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こぐまとメイと 青虫
こぐまとメイは青虫を見つけます
夏の風が心地よく吹き抜ける、ある日の午後。こぐまとメイは、森の大きな葉っぱの裏で、小さな発見をしました。それは、手のひらほどの大きさの、緑色の可愛らしい青虫でした。もくもくと葉っぱを食べる姿が、なんだかとっても愛らしいのです。
「にいに、これなあに?」メイが目を丸くして尋ねました。
「青虫だよ。きっと、大きくなったらチョウチョになるんだ」とこぐまが教えてあげると、メイは「チョウチョさん!」と嬉しそうに飛び跳ねました。
二匹は青虫を連れて巣穴に帰ると、お父さんクマとお母さんクマに話しました。「この子を飼ってあげたい!」というこぐまとメイのお願いに、お父さんクマとお母さんクマは顔を見合わせました。
「青虫は、葉っぱをたくさん食べるから、毎日新鮮な葉っぱを用意してあげなさい。そして、チョウチョになったら、広い空へ逃がしてあげるんだよ」とお母さんクマが優しく言いました。
次の日から、こぐまとメイの青虫のお世話が始まりました。毎日、青虫が食べるための新鮮な葉っぱを探しに行き、優しく虫かごに入れてあげます。青虫は、もりもりと葉っぱを食べ、みるみるうちに大きくなっていきました。
「もうこんなに大きくなったね!」こぐまは青虫が体を動かすたびに、興味津々で観察します。
メイも、「おなかいっぱい?」と話しかけながら、青虫が葉っぱを食べる様子をじっと見つめていました。
ある朝、いつものように青虫の様子を見に行くと、青虫は葉っぱの上で動かなくなっていました。そして、体の周りには、見たことのない硬い殻のようなものができています。
「にいに、チョウチョさん、壊れちゃったの?」メイが不安そうにこぐまの服を引っ張りました。
お父さんクマがそっと覗き込み、「これはね、サナギになったんだよ。もう少ししたら、この中からきれいなチョウチョが生まれてくるんだ」と教えてくれました。
それから数日後、サナギに小さなひびが入り、中からゆっくりと、美しい羽を持ったチョウチョが現れました。鮮やかなオレンジ色と黒の模様の羽は、夏の森の光を受けて、きらきらと輝いています。
「わぁ!チョウチョさんだ!」メイは歓声をあげました。
こぐまも、こんなに美しい姿になった青虫に感動して、じっと見つめていました。
チョウチョは、まだ少し体が重そうでしたが、小さな羽をゆっくりと動かし始めました。
お母さんクマが、そっと虫かごの蓋を開けました。「さあ、チョウチョさん。広い空へ飛んでいく時間だよ。」
こぐまは少し寂しそうに、メイは悲しそうな顔で、チョウチョを見つめています。
「でも、ずっと一緒にいたかったな…」と、メイが小さな声でつぶやきました。
こぐまは、メイの頭をそっと撫でながら言いました。「チョウチョさんは、空を飛ぶのがお仕事なんだ。たくさんの花を訪れて、もっともっときれいな場所に行くんだよ。」
チョウチョは、ひらひらと羽を震わせると、虫かごからゆっくりと飛び立ちました。そして、巣穴の周りを大きく一回りすると、夏の青い空へと舞い上がっていきました。キラキラと輝くチョウチョの姿は、まるで「ありがとう、さようなら」と告げているかのようでした。
こぐまとメイは、小さな体が空高く飛んでいくのを見送りました。少し寂しいけれど、自分たちが育てた青虫が、こんなに立派なチョウチョになって旅立っていくのを見て、温かい気持ちでいっぱいになりました。
夏の空には、今日も一匹の美しいチョウチョが、自由に舞っているのでした。