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天国の落としもの係
いちごりら
天国の入り口、ネオンサインがチカチカ光るプレハブ小屋。そこには、派手なスパンコールのジャケット(天国仕様)を着た男、○○がいた。
○○「ノー、ノー、ノー! 君! そのお辞儀は甘い!
天国に来たんだからもっと『解脱(げだつ)しましたー!』って顔で笑いなさいよ!」
そこに立っていたのは、定食屋を営んでいた頑固一徹な幽霊・源さん。
源さん「…笑えるか。俺はなぁ、死ぬ直前に開発した
**『究極のチャーハン』**の隠し味をバカ息子に教え忘れたんだ! 店を潰しちまう!」
○○「チャーハン! 炭水化物の宝石じゃないか! 素晴らしい! でも、
幽霊は地上で料理教室を開けないのがこの業界のルールなんだよねぇ」
源さん「そこをなんとかしてくれよ、
○○さん! あの隠し味がなきゃ、うちの店はただの米炒め屋だ!」
○○「……よし、乗った! その『究極のレシピ』、この○○がサイコメトリー・クッキングで届けてやろうじゃないか! 準備はいいか、源さん! ミュージック、スタート!」
地上。源さんの葬儀が終わったばかりの定食屋。 息子の息子(二代目)が、
フライパンを前に「親父の味が出せねえ…」と泣いていた。
そこへ突如、店の有線放送からズンドコ節が爆音で流れ出した!
○○『ヘイ、二代目! 泣いてる暇があったら鍋を振れ! 今から親父さんの
**「魂のラスト・オーダー」**を叩き込んでやる! 集中しろ、これは一度きりのライブだ!』
二代目の体が、勝手に動き出す! まるで背後から誰かに操られているかのように、
手が勝手に「ナンプラー」と「刻みラッキョウ」を掴んだ!
○○『それだ! それが隠し味だ! さあ、煽れ! 煽るんだ二代目!
悲しみを火力に変えて、天まで届くパラパラ感を見せてみろー!!』
中華鍋の中で米が舞い、黄金色のチャーハンが完成した。二代目が一口食べると、
そこには確かに、厳しかった親父の味が、そして優しさが詰まっていた。
二代目「……うまい。うまいよ、親父!」
天国のプレハブ小屋。 モニター越しに「完食」の文字が出たのを見て、源さんは目元を拭った。
源さん「……○○さん、あんた、とんでもねえお節介だな。
あんな派手な演出、親父の俺でも恥ずかしいわ」
○○「ガハハ! 演出は派手な方が記憶に残るだろ? さあ、源さん! 感動してる暇はないよ! 次は天国の食堂で**『究極の天津飯』**を作ってもらおうかな。私の胃袋はもう準備万端だ!」
源さん「……やれやれ。天国に来てまで鍋を振らされるとはな。……まあ、悪くねえか」
○○は源さんの肩を叩き、スキップしながら食堂へ向かった。背後のプレハブ小屋には、
今日も新しい「落としもの」を抱えた幽霊たちが、行列を作っていた。