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第零話【走】
灰色の町並みを、私は走っていた。都市の端っこの田舎町の夜に、当然人なんているはずない。
なのに、見られている。尾行されてる。捕まったら終わり。また、あそこに戻されて………。なんで?私はただ、生きたかっただけなのに。頬を涙が伝った。黒いフードが風によって取れ、|■■■■■■■■■■《長い真っ白な髪》が露わになった。足裏に、容赦なく石が打ち付ける。足跡が赤くなっても走ることをやめない。曲がり角を曲がり、必死で都市を目指した。生きたかっただけなのに、どうしてこうなったんだろう………。赤い目の少女はどこに怒りをぶつけていいか分からなかった。そして、立ち止まった。
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「目標が立ち止まった。」
トランシーバー越しに聞こえてくるノイズ混じりの声。
「これより、捕獲に移る。」
決められた事を決められた通りにやる。点々と残る赤い足跡を少しおぞましく思う。さっさと終わらせて、家族の元へ帰ろう。そう、いつも通り。その時、目の前で赤い液体が飛び散った。その赤い液は、顔に付いて、発火した。
「えっ?」
なにが起きたか、一瞬、分からなかった。なにかが焦げる匂いがすぐ横からする。焦げているものが、自分の顔の皮膚だと分かるのに、約0.1秒かかった。突然、きた激痛に、思わず顔を抑える、が、逆効果だった。
「ギャァ゛………!」
手に燃え移った火を、見つめることしかできなかった。変な悲鳴が口から漏れ、それば直ぐに夜の闇に溶けて消えた。熱い熱い熱い熱い。まだ燃え移っていない方の手で顔を触る。耐え難い激痛が閃光のように、一瞬にして全身を駆け巡った。もう声も出なかった。次に、火が目に燃え移った。それは、想像を絶する痛みだった。目が燃える。水分が蒸発するような音がして、消えていった。地面に転がり、のた打ちまわった。最後に、目で見たのは、怒りを含んだ燃えるような赤い目でこちらを睨む、少女の顔だった。いつも通り。いつも通り帰って、妻にキスして、子供と遊んで、夕飯を食べて、風呂に入って、寝る。それ以上の幸福はいらない。それだけで、いいのに。
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夜の町に、風が吹く。五人の人の服が残っていた。指輪がコロコロと転がり、かちゃりと音をたてた。私はそれを拾い、そっと、近くの服のもとに置いた。生きたかっただけ、誰もがそう。私だって、生きたかっただけだから。彼も、生きたかっただけなはず。でも、私は人を殺してでも、生きたいの。謝りはしない。謝っても赦されないから。私は、指輪に背を都市を目指し、走り出した。決して、振り返ることはなかった。
あとがき
一人目の主人公ちゃん視点です。
この子の出番はまだしばらく先になると思われます………。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
次回も読んでいただけたら嬉しいです!