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【2】霊媒師
少年の手を引っ張って自販機横のベンチに座る。
自販機で適当に飲み物を2つ買う。
少年の好みなど分かりゃしないので定番のを。
「ほらよ、お茶でよかったか?」
「あぁ...ありがとう、ございます?」
少年は困ったような返事をする。
相手からすれば、見知らぬ他人に急に腕引っ張られて飲み物奢られるって事...恐怖でしかない。
天音は缶珈琲に口をつける。
徹夜明けのボンヤリした意識を覚醒させるこの感覚が堪らなく好きなのだ。
「...急に引っ張って悪かった。俺は|東野天音《とうのあまね》。お前の名前は?」
「...|星河水樹《ほしかわみずき》、です。」
「あ、敬語なしでいいぜ。」
右手の缶を揺らしながら簡単な自己紹介を済ます。
少年...水樹は困惑しながらもペットボトルの蓋を開ける。
「で、もう一回聞くぞ。
お前、俺に何をした?」
自分以外の誰も気づくことのなかった《《ソレ》》にどうやって気づいた?
声のトーンを落として問いかける。
嘘偽りは許さない、と。
水樹は目を見開くが、やがて諦めがついたのか「ふぅ...」とため息をついた。
「別に、嫌だったか?」
「嫌じゃねぇけどさ、今まで困ってた原因がいきなり消えて、消した奴が目の前にいたら気になるだろ?ふつー。なんか間違ってるか?」
「いや、何も間違っちゃいねぇよ。たけどな、世の中には知らない方がいい事もある。
お前は今まで苦労していた。だかある日出会った男によってそれは解決した。
それで終わりにすればいい。」
「お茶、ありがとう」と言い、水樹は立ち上がる。だが天音はそれで終わりにできなかった。
「お前、あの化け物みたいな奴が見えるんだろ?...俺も見えんだよ。」
「...何処まで分かっている。」
「んー...まぁ、あれ怨霊だっけか、それだろ?
人を恨んで憎んで未練タラタラのやつ。大量に見てきたんだよ。」
「大量...確かにな。お前に憑いていた怨霊は大量の人の怨霊だった。
一体何の仕事をしてたらあぁなるんだ。」
「ま、ちょいと地獄を覗かせるような仕事をしてまっせ☆」
「...深くは聞かないでおく。」
苦笑も出来ないようで肩を竦める水樹。
水樹が目を逸らしている間も天音は目を逸らさない。
ついに二度目の諦めがついたのか、水樹は天音と目を合わせる。
「お前の言った通り、肩に憑いていたのは怨霊だ。
そして俺がそれを《《祓った》》。」
「...祓った?」
「あぁ。
俺は《《霊媒師》》だからな。」