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俺の妹は、水鉄砲で人を殺したがっていた。
数ある小説の中からこの小説を選んでくれてありがとう!!
俺の妹はいつも、**水鉄砲で人を殺したい**とそこかしこに喋り散らしている。
一体どこで殺すなんて言葉を覚えたのか?
そんな妹の名前は|銃子《じゅうこ》。
銃子は家族で旅行するとき、絶対に水鉄砲だけは持っていく。
もし、お気に入りのぬいぐるみか水鉄砲、どちらか一つだけを選ぶとしたら、真っ先に銃子は水鉄砲を選ぶだろう。
銃子の水鉄砲には常に水が満タンに入っている。
妹なりにも、その人を殺す準備ってのはマメにやってるみたいだ。
今思えば、母さんが銃子の誕生日に水鉄砲を買い与えたのが一番の原因だと思う。
あの日から、銃子は水鉄砲を肌見放さず持ち歩くようになってしまった。
それだけなら可愛いで済むのかもしれないけど、銃子は度々、鳩の群れを自慢の水鉄砲で襲ってる。
こんな妹だけど、水鉄砲に取り憑かれるまでは、二人で近くの公園へ遊びに行くこともあった。
だけど、あの日から、雪山をスキーで下るみたいに兄妹の時間が減ったのは言うまでもない。
確かに、俺が勉強で忙しいってのもあると思うけど、やっぱり銃子はおかしいと思うんだ……
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これは夏休みのある日だった。
「にいちゃ〜ん、あそぼ〜!」
銃子が俺の部屋を開けて、扉から顔をチラ見せしながら俺を遊びに誘う。
「遊ばねーよ。宿題で忙しいから」
背中を向けたまま、遊びの誘いを冷たくあしらった俺。
わざわざ付き合ってられないよ。あんなの。
「むぅん……」
銃子は不服そうに呻くと、ドアをバタンと閉めて、一人で庭に出ていった。
そんな銃子には目も暮れず、俺はただ鉛筆を握りしめる。
「はとさんまだかな〜?」
庭から聞こえる銃子ののんきな声。
部屋は日に照らされてカンカンに暑いのにも関わらず、俺は窓を閉めていた。
まったく……どうしてああなってしまったんだろうか。
不思議だ、今の銃子は本物の銃子なんだろうか?
どこかで入れ替わったんだよ、と言われても全然不思議じゃないレベル。
でも……思い詰めても仕方ない。俺は黙々と宿題を進める。
それは突然のことだった。
__**パァン!**
暑さにやられていた脳が一気に醒める。
爆音の方向は庭からだった。
俺は窓を開ける。
生暖かい風と同時に、花火のような臭いが鼻にまとわりついた。
なんだ、この臭い?
「わぁい! やったぁ!」
銃子の喜ぶ声が近所に響き渡る。
なんだなんだと窓から顔を見下ろせば、衝撃的な光景が俺を待ち受けていた。
地面に倒れるのは一羽の鳩。
体に穴が開いており、そこから血が噴水みたいにパチャパチャ噴き上がってた。
間違いない、死んでる……。
嫌な予感がして、俺は銃子が持っているものに目を移した。
それはいつもの水鉄砲ではなく、見たことのない黒い鉄砲。
銃先から出る白い煙、俺は確信する。
……拳銃だ。映画で見たことある。
そう俺が分析してる間にも、突然の爆音を聞きつけた近所の人たちがウチを覗いてた。
両親も庭へ駆け寄っていったようで、父さんは急迫した表情で拳銃みたいな物を取り上げる。
母さんはわーわー喚く銃子の耳をつまんで家の中に引っ張り込んだ。
そこから始まるのは、母さんお得意の説教タイム。
しばらくは、母さんのお説教が家中を支配してた。
俺は宿題第一であまり聞かないようにはしてたけど、正直、さっきの銃声よりもうるさかったとは思う。
話はここからだけど、銃子の持ってたのは本物の拳銃だそうだ。
その後に来た警察の人がそう言ってた。
なんで本物の拳銃があったのかというと、昔、ここに事務所?ってのが建ってたらしい。俺にはよく分からないけど。
でも、なんというか……いつか、こうなるとは思ってた自分がいる。
別に、今日の事を予測してたわけでもないけど。今までのことを鑑みると……。
というわけで、普段から銃子の水鉄砲愛とか変な言動に困らされていた両親も、昨日の事件から本格的に銃子の水鉄砲を没収した。そりゃ、当然だ。
水鉄砲を没収されてから、銃子は目に見て分かるほどに元気が無くなった。
確かに、今まで大切にしてた物を突然取り上げられたら、そうなるのは分かる。
……だけどさ、《《僕の元気も減っていく》》のは、おかしいんじゃないか……?
