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意外 前編
私、知らなかったんです。
まさか、あんな顔をするなんて、思いもしなかったんです。
いつも通りにしてただけなんです。
彼のことを考えてたつもりだったのに、
かえってそれが彼をあんなに傷つけるとは思いもしなかったんです。
まさかこんなことになるなんて、ちっとも考えていなかったんです。
まさか、彼があんなに郷田君が嫌いだとは思わなかったんです…!
給食のプリンは郷田君が食べたといったときの彼の顔…!
絶望に満ちたものでした。
「これあげる」
と、彼はデザートを配達する係だった私にプリンを返したんです。
彼は甘いものが苦手なのだそうです。
クラスの中で郷田君だけが欲しがったので、郷田君に渡しました。
昼休み、小声で彼が話しかけてくれました。
「プリン、どうなった…?」
「プリン?プリンなら郷田君が食べたよ」
ああ、人はあんなにも絶望に満ちた顔をするのでしょうか。
誰が、あんなにも心優しい郷田君を嫌いな人がいると思うでしょうか。
しかも、天使のような彼が郷田君を嫌いだなんて!
優しい彼は何でもないよ、と言ってくれましたが、あれはどう考えても違います!
ああ、ごめんなさい。
大好きな豊橋君。
私はきっとあなたに嫌われてしまったわ。