公開中
GW企画 #3
ツイステッドワンダーランドより『レイ・キャリコ』を深掘り!
レイside
俺の名前はレイ。
夕焼けの草原のスラムで日々を送っている。
この世界に絶対はない。
街で暮らす奴らと違って、ここでは簡単に誰かが死ぬ。
いつも通りの平和な日常なんてもの、ここにはない。
今日も、日が昇る前に目が覚めた。
スラムで共に暮らす兄弟達を起こさないように家を出て、屋根に飛び乗る。
真っ黒な空が、赤く染まっていった。
そして太陽が、街から昇る。
「今日もいい一日になりますように」
手を合わせた俺は、そう呟く。
最近は暖かくなってきたからか、はたまた周りの奴らも大きくなってきたからか。
朝になって冷たくなっている兄弟はいない。
「──レイ」
ふと、下からそんな声が聞こえた。
俺が屋根から降りると、ばあちゃんが黒い紙を持っている。
いや、あれは封筒か。
「アンタ宛に届け物だよ」
「一体誰から──って!?」
ナイトレイブンカレッジからじゃねぇか。
世界有数の魔法師育成学校。
闇の鏡、とやらに選ばれた人しか入れないという噂だ。
中を開けてみると、入学案内が入っていた。
「……ばあちゃん、俺」
「行ってきな」
「え……?」
まさか背中を押されるとは思っていなかった。
「アンタは魔法の才能がある。子供達は私が見てるから行ってきたら良い」
「……ありがと、ばあちゃん」
兄弟達には寂しい思いをさせると思う。
でも、外に触れていっぱい土産話をしてやることにした。
バイトしていいなら、何個でも掛け持ちしよう。
ナイトレイブンカレッジには七つの寮がある。
その中でも、獣人族が多いのは百獣の王の不屈の精神に基づく『サバナクロー寮』らしい。
当然、俺もそこに入るものと思っていた。
「汝の魂の形は──」
「へ?」
もう一度聞き直してやろうかと思った。
でも、後ろも詰まってるから止めた。
「おい、こっちだぞ」
俺は声のした方に歩いた。
そして、その寮の列へと並ぶ。
本当にどうしてかが分からない。
「大丈夫か、アンタ」
「……俺、なんで《《オクタヴィネル》》なんだろう。ここ、人魚が多いところだよな?」
「あぁ。多分『不屈』よりは『慈悲』の方が合っていたんだろ」
意味が分からねぇ。
でも闇の鏡が言ったから、間違いない筈。
もしラギーとか来たら絶対サバナクローだよな。
え、悲しい。
それから少しして、俺ら新入生はオクタヴィネル寮へと来ていた。
寮案内が終わり、部屋が振り分けられる。
普通は四人部屋らしいが、今回は二人部屋もあるらしい。
どこか三人にしたら良いのに。
そんなことを考えながら俺はクジを引いた。
「それじゃあ移動を開始してください」
寮長の言葉で、俺らは部屋への移動を始めた。
扉を開くと、真っ先に窓が目に入る。
でも青空が広がっているわけではなく、海があった。
魚も泳いでいる。
「すげぇ……」
思わず、そう呟いてしまった。
スラムでは絶対に見れなかった景色が、窓の外に広がっている。
「何だ、ルームメイトはアンタか」
「……お前、さっきの」
「俺はリュウ。これからよろしくな」
あぁ、と俺は手を差し出された手を握り返した。
入学したときの物語ですね。