正直言って、銃子が遊びに誘ってくるのはウザかったよ……。
今思えば、俺の短い人生の半分ぐらいは、銃子のやんちゃに巻き込まれてきた。
飛行機の中で水鉄砲を撃ちまくって、銃子が絶対に悪いのに、なぜか兄妹揃って怒られたときもめちゃくちゃウザかった。
街行く見知らぬ人のうなじを狙いまくって、母さんから、なんで注意しなかったのって怒られたときも、めちゃめちゃウザかった。
いつでも……どんなときでも……銃子がウザかった……。
……だけど……だけど……。
あれ……俺、今どういう気持ちなんだろう……?
……水鉄砲を持ってない銃子って、なんだかおかしい。
今の銃子こそ偽物に見えるのは俺だけかな……?
てかさ……思い出せばさ、《《俺が一番悪いんじゃないのか》》?
……いつからか、俺は銃子と遊ばなくなった。
勉強の為だとか、宿題の為だとかで……そうやって銃子との間に壁を作ったのは、いつだって俺の方だった……。
妹が悲しんでいるというのに、俺は何をやってるんだ……?
俺、兄失格だよ……。
せめて、こんな時こそ一緒に遊べたら……銃子、喜んでくれるかな?
俺は急いで押入れを漁り始めた。
昔、まだ銃子が産まれる前、自分用の水鉄砲を買ってもらった記憶がある。
案の定、水鉄砲は押入れの肥やしになっていたため、想像以上に見つけるのに時間が掛かった。
だけども、ガラクタが自分の部屋を埋め尽くす頃、ようやく見つけることができた。
ちょっとデカいけど……まだ使える。
俺は水鉄砲を背中に隠しながら、銃子の部屋に顔を出した。
案の定、銃子は俯いてて元気がない。
「……みずでっぽー……みずでっぽー……」
今度は俺の番だ。
「なー銃子?……今から公園まで遊ぼーぜ!」
銃子は顔を上げる。一瞬だけ驚いたような表情を見せたが、すぐ弱々しくなった。
「……みずでっぽーないからあそびたくない……」
そうだよな。
……でも、この為に……俺はこの為に探したんだ。
俺は、背中に隠していた水鉄砲を見せびらかした。
「水鉄砲、ここにあるぜ」
水鉄砲を見た銃子は、表情を一瞬で昂らせる。
「あ……みずでっぽー!」
銃子は俺から水鉄砲を奪い取った。
とても銃子の体には見合わないサイズだったけど、銃子はすぐに慣れて、俺に向かってポーズをとり、カッコつけて見せる。
よかった、いつもの銃子だ……!
俺は思わず、妹に向かってほほ笑んだ。
「じゃー、公園まで競争な!」
「うん!」
俺と銃子は家を飛び出していく。
こうやって、兄妹で遊びに行くの、いつぶりだっけ?
まあ、銃子には楽しんでもらわなくちゃな!
「銃子、今日は兄ちゃんのこと、何回でも殺していいからな!」
「……え、いーの!?」
「いいぜ、兄ちゃんはな、実は殺されても復活できるんだ!」
「わーい! いっぱいころすー!」
こんな会話、傍から見たら物騒に聞こえるかもしれない。
だけど、そこに嬉しい表情を見せる妹がいる限り、俺も精一杯遊ぼうと思う。
……でも、銃子の水鉄砲愛がいつまで続くのかは分からない。
小学生までか、中学生までか、高校生までか、もしくは大人まで続くのか。
ただし、今だけは、この今だけは確かなことがいえる。
**俺の妹は、水鉄砲で人を殺したがっていた。**
やっぱりタイトル回収っていいよね。
感想お待ちしております!
【今回のぶっ飛び度(ぶっ飛んでるほど高評価)】12月22日記
①ストーリー
★★★★☆
銃子による実銃鳩狙撃事件が今見てもヤバいと思う。
あと、兄妹の溝が埋まっていくところも評価ポイント。
②キャラ
★★★★☆
水鉄砲に取り憑かれた銃子がかなりのぶっ飛び人間。でも、本当はいい子なんです!
お兄ちゃんの剣人も粋な子!やっぱり絆こそ宝物!
③ラスト
★★★★☆
タイトル回収が大好きなので高評価。
銃子は将来どうなるんでしょうね?