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side Kai - 1
目が覚めた。もう外はとっくに朝とも呼べぬ日光がカーテンの隙間から差し込んできている。
体がひどく気だるかった。
頭が痛い。ギシギシと関節が鳴った。起き上がるのも苦しい。
喉が渇いて、呼吸するのも一苦労だった。ああ、水分取らなきゃな。彼女だってそう言っていたんだから。
なんとか起き上がって、キッチンまで行って、コップを用意するのも面倒で蛇口を開けて手で|掬《すく》って飲んだ。
手の端から、|溢《あふ》れた水が|零《こぼ》れていく。
飲んで喉が潤った途端、締め付けるような頭痛がした。体が痛い。よろめいて、再びベッドまで行って倒れ込む。
強烈に眠いはずなのに眠れなかった。ただただ締め付けるような頭痛がした。|包《くる》まって、ぼうっと毛布の端を見つめる。ぼんやりした。
ふと、部屋にかけられた時計を見た。もう午後の三時を指していた。世間の一日の事もだいたい終わっている頃合いだ。僕はずっとベッドの上で過ごしている。
頭が痛い。何かできるわけもなかった。
でもさすがに起きなきゃ、しばらく触りもしていなかったスマホに手を伸ばした。タップする。
『12月13日』
出てきた画面にはそう記されてあった。
もう、季節はとっくに冬らしい。他の月、春、夏、秋、も確かに経てきたはずなのに、暑くなっていく季節も猛烈に暑い季節も涼しくなっていく季節も覚えているはずなのに、なぜか全てをスキップしたような、何も経験していないかのようだった。
開く。ニュース画面。『14:37 更新』の文字が見えた。更新されている。サイトが管理されている限り、更新されないニュースなんてない。
日々絶え間なく誰かが何かが動いていて、今この瞬間も過去となっていく。
ニュースの一つを開いた。タイトルと文章が目に入った。ただの文字列。文字の一つ一つは分かるのに、書いてある内容も分かるのに、砂漠の砂をさらっているような気分だった。
頭が働かない。白い紙でも眺めているようだった。
一日一日過ぎていって、同じ今日が来ることはない。他のみんななら。
それなら僕は、朝と呼べぬ時間に起きて、水を飲んで、また寝て、読めもしないニュースをぼんやり見る、そんな一日を繰り返している僕は一体なんなのだろう。
何も進まない。新しいものも変わっていくものも何もない。
ただ僕だけが、同じ日付を巡っている。その日付が何月何日なのかは忘れた。同じ二十四時間をループして、何も生まれない空白の時間を過ごしている。
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ガチャンという玄関の鍵が回る音で目が覚めた。
「ただいま」
ドアが開く音。帰ってきたんだ。
彼女の声が、空白な部屋の中を満たしていく。