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これは正当防衛。
アザミ
事の発端は、遡る事数分前。
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ドンッ!
「あ、すみません。」
「あ!ちょっとぉ一年ちゃーん?w今の衝撃でコップの水がウチのクリームパスタに入っちゃったんだけどぉ?w」
「うっわ、ひっどぉw人のパスタにそんなことしていいと思ってんのぉ?w」
「うんwそれ相応の罰が必要だなぁ?w」
えぇ、こんな絵に描いたような典型的な絡み方する人この世に存在したんだ。え?天然記念物やん。あと、治安悪!そんなことを思いながらリチルはギャーギャー言っている先輩たちを眺めていた。
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この学園に入学して一週間が過ぎようとしていた。まだ、1年にも関わらずミドル時代には出てこなかった術式、応用魔法、何より、実技実践、そして薬学。元々好奇心旺盛だったリチルは興味津々であった。
先程の実技での先生の構え方、重心の掛け方、力の抜き方、手足の角度、停止時間、魔法の発動時間などなど、上げればキリがないほど分析し、脳内で整理整頓していた。
ちゃんと前を見て歩いていた。
私は席を取ろうと向かう途中、向こうからすれ違い様に肩にぶつかってきた。そして、その台詞も相まって内心クッソブチギレていた。けどここで問題事を起こしても此方側に利益が一つもない。しかも相手は先輩。余り強く出るのもアレかと思い、穏便に済ませようとした。
「すみません。違うのですけど私のを食べますか?」
「はぁ?そんな事言ってんじゃねーんだよ!ウチはこれを食べたかったんですけどぉ?一年の分際で何言ってんだよぉ?!」
そんなん知らねーわ!!と内心もっとブチギレていた。
あと私今指図してませんよ?提案してるんですよ?脳味噌ねーんじゃねーの?とか思っていたが、残念ながら体に染み着いたポーカーフェイスが簡単に剥がれる筈もなく、いつも通りの笑顔のままであった。因みにそれは社畜時代の名残だ。
しかしそれが先輩達の神経を逆撫でする。
「なんなんだよその澄ましたお顔はよぉ?今の自分の状況、分かってますかぁ?」
「痛い目見たくなかったら大人しく弁償するかウチらが卒業するまで"お手伝い"しまちゅかー?一年ちゃーん?」
うっせーな。てめぇらがぶつかってきたんだろうが氏ね!と内心ご乱心であるリチルだが、遂にはマジカルペンを向けられた事で、案の定、野次馬がぱっと湧く。
SDAでは喧嘩なんか日常茶飯事。
生徒達の娯楽に過ぎない。
「、、、先輩方。魔法を使った私闘は禁じられている筈では?」
「私闘?ふはっw何を言い出すと思えば、コレは私闘なんかじゃねーよ!」
__じゅうりん__
「一方的な蹂躙だよ!一年!」
「良いんですか?ルールを守っていないじゃないですか。」
「良いんだよ!ごちゃごちゃうるせーな!」
そして、そのペン先が火の粉を舞い私の肩を掠めた
その傷口から赤い液体が肌を伝う。血だ。
不思議と私は痛みを一切感じなかった。
それどころか、リチルの口元は緩んだ。
「やってくれましたね^ ^なら、こっちは正当防衛ですよっネッ!」
リチルは取り巻きの1人の鳩尾に蹴りを入れた。
(よし)
狙った箇所に蹴りを入れられたことを確認し、
先輩達が声を上げるよりも速く、もう1人の取り巻きの背後に周り込む。
姿勢を低くし、足に蹴りを入れ、頭を打つのを確認する。
シャラリとオパールのピアスが不思議と吸い込まれるように、目に焼き付けられる。
ぶつかってきた主犯格と思わしき先輩の横に移動し、首に手刀を入れる。
だれも悲鳴を上げなかった。ただ、みんな口をポカンと開けて、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしていたので、思わず笑ってしまいそうになった。
「ゥェッッッッゲホッ、」
「何ッなんだよお前"」
その一言を最後に倒れてしまった先輩共
、、、。嫌、喧嘩ふっかけてきたのに弱くね?
「一方的な蹂躙ね、、。」
「そのような事にはなりませんでしたよ。先輩?」
彼女は少し冷めて伸びてしまった自分の昼食を手に取った。
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はい!回想の海に潜っていた皆様おかえりなさーい!
こちらは現在、地面に倒れている先輩達を見下ろしてる。リチルでーす!
どーしたらいーのぉ!?
まぁ、やってしまったのは仕方がない。
普通に先に手を出されたのは私なんで、相手のことを気にせずにそのままこの場を立ち去ろうと思う。
ここがお昼時の食堂じゃなかったらな!!
一瞬静まり返った食堂は瞬く間に空気が揺れ、ザワザワと騒がしくなる。
私達当事者だけの出来事なら何事もなかったかのように隠蔽するのだが(私が)流石にこの数の野次馬がいれば私にも無理だ。
私は今とてもお腹が空いているので早く昼食を食べたいのだが、席に着くことを周囲は許してくれない。
「コラ!サナギ共!道を開けなさい!」
あー、ヴェニ先が居たら確定で逃げらんないじゃーん。最悪。
__※ヴェニ先...オリキャラ、SDAの先生。クル先的な立ち位置。呼び名は一貫して「サナギ」本名はマダム・ヴェルニエ__
「アンタは、一年のシュリーブね。何があったか説明しなさい。」
まぁ、そうなるよねー。
ここは大人しく本当のことを話す。
取り敢えず自分の感情は全て差し置き、起きた結果と過程と詳細を話す。
「ほぅ、では今床に伸びているのが、絡んできた3年か、。」
「確かに、魔法を使った私闘では無いようだが、、、。」
「無抵抗の状態でペンを向けられ、自身の安全を確保する為必要だと考えました。」
「ついでに、忠告もしました。」
「あくまで、正当防衛であると?」
だからそう言ってますやん。私が被害者だって
忠告聞かなくって魔法打ってきたコイツらが100%ワリィだろ。
「でも、アイツ怪我してる?」
「早くって私見えなかったわ。」
「先にボコられたの3年じゃね?」
はぁ、どいつもコイツもバカばっか!だったら証拠見せますよ!
「先生、コレ、証拠です。」
そう言い、私は袖を捲り上げ傷口を見せた。
また空気がざわついた。私が悪いとか言っていた野郎共はしどろもどろになっていたり、バツが悪そうな顔をしていた。だったら最初っから発言すんなよ。とか思ってしまった。
「分かった。私はこの伸びてる奴ら回収してくる。アンタらも早く席につけ。シュリーブ。たとえ正当防衛だとしても、次からはないよ。」
うわっ、かっこい!と思ったリチルだが、その後昼食の味がしなかったのは言うまでもない。