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第12話:魔王と娘
今回の作品から、ハッシュタグに新たに「#セカイとイ世会」を追加しました。
いつか、二次創作とか絵とかかいてくれる人がいるのであれば是非使ってください。
第一皇子を殴り飛ばし、騎士団の人たちに怒られた後…魔王と面談が遅れて行われた。
魔王の間の中に入ると、外で感じ取った殺気は無くとても心地のいい場所だった。
なんというか、安心感がある…?感じの場所だ。
なによりも、高級感のある柱が何本も建てられておりその先には一つの玉座が置いてある。
いかにも…な、見た目の場所に感動していると魔王が玉座に座り肘をつき誰もいない場所に何かを話し始めた。
直後、私とフミが席に座らされた。
私はともかく、フミすら反応できないようでなぜ座らされたのかと混乱していた。
「まずは、挨拶からだな…。俺は、第999代目魔王:テール・レイジ・フォール・アーゼだ…長いからアーゼ…又は、父上とでも呼んでくれ。で、こっちが…。いや、まだ紹介すべきではないか。」
私を指さしながら淡々と自己紹介を開始した魔王もとい父上に少し困惑した。
時間に遅れたし、皇太子を殴ったからてっきり、もっと怒られるかと思ったからだ。
「棗、そこの小娘にどんな教育をしたんだ?こっちが名乗ったのに名乗り返さないとか一般教育ができてないにも程があるぞ?」
「…じゃあ、ハルにも教育したらどうなんですか?アーゼ君。そもそも、ハルが殺気なんて出すから怒られるもんだとお嬢様も身構えてたんですよ?」
魔王が、棗に文句を言うと少し怒り口調の棗が反論した。
意外にも、この二人は仲がいいのかもしれない。
まだ、顔も知らないハルと言う人物も気になるがとりあえず自己紹介を行わないと危険な気がするので自己紹介を行った。
「私は、八咫神このはと言います。えっと…」
「あぁ、一先ず名前だけでいい」
名前だけだと味気ないと思い、何か言おうと考えていると父上が私の言葉を遮った。
私は、「分りました」とだけ言ってまっすぐと父上の方を見た。
「良い名前…だな、これはお前の母親…が付けたのか?」
「いいえ、お母さんはだいぶ前に亡くなっちゃって…叔父様に引き取られたんですけ…ど……」
言葉を発する毎に、どんどんと昔の嫌な記憶が頭を覆いつくしてくる。
目に涙が浮かび始めたときに、父上が「もういい、大丈夫だ。」と止めてくれた。
そのあと、棗たちが私の経緯について簡単に説明してくれた。
引き取られた後、汚物のように扱われていたことや風俗の様な場所で働かされていたこと。そして、ここに来る間のことも。
「すまない、嫌な記憶を蘇らせてしまったな」
「いえ…もう過去の事なので…。克服しないとですよね」
私がそういうと父上がゆっくりと腰を上げこちらに歩いてきた。
そして、私を覆うように抱きついてきた。
「!?」
「すまない。もっと早く部隊を編成して向かわせるべきだった。つらい過去なんて生ませるべきじゃなかった。」
少し涙声の父上に驚きが隠せない。
何故、急にこんなことをしたのか…何故、涙声なのか…。良く分からないが、ただ一つ頭に浮かんだことがある。
(なんだか、懐かしい。とっても、暖かくて落ち着く…)
泣きつかれて寝てしまったこのは様と膝枕をしてあげているフミを見守っていると…突然、横から声が響いた。
「棗、今日は遅いし泊ってったら?」
そこには、淡い赤色の髪と猫のような細い瞳孔がある瞳を持つ少女が立っていた。
「はぁ、ハル。今日は、アーゼ君に会いに来ただけで泊る予定はないんです」
「えー…半年間も待ったのに、私よりそこの女の子のほうが大事なんだ~」
「欲求不満なら、私じゃなくてフユカとかアキカゼに言ったらどうですか?」
「あの子たちだと満足できないの~ねぇ~お願い~」
「いえ、もう帰ります。」
「むー!!」
そう、ハルがほっぺを膨らませるとフミの身体から大量の汗が出てこのは様の表情も苦しそうになっていた。
「ハル…今すぐ止めなさい」
「いや!」
子供みたいにそういう彼女に、私は少し力を解放し殺気を出そうとした瞬間私の肩に手が置かれた。
「ハル、その子は俺の娘だ。丁重に扱え」
「アーゼ様…。分りました…」
「棗も、怒ってくれるのは嬉しいが俺はお前たちが争っている所は見たくない」
「…承知しました。申し訳ございません」
「あぁ。馬車を正門の方に止めてあるから今日はもう帰るといい」
「はい、それでは失礼します」
私は、フミとこのは様を抱え馬車へと向かった。
魔王の間に残った魔王とハルはさっきのことについて話していた。
「ハル、お前はこのはに何を感じた?」
「うーん…物凄く暖かい草原と人間たちよりも黒い悪意と嫉妬?」
その言葉に、魔王は少し驚いた様子を見せたが直ぐに微笑み
「これから、楽しくなりそうだな」
と、小さく言った。
お読みいただきありがとうございました!
新キャラ、魔王ことテール・レイジ・フォール・アーゼ君。そして、正体不明(このは目線)のハルちゃん。あと、名前だけのフユカとアキカゼ。
いやぁ、着実に増えていくね…私の設定してない子たちが…。
後先考えずキャラを作るなー!!ってデモ起こしても、私自身の問題だから自分で言って自分で「この件に関しましては…どうのこうの」って答える羽目になるからあきらめるけどね
…なんか、悲しっっ(泣)