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女の子
2025/11/24 女の子
彼女に告白されたのは、私たち以外誰もいない、17時45分の下駄箱だった。外から入ってくる朱色の光が眩しかった。彼女の口から唐突に放たれた好きという単語に、私はまず戸惑った。一秒の間に、断るという選択肢が出た。私は彼女のことを恋愛対象として見たことがなかったし、好きでもなんでもなかったからだ。次の一秒で、しかし案外、私のことを好きな人と付き合ってみてもいいのかもしれないと思った。さらに数秒、考えた。そのあと、目の前で顔を赤くし視線を泳がせている彼女に私は言った。「うん、付き合おう。」彼女は安心したようにはにかんだ。女の子、という感じの初々しい笑顔だった。初めて彼女が可愛らしい顔立ちをしていることを知った。
その日は一緒に帰った。緊張しているのか口数が少ない彼女との空間は、居心地が悪かった。それは私の心の表面に、薄い罪悪感が張っているからなのかもしれなかった。やっぱり断れば良かったという後悔が一瞬顔を覗かせた。
彼女に別れを告げられたのは、私たち以外誰もいない、17時55分の教室だった。冬になりかけの秋だった。日がだんだんと短くなっていて、教室は薄暗かった。彼女は付き合い始めた頃よりもいくらか大人っぽい笑顔を浮かべた。2ヶ月でこんなに表情が変わるものなのだなとなんだか驚いた。女の子ではなく、女性に見えた。
「聞いてる? ねえ。」私が10秒ほど返事をしないでいると、彼女は困ったように笑った。別れ話を始めているというのに、そのような空気ではなかった。普通の、どちらかといえばくだらない日常会話をしているみたいだった。「聞いてるよ。」彼女がまっすぐ私の目を見つめてくることに耐えられず、視線を時計にずらしながら頷いた。どうして彼女がいつもと同じ調子でいられるのか、私には全く理解ができなくて、たぶん彼女は大人なんだろうと感じた。遠くにいると感じた。ほんの少しの恐怖も感じた。「じゃあ…さよなら。」時計の長針がカチッと動いた。17時56分。彼女は私の返事を聞くことなく席を立ち上がり、教室を出て行った。どうして別れを告げられたのか、理由が聞けなかったなーとか、私は別れることを了承してないのになーとか、まあどうせ了承していたけれど、とか、女々しいことがぽんぽん浮かんできた。
主人公が激ださな小説を書きたいな。てか主人公の好きな人まったく出てきてなくておもろい。