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今までの“嘘”は消えないけど
これは「カクヨム」に投稿したショートショートの1つです。
内容は全く一緒です。
「私……このままでいいのかな……」
だってみんなに年齢や誕生日を偽って交流してるんだよ。みんなは“偽りの私”と話しているんだよ。
化けの皮を被っている私と……これからも話したい……?
今更本当のことを話しても「じゃあ今までのことはすべて嘘だったんだね」って嫌われてみんなが離れていくと思うし。
このまま化けの皮を被り続けていいのか。「私……実は十五歳なんだ」って本当のことを伝えたほうがいいのか。
私は……どっちの道を歩めばいいの……?
父によく「嘘をつき続けると、そのうち人が離れていくよ」と言われてきた。
確かに父の言っていることは正しい。
でも……私はみんなと話したい欲に耐えきれなくて年齢や誕生日を偽ってネットの世界に入り込んだ。
今改めて思い返してみると「私って……バカだな……」と思ってしまった。
わざわざネットの世界へ入るために自分の年齢と誕生日を偽ってみんなと話しているんだから。
今まで楽しく活動してきたっていうのに……今更こんなことで頭を抱えて何やってるんだろう。
「本当の事を話すとみんなが離れていくかもしれない……でもこのまま偽っていっても私自身が苦しくなる……」
「炎上だって避けたいしそれで評判悪くなっていったら……掲示板サイトで特定されるかも……」
「それはいやだ……どうしたら……」
胸が苦しくなっていく。ネットをやっていて苦しくなること……今までなかったのに。
そんな私はネッ友で最も信頼できる「ミノ」へ相談しにいった。
「ごめんミノ。ちょっといい?」
「うん! 大丈夫だよーどうしたの?」
「実はね……フォロワー達に伝えたほうがいいのか迷ってることがあるの」
「迷ってること? うん聞いてあげる」
「今まで年齢と誕生日を偽っていたんだ」
「偽ってた……ってことは嘘ついてたってこと!?」
「……うん。そういうことになるね」
「……」
「やっぱり……縁切られる……?」
「そんなことないよ! ウサちゃんが化けの皮被ってたって縁切らないよ!」
「そっか……ありがとう。ミノ」
「うん! あっまだ話の続きだったっけ 続けていいよ」
「わかった」
「このこと……みんなに話したほうがいいのかな……?」
「話したほうがいいと思うよ」
「私だって活動初期は化けの皮被っちゃって苦しかったけど、本当のことを話したら気が楽になったよ」
「ミノも!?」
「そうだよ。経験があるから言えることかな?」
「経験者なら信頼できるよ(笑)」
「(笑)」
「話に付き合ってくれてありがとう。明日に投稿されるように予約しとくよ」
「了解! その時は反応するよ!」
翌日、予約していた内容が投稿された。
「みんな……信じてくれるかな……」
不安に思っていたその時、反応が届いた。
「そうだったんですね……勇気を出して伝えてくれてありがとうございます! これからもウサさんを推していきます!」
それは……一人のファンからの反応だった。
その1つの返信をきっかけに、感謝のコメントが相次いで届いた。
「ウサちゃん……苦しかっただろうな……でも大丈夫だ 俺達がついてる! ありがとな!」
「大丈夫! 私達はウサちゃんを嫌ったり、見放したりしないよ! 勇気出していってくれてありがとう!」
「最初驚いてしまったけど、ウサたんの苦しかった気持ちが伝わってきます……ありがとう」
私は優しすぎるファンのコメントを見て号泣した。
ネットの中には、こんなにも優しい人達がいるんだ。「嘘つき」の私でも……ここにいていいんだ。
今までの“嘘”は消えないけど、許してくれる人達は……優しすぎるよ。