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隣の学校の元ヤンに恋をする6
英加扠
バス停まで回り道で行くか、近道で行くか、それが問題だ。今の私には少なくともシェイクスピアで遊べるほどに余裕だけはある。バスが来るまで後40分。校舎内に留まることも考えたが、清水先生にばったり出くわしでもしたら気まずい。回り道の方は30分くらい。近道は15分。倍の差がある。近道の方が。いやでも、25分も待つということは、熱中症になる可能性はとても高い。矢張り、回り道。30分かかるなら、そんなに待たず、熱中症になる可能性も低そうだ。では回り道で行こう。
まず、十字路を右に曲がり、真っ直ぐの一本道を歩くこと12分。信号待ちに5分、間に合う。蝉が規則正しく合唱する。じわじわと夏の暑さが私の皮膚と体温を蝕んでいく。なんでこんな日に長袖で来た、正気か、朝の私に日焼け止めでもなんでも塗って半袖でいけと伝えてやりたい自分を叱りつける、信号が変わる。歩き出そうと左足を出したところで、違和感がある。視界が可笑しい。遠くの木が二重に見え、三重に見える。胃の奥から何かが込み上げてくる。足がまるで自分のものではないかのようにフラフラと安定しない、「ぁあ」必死に声を絞り出すが、私以外誰もいない。どうしよう、こんな時、救急車呼んだほうがいいのかな?スマホをスカートから取ろうとするが、横断歩道に倒れ込んでいる状態なので、上手く取れず、何回もポケットの布地に引っかかる。すると、「…大丈夫ですか」平坦で私を心配しているようには思えないそんな声が頭上から聞こえてきたが、その時私は視界が二重に見える恐怖が最高潮。目を伏せてこの人の判断に委ねるように意識を手放した。