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第6話
浴室から出た末日と加楓は、まだ少しぽかぽかとした体を揺らしながら、着物(寝巻き)に着替えた。
湯気と蒸し暑さで髪は少し湿っていたが、清潔な浴衣に包まれ、いつもより少しだけ落ち着いた表情になっている。
私は廊下を歩きながら、近くにいた召使いたちに声をかけた。
「今日は、この子達のために体が温まるご飯をお願いできるかしら?」
召使いたちはすぐに動き出し、台所に野菜や魚を切る音、鍋の中で汁が煮える音がリズミカルに響く。
末日と加楓は少し緊張しながらも、香ばしい匂いに顔をほころばせる。
「…いい匂いだね」
加楓が小さく呟くと、末日も少し安心したように頷いた。
私はそっと微笑みかける。
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やがて、食卓には彩りの美しい料理が並んだ。
蒸した魚、温かい野菜の煮物、柔らかいご飯、湯気の立つ味噌汁。
普段の冷たく硬い食事しか知らなかった二人にとって、この光景はまるで夢のようだった。
「さあ、食べてみて」
彩音*は小さな声で促す。末日も加楓も、少し緊張しながら箸を手に取る。
「「いただきます…」」
二人が声をそろえる。
最初の一口を口に入れると、驚きと喜びが交錯した表情が浮かぶ。
柔らかく、温かく、そしてほんのりと優しい味。
末日は思わず目を見開き、加楓も小さく「おいしい…」と呟いた。
「うん、よかった」
彩音は心の中で安堵する。
二人がこうして、少しずつ普通の温かい食事を楽しめるようになったこと。
それだけで、胸がいっぱいになった。
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「もっと食べて大丈夫だよ」
私の声に、二人は少しずつ箸を進める。
笑顔が増え、口数も少しずつ増えていく。
さっきはあまり言葉を発さなかった2人も、今は食べながら小さな会話をしている。
召使いたちが忙しく動き回る中、二人の食事の様子を静かに見守る。
ふと目をやると、末日が煮物を加楓にそっと差し出す仕草を見せた。
加楓は照れくさそうに微笑んだ。
(こうして少しずつ、心も体も温まっていくのね)
私はそう思いながら、二人の背中をそっと見守った。
今日のこの時間が、彼らにとってほんの少しでも安心できる瞬間になればいいな。
まだまだ長い道のりだけれど、今日の小さな一歩は確かに前に進むためのものだから。
*、、、彩音は主人公の名前です。「いろね」って読みます。