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蟲柱 胡蝶しのぶ
花火
どうすればいいのだろう。気持ちは落ち着いたが、問題はなにも解決していないのだ。こらから私はどうすればいいのだろう。もう姉さんはいないのだ。だったら、だったら!もうすでに答えは決まっていた。だが、本当にそうできるのか不安だった。でも、あの人は言ってくれた。
『俺は、どんな胡蝶でもいい』
ならどんなに下手でもなるべきだろう。姉さんに。みんなの姉は今日から、私だ。胡蝶カナエはもういないだから胡蝶しのぶなのだこれからのみんなの姉は。
まずは、やはり化粧だろう。姉は化粧をしていた、とても綺麗で華奢だった。強さを兼ね備えながら華麗だった。私はどうだろう。いや過去の私とは比べない。だって、今の私は姉なのだから。
次に話し方だ。姉さんは丁寧で、包容力があった。皆を安心させられた。それは、言葉遣い以外もあるのかもしれないか、まずはそれからだ。だんだんだんだんでいいのだ。少しずつ少しずつで、いいのだ。あの人はそれでもきっといいとそういって、くれるだろう。
それからも姉さんの練習、姉さんになるのために頑張った。あの人の前でも外れないようにしないと。そう思いながらゆっくりとまぶたを閉じる。
「冨岡さん、よろしくお願いします」
「……打ち込むぞ」
打ち込み稽古をするらしい。言葉が足らない人だ。冨岡さんは私の分の木刀と、うん?冨岡さんも木刀をもっている。……まさか一緒に?というか、うん、この感じそうだ絶対この人言葉足らなすぎでしょ
「冨岡さん」
「……どうした」
「きれいですよね。冨岡さんの突きの形」
「このくらい、胡蝶もできるようになる」
本当にその私にたいする自信はどこからくるのだろうか。そこからは無言にひたすら、突きの練習をした。どこからでも、突きをできるようにとだから、それだけ練習したらしい。まずは、突きから新しい呼吸を作ることに集中する。
それからも毎日毎日冨岡さんに稽古をつけてもらった。
柱は多忙で、姉さんがいなくなった今警備範囲も増えているだろうに。
それでも、毎日毎日数分でも稽古をつけてくれた。本当に私が、仇をとれると思ってのことだろう。なら、わたしはその期待に応えなければならない。
日に日に感じる。冨岡さんの私の呼び方が、しのぶから胡蝶に変わっているのだ。今の私のことを認めてくれるから、胡蝶にしたのだろう。だけど、なんだろうすごくモヤモヤする。しのぶって読んでくれてもいいのに。
ふぅ駄目駄目私は姉さん皆の姉さん。今の私を認めてくれるそれでいいではないか。
胡蝶カナエがなくなってから蝶屋敷の主人は、胡蝶しのぶになった。本来は柱でなければ屋敷を管理できないのだが、蝶屋敷は鬼殺隊の医療場所となっているためなくては困る屋敷。なら、妹が継ぐのが道理だろう。
その翌日冨岡さんが来た。鍛練だろう。毎回冨岡さんは、木刀をもってくるのが当たり前だった。蝶屋敷にも木刀はあるのだが、折りすぎてもう在庫がないのだ。たが、今回は手土産をもっているではないか。木刀はどうしたのだろう。
「冨岡さん、こんにちは。わぁ手土産くれるんですか?ありがとうございます!」
「できているだろう」
「何がですか?冨岡さん」
「呼吸」
「えっ?」
呼吸、自分だけの呼吸冨岡さんがつくれとそういった。でも、まだできていないはすだ。少なくとも自分ではそう思っている。
「まだ、できていないと思うんですけど」
「できている」
「頑固ですね!」
はぁしまった!しのぶが、でてしまった。言い直さないとまずいまずい。
「頑固な……おか」
「しのぶが出たな」
はぁ!もう少しこの使った言葉を使えないのだろうか。
「いくぞ、道場」
「は、はい!」
その言葉で、現実に戻される。まだ、呼吸が完成したのは信じられないが、冨岡さんが言うのならそうなのだろう。そのくらい単純に考えた方がいいのだろう。
冨岡さんがもってきたは木刀一本。他の木刀はない、折ってはならない。
「見せろ」
すぅ呼吸音が、道場に響く。
短い言葉それでも、何を言いたいのかはわかる。まだ名もなにもつけていない。これが新しい呼吸なのだろうか。
息が切れる。でも、それは
「新しい呼吸ができ、てる」
新しい呼吸が、できている証拠だ。
「……名はどうする」
「もうちょっと、褒めてくれてもいいんじゃ、ない、ですか!」
「……できていると思っていたから」
また、この人の謎の私に対する自信はなんなのだろうか。でも、信頼されていて悪い気はしない。
「そう、ですね……胡蝶式呼吸術などどうでしょうか」
「……蟲は」
「はい?どうしました」
「蟲の呼吸は、どうだ」
「いいですねそれにしましょう。でも、どうしてですか」
「……蟲みたい、だった」
「嫌味ですかね」
「……蟲みたいに、鋭く、速かったからだ」
この呼吸の名前は、冨岡さんの案の通り蟲の呼吸になった。でも、これから何を目指せばいいのだろうか。自分だけの呼吸を目標にしていた。
「胡蝶、柱になれ」
またどこかへいってしまった。本当にこの人は言うだけいってどこかにいってしまった。柱、姉さんも柱だった。頭のなかではわかっていた。柱にならなければ、姉さんの仇に会うことすらできないのではないか。
また、あの人に後押しされた。本当に言葉が少ないくせに、いってほしいことだけ言うんだから。
