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メアとアンとモモ
杏奈は食べ物も要求しないし、なにかしてほしいと我儘を言うこともない。ただ、アプリで遊ぶことを強要してくるだけ。
「ね、百恵。いっしょにやろ」
「いいけど、あんたどういう原理でスマホにさわれてんの?」
「いーじゃん、別に。一緒にアバター作り直そ」
…幽霊と遊ぶなんて、どういうことだろう。
いやいや、そんなこと考えすぎだよね。うん。
「そんな安っぽい学生じゃなくてさ、こういうやつ作ろうよ」
「えー!?」
杏奈が指さしたのは、豪華なイブニングドレス。紺色と青色、黒色が銀河のように混ざっている。ところどころダイヤ?の偽物?のようなものが散りばめられていて、美しい。
「それ、課金しないとダメでしょ」
「え、知らないの?『メアポイント』」
「は?」
どっかのCMとか勧誘でありがちな展開になった。
いや、でも幽霊になっても勧誘するとは思えないし、偶然でしょ。
「いろいろ遊んで、一定のラインを超えるともらえるの。プレイ時間30分でも『メアポイント』3ポイントもらえるよ?このイブニングドレスの購入料は5ポイントだし、平日10分プレイしても普通に一週間でもらえるよ」
「え、そんなやつがあったの?」
「ログインボーナスももらえるし。メアはログインなしでも一応できるんだけど、ログインしないとこのポイントはもらえない。イブニングドレスも普通にお金が必要になる」
「えー!」
そんな、第二の世界みたいになってるなんてしらなかった。
「遅れてるなぁ」
「えー、そうなの!?嘘ぉ。そんなポイント知らなかった」
じゃあ…どっかで読んだやつだったっけ。
アバターを作って第二の世界で遊ぶ。その中では起業をしたり、商売だってできる。そんな世界、あったような?
「というか、こうしてる間もポイントたまってるよ」
「ほんと?すご」
いつの間にか、『メア』は人間の生活に欠かせないものになっていた。