれたページには何も書かれていなかった。
「私も廊下に設置してある防犯カメラで確認しましたがそもそも24号室に入って行った生徒はその部屋のひとたちだけでした。」
ん?部屋員しか出入りしていない?ということは自殺の可能性が高い、、、。
そんなことはない。今田さんはそんな自殺をするような子ではないと私は信じていた。
面談室は沈黙を5分間ぐらいだろうか、保っていた。新木さんも先生も困った顔をしていた。
「そういえば窒息死の詳しい状況を教えていただけますか?」
「そうでした。それが窒息死にしては喉に何かが詰まった訳でも紐で絞め殺された訳でもなさそうなんです。私の中ではもしかしたら窒息死ではないかもと思っていますが。」
え?そんなことある?もう何がなんだかわからなくなってしまった。
月曜日、私は何事もなかったように登校した。
教室の端っこの自分の席に座り、小説を読んでいた時だった。
1時間目が始まるほんの数分前。教室の真ん中の方のから尋常ではない音が。
誰かが椅子から落ちた音。椅子が倒れる音。そしてその後に聞こえたのは「ヒューヒュー」という呼吸だった。
何事かと私は音のした方向に目を向ける。
倉本さんが教室のど真ん中で苦しそうに呼吸をしているのだった。
倉本さんの周りの席の人が慌てて様子をみる。
ちょうどその時、数学教員・中2女子寮生担当橘先生が入ってきた。
「あ、あ、倉本さん!」
寮ではあやちゃんってよんでるのに学校ではきちんと倉本さんって呼ぶのか〜
橘先生が指示をした。
「古沢くん!養護教諭の高岡先生にこのことを伝えて!
櫻崎さん!寮館長(寮長とは別)の上野先生を呼んできて!」
彼女の両隣の席の人に指示を出した橘先生は倉本さんの容態を確認していた。
嫌な予感がした。
倉本さんはもう間に合わないんじゃないか。
高岡先生と上野先生が駆けつけてきた。
倉本さんはもっと苦しそうに呼吸をしていた。
「救急車、呼びましょう。」
高岡先生が胸ポケットからスマホを取り出すと電話をかけ始めた。
「もしもし。救急です。桜和学院中学校・高等学校まで来てください。よろしくお願いします。」
ああ。救急車は間に合うだろうか。
ああ。倉本さんが死んだら女子寮は大変なことになる。
救急車が来た時、まだ倉本さんは呼吸をしていた。
どうか助かってくれ。そう思うばかりだった。
倉本さんのその後は寮に帰ってから聞いた。
間に合わなかった。死因は呼吸不全。
これは殺人事件ではない。この女子寮は、中2女子寮生は、呪われている。
そうに違いない。
きっと次、誰かがまた死ぬ。
なんでそうなるのか。
21号室から泣き声がきこえた。青木さんが泣いてるのだ。
青木さんは優しい。それに比べて平然としている私は何者なんだろう。
いやそんなこと考えてる場合じゃない。
また女子寮生の誰かがこの世を去ってしまうかもしれない。
もしかしたら自分かもしれない。
きっと女子寮生全員そう思っているだろう。
橘先生も焦るだろう。
ああ。
どうすればいいんだ。
日曜日。新木さん、橘先生と面談。
「残念なことがおきましたね。」
新木さんは倉本さんのことをもう知っているようだ。
「本当に残念だと思います。ただここで考えらることは3つ。1つは偶然たまたま2人が同じようなタイミングで死んだということ。2つめは今田さんは殺害されたが倉本さんは偶然なくなった。3つ目は2人は誰かに殺害されたということです。」
「そうですね。仮に1番目の理由が正しいのならば私たちはもう必要ありません。しかし、2つ目と3つ目のどちらかが事実だとしたら問題を解決するべきです。」
橘先生はただうなづいているだけで何も言葉を発しなかった。
ただこの時、私はなんらかの違和感を抱いたことは間違いなかった。
夜月は面談を終え、自室へ戻った。
気が向いて学習室に向かった。学習室は席が決まっていて、集中しやすいように仕切りがしてあった。座って正面と右側に机があり、右側の机の下にはロッカーがあった。
夜月は意外と机の上が綺麗だった。
ああ。また、誰か死んでしまう。きっと。
自分かもしれない。同じ部屋の人かもしれない。
心配に駆られた。
そんなことを考えていたら気づいたら夢の中へ。
目が覚めたのは16時半。寮内放送のチャイムで目が覚めた。
一体こんな時間に何の放送だろう。
「中学2年生女子寮生に連絡です。中学2年生女子寮生に連絡です。
至急、1階事務所前に来てください。至急、1階事務所前に来てください。
繰り返します。中学2……」
1階事務所前?なぜこんな時間に?
