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天使と悪魔
読んでくれてありがとう⸜(*ˊᗜˋ*)⸝
放課後の疲れを引きずったまま玄関を開けた瞬間、俺は固まった。
リビングに、見慣れない二人がいたのだ。
白い羽の少女と、黒い羽の少年。
状況としては完全にホラーだが、恐怖より理解不能が勝っていた。
「……誰?」
人生で最も慎重な問いかけだった。
「天使です」
白い方が即答した。
「悪魔だ」
黒い方も迷いなく言った。
テンポよく地獄。
「今すぐ帰ってください!」
俺は現実的な交渉を試みる。
「無理です」
「契約上な」
俺はソファに崩れ落ちた。
契約って何…。
俺の知らないところで俺の人生が進んでいる気配しかしない。
――そして、地獄は書類と共にやってきた。
◆ 書類という名の絶望
天使が一枚の書類を差し出してきた。
………見るのが怖い。嫌な予感しかしない。
『観察・介入対象:佐倉 湊(高2)』
俺じゃねぇか。
「観察って何!?」
「日常管理業務です」
「人生の方向性チェックだな」
さらっと怖い。
「いやいやいやいや!人選ミスですよね!?これは何かの間違いですよね??」
「ミスではありません」
「ちゃんと会議もしたぞ」
会議すんな。
俺の知らない会議で俺を議題にするな。
「お前、今わりと分岐点にいるし」
「そうなんです」
何その俺の知らない俺情報。
◆ 第一条:拒否権は存在しない
「とりあえず」
悪魔が立ち上がった。
「部屋どこ?」
「帰れって言ってんだろ!」
「共同生活規約・第一条」
天使が淡々と読む。
「『対象者の生活圏への常駐を許可する』」
「拒否権!」
「ありません」
即答。
「人権!」
「部署違いですね」
部署で分けるな。
なんなんだよもう。
試しに頬をつねってみる。痛い。どうやら夢ではないようだ。
◆ 想像以上に図太い侵略者
「わかったけどやる部屋なんてねぇぞ!床で寝ろ。庭でもいいぞ」
「庭では業務効率がわるいです」
「俺たちが風邪ひいたらお前は減点だぞ」
図々しすぎる侵略者たち。
そして悪魔、お前絶対適当なこと言ってるだろ。
俺の部屋を見回す二人。
「普通だな」
「普通の高校生の部屋に何期待してんの!?」
「もっと闇とかあるかと」
「ねぇよ!」
「意外と健全ですね」
天使まで評価してくるな。
評価される俺の私生活。
机の上。
教科書。漫画。用途不明の充電器。
「これ何です?」
「知らない!」
「俺も気になってた」
なぜ存在するのか不明な文明の遺産。
◆ 朝は戦場
翌朝。
「起きろ人間」
悪魔がカーテンを全開にした。
「まぶしっ……!!」
「遅刻しますよ」
天使が冷静に追い打ち。
「お前ら目覚まし係なの!?」
「業務の一環です」
「寝坊は破滅寄りだぞ」
評価基準が怖い。そして扱いが雑!
なんだかんだで昨日は疲れて放置して寝てしまっていた。
朝食。
「トースト焦げてる」
「誰のせいだよ!」
「俺は焼いてない」
「私もです」
犯人不明の焦げトースト事件。
「悪魔の仕業!?」
「濡れ衣だ」
「火力調整は担当外です」
天使の責任回避が完璧すぎる。
さては「仕事出来る女」ってやつだな。
てか担当細かいな。天界(?)ってのはどうなってんだ?
◆ 介入という名の口出し地獄
学校帰り。
「告白しないのか?」
悪魔が言う。
「しません」
「チャンスでしたよ」
天使まで乗ってくるな。
「なんで知ってんの!?」
「監視対象ですので」
言い方。
「青春イベントは加点対象だぞ」
「査定やめろ!」
◆ 思ってた善悪と違う
数日後。
さすがに慣れてきた自分が逆に怖い。
俺は聞いてみた。
「結局、お前ら何が目的なんだよ」
二人が少しだけ真面目な顔になる。
「最終判断です」
「最適な進路決定」
「進路?」
「はい」
天使が言う。
「人間がどう生きるか」
悪魔が続ける。
「それを見るのが俺たちの仕事」
「……善悪じゃないのか?」
「違います」
「そんな単純じゃない」
少しだけ、空気が静まる。
「天使も」
「悪魔も」
「役職名みたいなものです」
夢を返せ。
◆ 致命的な結論
「で」
俺は聞いた。
「評価どうなってんの」
二人が同時に書類を見る。
沈黙。
嫌な予感。
「……保留ですね」
「は?」
「お前」
悪魔が肩をすくめる。
「普通すぎて判断材料が足りん」
「普通で悪かったな!?」
「減点もありませんが」
天使が補足する。
「加点もないです」
「なんなんだよ俺の人生査定!!」
二人が小さく笑った。
ほんの少しだけ。
「まぁ」
「もう少し観察ですね」
「共同生活継続だな」
「帰れぇぇぇぇぇ!!!」
――こうして俺の平凡な日常は、規約違反気味に騒がしくなった。
たぶんしばらく。
いや、かなり長期間。