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虚像のホーム
※ペルソナ5ロイヤル 真エンド後
(練習として執筆したものです)
陽炎が差す新幹線の窓の向こうで、いやに見覚えのある姿を見た。
直後、大慌てで車内から駅のホームへ飛び出し、幾度となく力強く歩みを進ませた足で地を蹴って、追う姿に手を伸ばした。
律儀に手を包む真っ黒の手袋を掴んで、自分でも驚くほど大きな声を挙げた。
「明智!」
脇に抱えた青いバッグの中で|黒猫《モルガナ》が「おわっ」と小さく声を出すのも構わず、手を掴んで前を向かせたそれに子供のように大きく抱きついた。
抱きつかれたそれは、はにかんだ笑顔を見せたが、すぐに平然と余裕そうな顔で口を開いた。
「やぁ、元気だったかい?」
平然と探偵としての面を見せた明智に下唇を噛んだ。
強く握った拳を振ろうと考えた辺りで、再度ポケットに手を入れ直し、眼鏡の向こうで“生きていた”明智へ文句を零す。
「…連絡ぐらいしたって、良いんじゃないのか」
その文句に少し考え込んだ彼が軽く笑って、「今から、ここを離れる君にその必要をあるのか?」と言葉を返した。
それに続けて、
「待ってるから行ってこいよ、ジョーカー」
そう言い放ち、黒い手袋を外した手で停止したままの新幹線を指した。
今度はどこを探しても見つかるような、そんな気がした。