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【13話】勝利か、敗北か
戦闘回です。次回に続きます。次回はもっと盛り上げていきます!
ついにやってきたその日。今日は朝から実戦室で最終調整を行い、今に備えてきた。
「頑張るぞーーー!」
誰かの掛け声。
「おーーー!」
自然と溢れ出る決意の声。今、俺達は高揚感に包まれている。開始30分前、俺達は|魂移入《こんいにゅう》を行う。人形に意識を移入させる。この技術は一部の能力を持つ人間にしかできないため、専門の業者が存在する。
違和感はまったくない。まるで自分の身体であるかのように自由に動くことができる。見た目も本物にそっくりになるようにできているため、仲間の判別も容易にできる。
この今までに経験したことのない高揚感。心臓の鼓動。今、始まる。
「開始」
放送で合図が流れる。ステージは近隣の山ひとつ。隠れ場所も豊富にある。しかし、その分相手を倒すことは難しくなる。
俺達はクラスを2つに分け、15人程度の小隊を組んで移動する。
「襲われたら、いつもの班で散らばってほしい!」
一人にはならないでほしい。状況の確認と、効率の観点から、大人数でいるほうが有利だ。
俺達は順調に生き残る。一人の犠牲も出さずに開始から2時間が過ぎた。
「これ以外と余裕じゃね?」
そんな完全に油断した声も聞こえる。Aクラスの小隊も油断している様子だった。他のクラスの小隊に出くわしても今日は喧嘩などしない。これは国立学園の名誉にも関わってくるからだ。
ときおり笑い声も聞こえてくる。俺も周りと雑談を始めた。
--- ダアアアアーーーーーーーーーーン ---
能力を放出する音。一人のクラスメートが倒れた。この身体は本物ではないとはいえど、仲間が倒れる姿は心臓に悪い。
「だれだ」
ルガが問う。能力剣を握っている。俺も能力剣を作り出す。
「私立シュプリーム学園、フィリアス・ベニーだ」
やけに気取った声が聞こえてくる。どうやら相手は少人数のようだ。推定人数は5、6人といったところだろう。
「俺はな、ルガっつーんだ。覚えとけよ」
一気に緊張感が増す。ルガは能力剣を突き出すと、力を放出した。黄色く、明るい閃光が、ベニーに直撃した。あっけなくベニーは退場した。
「ふん」
目をギラギラさせてルガがうなる。残りの相手はあっという間に逃げていった。
「油断大敵だ。油断するな」
一応声をかけておく。人間は指示があれば安心するらしい。指示と言えるかは怪しいけれど。
「3時間たった」
ジェニスが告げる。終了まであと3時間。半分が過ぎた。
--- ガサ、ガサガサガサッ ---
振り返る。
刹那、耳元を緑の閃光がかすめた。
「危ない!」
叫んでは見たがもう遅い。乱闘が始まった。敵味方入り乱れ、能力剣でうちあう。力をぶつけ、弾き飛ばす。
迫りくる能力剣。俺にはスローモーションのようにはっきりと見えた。最小の動作でかわし、斬りかかる。衝撃波をまとわせ、ぶっ飛ばす。
「班から離れるな」
まじで一人にはならないでほしい。一人での行動はこっちにとって不利だ。
応戦に向かう。苦戦を強いられているジェニスたちの下へ走る。
強い衝撃波を飛ばす。能力剣で薙ぎ伏せる。敵を倒す、倒す、倒す。本物の肉体ではないけれど、手には嫌な感触が残る。それをも忘れようと剣を振る。
なんとか持ちこたえた。何人かは逃がしたが、ほとんどを倒した。相手の人数は約20人、よく勝てたと思う。しかし、こっちの損失も大きかった。10人が退場し、残りは5人。損失は大きすぎた。
「第2小隊に合流しよう」
指示を出し、隠れながら走る。ルガの息はすでに上がっている。なら、多くの人が疲労しているに違いない。もう一つの小隊の位置はおそらく山頂付近。そこまで一気に駆け抜ける。
「大丈夫?」
聞いていく。一人でも走れないようなら歩く。が、みんな大丈夫そうだったので、走り続ける。
「あ、あれじゃね」
ルガが見つけた。第2小隊は残りが3人とほとんどが退場している。
「おーーーーーい」
みんなで叫ぶ。自然と息も合う。バギが右手を上げた。
合流した。合計人数は8人。これでも少ない方だ。しかし、走る。山頂に向かって走る。駆け抜ける。このまま、ずっと。
途中でぶつかった私立の小隊は一網打尽にしていく。怒涛の勢いで駆け上がる。上へ上へ。
「ついた」
ジェニスが控えめに告げる。残り時間は1時間。この時間の中で、生き残る。ひとりでも。多く。
「残りの人数は約20人ほど」
「それ、数えたの?」
「なわけないでしょ。聞いたの」
一喝される。どこで仕入れてきた情報かはしらないが、おそらく正確だろう。俺は仲間を信じることにした。
「みんな、まだまだこれからだ」