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2 胸の痛み
みやめお #meo
バタン!
私は勢いよく自分の部屋のドアを閉めると、ベッドの上に横になった。
結局、結婚できなかったし、甘い時間も大して過ごしていないし。
何も考えずに寝ていたけれど、ここで二人で寝ていた時は幸せな時間だったんだろう。
つつー、と鼻のほうに涙が垂れていく。
その時、コンコン、とドアが叩かれ誰かが部屋の中に入ってくる。
「お嬢様」
リリは私の頭の方に座ると持ってきたお盆を膝の上において、目を伏せながら言った。
「主の」
「父上の話はあまりしてほしくないの」
私がそう言うと彼女はベッドに近くに椅子を置き、その上にお菓子や果物や飲み物が置いてあるお盆を置く。
私がむくっと起き上がるとリリはそっと私の肩に毛布をかけてくれた。
そして、穏やかな声で言った。
「お嬢様、ご気分はいかがですか? 少しでも、お菓子を召し上がれば気が紛れるかと……」
私は視線を落とし、お盆の上に整然と並べられたお菓子や果物を見る。
リリの思いやりが伝わってきて、少しだけ心がやわらぐのを感じた。
「ありがとう、リリ。……でも、まだ胸が苦しいの」
私がそう答えると、リリは私の手をそっと握った。
「お嬢様、私はずっとおそばにいます。たとえ皆が背を向けても、私だけは、お嬢様の味方です」
その言葉に、ぽたりと涙がこぼれ落ちる。リリの優しさに、どれだけ救われてきたことか。
「……ねえ、リリ。私はシェイにとって、何だったのかしら」
リリは答えに迷うように視線を揺らしたが、やがて静かに言った。
「それを決められるのは、きっとシェイ様ご自身です。でも――お嬢様がシェイ様を大切に思っていたこと、それは誰よりも深く、強かったと思います」
私はただ、うなずくことしかできなかった。