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勇者と魔王のノンファンタジー
こちら、「これが王道のファンタジー」の続編となっております。読んでなくても話は通じますが、もうぜんっっぜん続編要素ないんですが、読んでくれたら吠えて喜びます。
とりあえずこれを開いてくれた喜びに。わおーん。
「ねぇ勇者」
「なんだ魔王」
「人間世界には無人運転ってものがあるよね?」
「おー、あるな」
「我思った。全部無人になったらさ、もうそれって人間いないんだから人間世界じゃないんじゃ?」
「…確かに。じゃあなんて名前になるんだ?」
「…無人世界?」
「大変わかりやすい。ところでさ魔王」
「なーに?」
「…お前、なんで俺の家に勝手に上がってんの?」
「なんかお前に会いたくなっちゃった!」
「そのセリフを言っていいのは美少女だけなんだよぉぉぉぉ」
勇者と魔王の取っ組み合いが始まったところで少々説明を。はい、失礼致します。
時は30XX年。あなた方がお住まいの世界とはまた別の、モンスターが蔓延る世界にて、魔王と勇者が生まれました。
そしてなんだかんだあって戦い、なんだかんだあって仲良くなりました。
そして魔王と人間は敵同士ではなくなりましたが…
「馬鹿野郎!アパートで火球投げんな!」
「えー、先に関節キメてきたのお前だよ?」
「それとこれとは話が別だ、部屋が燃えたらどうする!」
喧嘩するほど仲がいいという言葉がありますが、それにしても喧嘩が多い。困ったものです。
「あー、カーテンが…買い直す余裕ねーわ…」
「王様、報酬ほとんどくれなかったしねー」
「あんのクソジジィ…」
王は魔王討伐の報酬を理屈をこねくりまわして減らしたようです。その額まさかの銀貨十枚。ちょっと豪華な食事一食分と言ったところでしょうか。
「…勇者がさ」
「ん?どうした魔王」
「もしも勇者が我を倒せなかったら、王様はどうしたんだろーね」
「さあな。俺らが弱かったってことにして新たな勇者を集うんじゃねーか?」
「…なんか、人間も無人運転みたいだね」
「急だな」
「だって、無人運転してる車が事故おこしたら、制作者のプログラムのミスでも車のせいにできるじゃん?【車のバグです】って」
「…そうだな」
「でも、事故おこさないのは当たり前じゃん?」
「うん」
「人間も、失敗したらどんな事情があってもその人のせいになっちゃうんだよね。失敗しなくても、褒められるわけではないし」
「…」
「ねぇ、人間は何のために失敗を恐れるの?」
「…さあな。俺は何のためとか意識したことなかったし」
「変なの」
「…ただ、俺が失敗したら仲間が死ぬ。それが嫌だったってだけだ」
「…ふーん」
「…あーもー!暗い話はやめだ、やめ!今日はカレーの出来がよかったからな、特別に食わせてやるよ」
「ッ本当!?やったー!」
魔王はパッと笑顔になって、意気揚々とカレー皿を並べ始めました。相変わらずカレーに目がないようです。
ボロいアパートに魔王と勇者が2人、カレーを食べています。2人とも幸せそうです。
「ところでさ」
「どうした勇者」
「無人世界のことなんだけど」
「おう」
「真に無人なら人間の言葉で名前を考える必要はないんじゃないか?
だって、誰もいないじゃん」
「…確かにそうだな」
敵同士の運命を持った2人は、たわいない話をずっと続けましたとさ。
めでたし、めでたし。
「ところでさ、お前は誰なん?」
気にしないでください。ナレーションです。
…作者側に限りなく近いナレーションです。
「メタいね」
「メタいな」