佐々山詩音が心配そうな顔をして話しかけてきた。
「…行く?」
瀬尾奈々は部活中のはず。
私は詩音と一緒に1階事務所前に行った。
既に部活動がない人たち全員が来ていた。
橘先生の姿はなく、代わりに中学3年生女子寮生担当 山薙(やまなぎ)先生がいた。
「揃いましたね。今から男子寮にある第1講義室に行きます。」
講義室は、人数の多い男子寮しかない。
山薙先生が私たちを連れて男子寮と女子寮の境にある扉を開けた。もちろん暗証番号が必要であるが。
講義室に着くと中学2年男子寮生担当 藤村先生がいた。さらに中央警察署の新木さんまでいた。
「適当に席に座ってください。」
藤村先生がいつもの低い声で指示した。
全員が席に着くと藤村先生が話し出した。
「みなさん、わざわざ集まってもらってすみません。
単刀直入に話すので静かに聞いてください。
実は先程橘先生が倒れられ、心肺停止の状況に陥りました。」
え?橘先生?まさか。面談の時に感じた違和感は、虫の知らせだった。。
少し周りがざわつく。
「なのでこれからしばらく山薙先生に担当をお願いしようと思います。
最近、亡くなっている生徒が多いので、君達も体調には気をつけるように。
夜月さんは残ってください。それ以外の人は山薙先生と女子寮に戻ってもらって構いません。」
ついに先生が。このとき、私は確信した。きっとこれは殺人事件ではない。
一種のミステリーだと。誰にも正体がわからない力がこの中2女子寮生に働いている。
他の女子寮生が出て行ったあと、私は新木さんと話すことになった。
「橘先生がまさかね。」
新木さんは予想もしない展開に少々驚いているようだった。
「私ね、この問題から手を引かないといけなくなったの。」
新木さんは心残りがあるようだった。
「この問題を上司にいったら、解決不可って決めつけられて。だからもう、この事件には関われない。ごめんなさい。」
「心肺停止って。橘先生は…」
「きっと助けてあげられないわ」
これからは私だけで解決しなければならない。
ああ。どうすればいいの。
夜月は1人では解決できないと感じ、同じ部活に所属する氷室に電話した。
「氷室〜。どうしよう。」
「どうした〜」
「今さあ女子寮生がどんどん死んでるじゃん。それ、私が解決しないといけない。」
「あー。お疲れ様。」
こいつにこう言われるのはもう慣れた。最初はいつも冷たいけど、本当は優しくていいやつ。
「てかさ。これってどういう状況?なんか今日も橘が倒れたとか。」
「そう。心肺停止っていわれたから。」
「それって、やばいじゃん。」
「やばいとか一言ではいえないよ〜」
「そうだなあ〜」
携帯からゲーム解説の動画の音がする。
「おい、ゲーム実況見てんじゃねえよw」
「はぁ〜?」
沈黙。いや実におもしろ、、くない。
「夜月〜。」
「何?」
「そういえば女子寮生って15人だっけ。」
「16人です。」
何で今頃?
「で、亡くなったの、2人?」
「そう。」
結局、こいつ役に立たないw
諦めてゲーム実況の話をして電話を終えた。
ふと、気になることが2点出てきた。
1つは今田さんが窒息死では無い可能性が出てきたこと。これは新木さんが言ったこと。
2つ目は氷室が女子寮生の人数を15人と言ったことだ。あいつはそうそうそんな数字を間違って記憶しない。そんなあいつが、、、。
今思えば、女子寮生は15人だった気もする。でも、名前を数えると16人。
まさか、記憶違い?いやまさか2人で記憶違いとかそんなわけないし。
仮に15人だったとすると誰が1人増えたのか。
夜月は「本当はいないはずの誰かが増えた」という仮説を立てた。
だけど誰かが増えるのと、人が死ぬのは関係が程遠い。
それとも関係があるのか。
夜月にはまだ何もわからなかった。
以上
第1話から第5話の総集編でした。
興味持っていただけた方!是非第6話からも読んでみてください。
第6話 https://tanpen.net/novel/13959d69-8da0-496b-845f-0ab7440f89fc/
第7話 https://tanpen.net/novel/d642694c-4ddf-4892-9ec0-561fd92658e0/
第8話 https://tanpen.net/novel/5ce02bcb-979f-42f1-9df4-5a8c0398db05/
第9話 https://tanpen.net/novel/222603b8-76bc-4d41-8404-102f3f30fd98/
第10話 https://tanpen.net/novel/eba296a2-e274-46f6-aa01-52bfda9a958c/
最終話 いよいよ公開!お楽しみに!