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クロノヴァメンバー只今妹達を溺愛中?!
葉優は、窓からちらっと見える月を静かに見ていた。
そして隣には寝息を立てる兄。うるみやの規則正しい呼吸が、近くで、感じらる。
少し前までは当たり前の日常だったのに、いつからか胸を締め付ける。
甘くて切ない感覚に変わっていた。
彼らが兄妹になったのは、葉優がまだ幼かった頃だ。
母「ごめんねッ、、、ポロポロッおかんのせいで、、、ポロポロッ」
葉優「ぅー、、、ナデナデ」
親同士の再婚で、血の繋がりはないけれど、物心ついた頃からうるみやは「お兄ちゃん」だった。
母「葉優、、、お兄ちゃんだよ」
うるみや「葉優!よろしくなぁ!」
優しくて、賢くて、少し不器用なところも、葉優にとっては誇りだった。
ずっと、この「兄妹」という関係が続くと思っていた。
葉優は高校生になり、葉優の心は変化していった。
きっかけは何だったのか。
おそらく、学校で嫌なことがあって落ち込んでいた日、部屋の隅で座って落ち込んでいた葉優を見つけたうるみやが、何も言わず隣に座って、そっと頭を撫でてくれた。
うるみや「、、、ナデナデ」
あの瞬間。温かい手が、髪を梳くたびに、心がざわめいた。顔を上げると、困ったような、それでも心配そうに眉を下げて笑う兄の顔が、とてつもなく「男の人」に見えたのだ。
うるみや「、、、ニコッ」
それから、兄を見る目が変わった。
食卓で話をする横顔も、勉強を教えてくれる時の真剣な眼差しも、葉優の知らないところで友達と楽しそうに笑っている姿も、すべてが特別に見えるようになった。そして、その感情が「好き」という言葉でしか表現できないものだと気づいた時、葉優は絶望した。
葉優「うちらは兄妹なんに、、、」
自分に言い聞かせても、胸の奥で育ってしまった感情は、どうすることもできなかった。
その夜も、葉優は眠れずにいた。うるみやの部屋から聞こえる寝息に、どうしようもなく引き寄せられる。気づけば、薄いスウェット姿のまま、そっと兄の部屋のドアを開けていた。
葉優「うる兄、、、」
月の明かりに照らされたうるみやの寝顔は、普段のしっかり者のお兄ちゃんとは違い、幼い頃と変わらない無防備さがあった。その顔を見ていると、胸の奥がキュッと締め付けられる。
少しだけ、このままでいさせてほしい。
葉優は、音を立てないようにそっとベッドの縁に腰掛けた。少し触れたかった。その衝動に抗えず、震える指先で、うるみやの前髪をそっと払う。その瞬間、うるみやの瞼がゆっくりと持ち上がった。
うるみや「、、、葉優?、、、どしたん、、、?」
眠たげな声が、夜の静寂に響く。心臓が跳ね上がった。バレた、と焦る気持ちと、もうどうにでもなれ、という開き直りが混ざり合う。
葉優「ご、ごめんな、うるみや、、、起こしてしもたか、、、?」
うるみや「ん、、、いや、大丈夫や。どうしたんや?眠れへんのか?」
体を起こしたうるみやが、心配そうに葉優を見つめる。その視線に、葉優は咄嗟に目を逸らした。この優しい眼差しが、今は一番辛い。
葉優り「、、、うん」
うるみや「そうか、、、」
うるみやは、何も言わずに葉優の隣に移動し、とんとんっと優しく背中を叩いた。まるで、幼い頃に葉優が怖くて泣き出した夜、いつもしてくれたように。
その温かさに、涙が溢れそうになる。でも、これはもう、あの頃の兄妹の温かさとは違うのだ。この優しが、どうしようもなく「好き」という感情を募らせる。
葉優「うるみや、、、うちな、、、」
葉優は顔を上げた。月明かりが、うるみやの瞳に吸い込まれていくように見える。
葉優「うち、、、うるみやのことが、、、」
唇から、本当の気持ちがこぼれ落ちそうになった、その時。
うるみやの指が、葉優の唇にそっと触れた。
うるみや「……言うな」
囁くような声。その瞳には、葉優と同じ、いやそれ以上の、深く複雑な感情が渦巻いているように見えた。
うるみや「葉優が何を言いたいか、俺にはわかるから」
その言葉に、葉優の呼吸が止まる。
葉優(まさか、、、まさか、お兄ちゃんも、、、?)
うるみや「俺も、、、同じだやから」
その一言は、葉優の凍てついていた心に、熱い火を灯した。
普通なら許されない恋。それでも、2人の思いは「恋」として始まった。