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第3話
会場のざわめきの中、私はそっと台に近づいた。
二人の少年はまだ硬い表情のまま、少し俯いている。
少し、ふわんそうな表情だった。
「大丈夫……もう怖くないよ。」
小さな声でそう呟きながら、私は手を差し伸べる。
二人の目がわずかにこちらを向く。
少し、驚いたような目をしていた。
無言のままだが、体が少しだけ緊張を緩めたように見えた。
司会者が周囲の札を確認しながら、「落札者は商品を持っていってください!」と声を張り上げる。
瞬間、会場のざわめきが少し収まった。
私は深く息を吸い、少年たちの手をそっと取り、静かに台から降ろした。
「……こ、ここから……出してくれるの、、?」
少年から発されたかすれた声に、私は驚きながらも小さく頷く。
「そうよ。もう、ここで怖い思いをする必要はないわ。」
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会場を後にする道すがら、視界の片隅で他の子どもたちがまだ台の上で怯えているのが見えた。
何度も胸が締め付けられる。
だが、今は目の前の二人を守ることだけに集中するしかない。
通りを抜けると、城へ戻るための馬車が待っていた。
目立たないよう、幌の低い簡素な馬車だ。
、、、馬車な時点で目立つと思うのだけど、、、
私の隣にいた少年2人は驚いていた。
そりゃそうよね。馬車なんて、傑物の一族しか持っていないもの。
馬車のドアを開け、二人をそっと席に座らせ、私も席に着いた。
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馬車が発進した。
外の景色がゆっくりと流れる。
城下町の喧騒も、遠ざかるにつれて静かになっていく。
そんなことを思いながら、2人に話しかけてみた。
「あなた達、名前は?」
「「、、、」」
「………ないのね、、」
私はそっと呟く。
二人の目を見ながら、まだ名前をつける段階ではないことを確認する。
ここで決める必要はない。
ただ、この馬車の中では、二人が少しでも安心できる空間にすることだけを考えた。
「あとで私が考えてあげるわね」
言葉を選びながら話すと、二人は少し肩の力を抜いたように見えた。
まだ警戒はしているが、少なくとも逃げ出したいという感情は和らいだようだ。
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馬車が城に近づくにつれ、心臓の鼓動が速くなる。
無事に帰れたとしても、ここから先の生活はどうなるのか、まだわからない。
だけど、今はただ、二人を守るためにできることをするしかない。
「もう少しで、城に着くわよ。」
私は優しく声をかける。
二人の小さな手を握り、そっと背中をさすった。
二人の小さな体が少しずつ私に寄り添う。
身長の割に体が細い。
あまりご飯を食べさせてもらえなかったせいだろう。
この瞬間、私は決意した。
ここからが、本当の戦いの始まり――。
城が見えてくる。
馬車の窓越しに、かすかに高い城壁が見えた。
二人を守るための新しい日々が、もうすぐ始まる――。