ふと、道場の隅をみると冨岡さんが持ってきた手土産が置いてある。そうだ、手土産だ。よし、食べるぞ!風呂敷を外すと、手紙が挟まっている。
『励めよ』
それだけの言葉なのにうれしさで心が包まれる。この言葉にどれだけの意味を込めているのだろうか。
そのあと、毒の調合を調整したり呼吸の制度をあげたりして、月日がたっていく。
未だに、冨岡さんとの鍛練は続いてる。いつも木刀をもってくる冨岡さん。その距離感はなんとも言いがたい。
「こんにちは冨岡さん。今日も鍛練ですね。冨岡さんのお陰で今の階級は丙です!ありがとうございます」
「……そうか」
「それで、ご相談がありまして」
確かに冨岡さんのお陰で、突きの威力が上がり、自分だけの呼吸。蟲の呼吸ができた。たが、まだなにかできる気がしてならない。確かに階級は上がったが、それでも丙。柱には届かない。姉さんは柱だったそんな姉さんでも、悪鬼滅殺できなかった。
だが、どうすればいいのかわからなかったため、柱の視野が広い冨岡さんに助けを求めている。その旨を伝えると、冨岡さんとの合同任務をすることになった。どうやら、冨岡さんが頼んだそうだ。
「冨岡さん、こんばんは今日は月が綺麗ですね」
「今日の任務は、下弦がいるらしい」
「知っていますよ、もしかして知らないとでも柱になれる絶好の機会じゃないですか」
「そうか」
そういって、走り出してしまった。前から感じていたことだが、言葉が少ないし口下手だ。少しぐらい任務について共有してもいいのではないだろうか。
だが、さっきの下弦のやり取りでしのぶが任務については知っていることが、わかったのだろう。
はぁため息をつきそうになる。
今日の任務は山奥にあるひとつの小屋に下弦がいる。という情報しかない。実に馬鹿げている。まず、下弦の血気術や被害状況もわからない。だが、最近鬼殺した、下弦の参からここに下弦がいるといったそうだ。
今までこのような場合はなかった。言いそうになる前に謎に誰かに殺されたらしい。
だから今回の任務は、柱に任された。もしかしたら、罠かもしれない。本来は冨岡さんだけだったのだが、無理を言って、私を同行させてくれたらしい。なぜ、そんなことまでしてくれるのかわからないが、今はこの機会を逃すためにはいかない。ここで改善策がわかるといいのだけど。
「警戒しろ」
鬼の気配がする。空気が重いあながち間違いでもないのかもしれない。
「胡蝶、上だ!」
上そんなこと考えているうちに鬼が眼前にせまる。駄目だ避けられない。
「水の呼吸 捌ノ型滝壷」
私と鬼が離される。やはりこの人も柱なのだ。稽古のときで理解したと思っていたがこの人の実力は未知数だ。
ちっと舌打ちがでそうになる。今のうちに刀に毒を塗っておく。
「下弦だな、胡蝶やれるか」
「言われなくてもやりますよ。私にやらせてください」
「承知した」
よく、下弦を任せてくれるなと自分でも思う。だが、この人の期待に応えなければならない。私はこの人の期待に弱いものだ。
精一杯に地面を踏み込む。だが、まだあまいそれほどに高く飛ぶことができずにうまく突きができない。もう一度踏み込もうとするが、鬼から鋭い爪が届きそうになるが、あの人がなんとかしてくれる。
私は鬼を滅殺するそれだけ考える。
「血気術」
何がくる。回りを警戒する、他の鬼の気配はない。
「地崩し」
「あ、」
地面が崩れる。まずい踏み込みできないどうする取り敢えず後方へとぶがバランスを崩した。本当に私はまだまだだ。
「っ冨岡さん、お願いします」
本当は自分でやりたかった。でも、今の私にこいつをやれるだけの実力はない。本当に姉の仇をとるなど、夢の中のまた夢だ。はぁでも、死んではもともこもない。
「水の呼吸 壱ノ型・水面斬り」
首が綺麗に切れる。本当にその力が体格が羨ましい。でも、羨んでも仕方がない。
「……刀を、変えたらどうだ」
また、走ってどこかにいってしまった。本当にあなたはいつも的確なことをいってどこかにいってしまう。
刀そうか刀かいちいち今までの刀だと毒を塗らなければならない。
こうしてはいられない。
それからの行動ははやかった。刀鍛冶へといって、刀を変えてもらった。刃をなくし、鞘で毒の調合をできるようにしてもらった。
刀が変わっただけで、私の実力は変わらないはずなのに階級はいつの間にか甲となっていた。これもあの人のお陰。やはり視野が広く、私の問題まで解決してくれた。
それから少しして、柱に任命されることになった。これでようやく同じ土俵にたてる姉さんと。
姉さんが、死んでからようやく柱になれた。
柱合会議での挨拶。元気よく姉さんのように振る舞う。それが今の私胡蝶しのぶだ。
「蟲柱になりました。胡蝶しのぶです。これからよろしくお願いします」
挨拶を済ますと警備地区の振り分けや鬼の情報の共有などをし、解散することになった。
あの人はどうせすぐにいってしまう。一番に挨拶するならあの人だろう。
「冨岡さん、この度蟲柱になりました胡蝶しのぶです。あなたの言われた通り新たな呼吸を作り、柱になりました」
「……」
「ちょっと少しぐらいおしゃべりしましょうよ」
本当にこの人は。もとから話すような性格ではないと知っているが、それでももう少し話してもいいと思う。こうなったら
ツンツン
「……胡蝶やめてくれ」
「反応してくれましたね!」
「……」
また黙って、どこかへいってしまった。本当にどこへいくのだろうか。
そのあとの柱の人の挨拶は最初のはどうしたと思うぐらい順調にできた。
ここからが姉の仇への復讐の始まりだ。