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あたし
自分の存在
朝が来た。カーテンを開けた。光が差し込んできて、目が覚めた。制服に着替え朝ごはんを食べたあと、テレビの占い番組を見て、カバンを持って、靴を履いた。家を出た。通学路の空気は冷たく、透き通っていた。学校に着いた。上履きに履き替えた。廊下を歩いて、階段を上がって。教室に入ると、急に冷たかった空気があたたかくなった気がした。友達が挨拶をしてきた。だから私も笑顔で挨拶を返した。しばらくして、HRが始まった。私は先生の話を真剣に聞いていた。
休み時間に友達とお手洗いに行った。用を足したあと、手を洗いながら鏡を見た。そうしたら、少しだけ他人に見えた。
「ねえ。私って、私に見える?」友達に聞いた。友達は不可解そうな顔をした。「そりゃーそうでしょ。」当たり前でしょ、という顔をしていた。そっかと返した。友達は別の話をし出した。私はしばらく、鏡に映った顔が忘れられなかった。
家に帰った時は、午後6時を回っていた。お母さんが晩御飯の支度をしていた。私は部屋で期限が迫っている課題を済ませた。ちょうど終わった時、お母さんが「ご飯よー。」と私を呼んだ。部屋を出た。お父さんが帰ってきていた。テレビでバラエティ番組を見ながら、一緒に食卓を囲んだ。時々お母さんとお父さんが笑った。だから私も一緒に笑った。
ご飯を食べ終えた。私は空になったお皿を全てシンクに運んで、手袋をはめ、洗い物を始めた。お母さんが「いいわよ、そんな。」と駆け寄ってきた。私は全然大丈夫だよと答えた。結構好きだし。そう続けたら、お母さんが顔を緩めた。「本当に優しい子ね。」私は優しい子だった。
私の誕生日がやってきた。登校すると、友達が笑顔で近づいてきた。「じゃーん!」隠し持っていたプレゼントらしきものを私にくれた。綺麗な包み紙に包まれていた。私は咄嗟に笑顔を作った。「え、何これ!中見てもいいの?」高い声を出した。友達はへへっと笑いながら頷いた。包み紙を丁寧に開けた。ハンカチが入っていた。端に、猫の刺繍がされていた。「めっちゃ可愛くない?歩実、猫、好きでしょ?」本当は猫は好きでも嫌いでもなかったけれど、嬉しそうに答えた。「うん、大好き!ありがとう!」私は猫が好きな子だった。
誕生日は、家でも祝われた。親からは小さな置き時計をもらった。上品な茶色で、シンプルだけど重い。手のひらに乗せた時、沈んでしまいそうだと思った。「机の上に置いておくといいわよ。こういうシンプルなものだと歩実の部屋の雰囲気にも合うんじゃない?」ありがとうと答えた。私はシンプルで、上品で、大人っぽいものが好きな子だった。
部屋に戻って時計を机の上に置いた。確かにこの部屋の雰囲気に一致した。でも、なんだろう。言葉にできなかった。ただ疑問が湧いてきた。
どうして私はこんな部屋にしたんだろう。私の好きなものって、こういうのだっけ?違う。私の好きなものは、大人っぽいものでもない。猫でもない。もっと、違うものだ。そう思った。
私の物語に、悪い人はいない。不幸というわけでもない。
でも、私があたしでいれたら、いることができたら、もっと幸せだったのかも知れなかった。
はははっははh。
最初の文章、やけに客観的に自分を見てるとこで理解しろよ主人公。