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小さなゆめ
「わぁ、きれい」
ふわふわの心地がして目を開けた
何かを被ったおっきな四角の周りは真っ白なきらきらが降ってきた
近くにも落ちてきたから触ると冷たくて
もっと触りたくなったの
でも四角の真ん中から体は動かせなくて
どうすればいいのかな
わかんない
…あれ、ならこの上のものを無くせば動けるよね
「んー…」
無くしても何かが手についてたの
ずっとしてたちくちくはこれなのかな
「…なら抜けばいいよね!」
思いっきり抜くと
びーびーって音が鳴った
音が鳴るおもちゃだったのかな
でも鳴ってすぐに何かに抑えられて
またちくっとしたの
…もっと動きたいな
もっといろんなものを見たいな
真っ白だけじゃ足りないや
「 ちゃん、大丈夫だよ」
「え?」
「大丈夫、治ったら沢山動けるようになるからね」
うさちゃんが話してる!
かわいいね
…治る?私病気じゃないよ?
手のとか上ので動けないの
「私、病気じゃないよ」
「大丈夫だよ、落ち着いてね」
「うさちゃん?私病気じゃないよ!」
「大丈夫だよ」
…このうさちゃん、同じことしか言わないや
「 ちゃん、好きなものはある?」
「好きなもの?わかんないまだ知らないの」
「 ちゃん、今日もきたよ」
「?うさちゃんはずっとここにいるでしょ?」
「明日は他の子も連れてくるからね」
「…ねこちゃんがいいな」
…
うさちゃん、話さなくなっちゃった
ずっとキラキラも降ってきてるけど何もないな
「 ちゃん」
「…だぁれ?どこにいるの?」
「もらった果物、お隣に置いておくね」
「果物?あ!りんご!それにぶどう?見たことないからどんなものかわからないから、見たいな」
待ってても何も置かれない
「嘘、ついたのかな」
だめだよ、嘘は捕まっちゃうからダメなんだよ
…静かになっちゃった
まだ動けないや
あーあ
早くいろいろ見たいな!
…目が暗いな
「これは知ってるよ、おやすみの合図だね」
知ってるの
この合図があったらおやすみしないといけないんだ
「だから、おやすみなさい!」
目が真っ暗になっちゃった
「…おはよう、うさちゃん」
あれ?うさちゃんいないの?
あ!あった…あれ?
「ねこちゃんもいる!ふわふわしててかわいいね」
薄い土みたいな色のかわいいねこちゃん
ねこちゃんは話してくれないのかな
「 、早く起きてね」
…だれ?
「私起きてるよ?」
「早く話したいよ、私もう卒業しちゃったんだよ?」
「卒業?何それ?ねーね!なぁにそれ!」
「そうだよ、俺だってもう中学生だぜ?」
「中学生?何それ…」
ねこちゃんは知らない言葉ばっかり話してる
それにいろんな声がする
よくわかんないや
「今日は のために許可もらって色々持ってきたんだ、起きたら遊ぼうぜ」
色々?見たいな
「これはトランプ、いろんな遊び方ができるんだ、俺は大富豪が1番得意だしな!」
トランプ、…それは知ってるよ!いっぱい模様があるカード!
「これはお人形ね、 、よく遊んでたでしょう?」
お人形?あ、わかった
いっぱい持ってたやつでしょ?私わかるよ!
「遊びたいな!私、遊びたい!動きたいよ」
ちくちくの元、まだ手にあるの!
もっといろんな色みたいな!
ねぇ、早くして
私いつになったらうごけるの?
もっともっと動きたいの!
「…あのね 、実は許可もらったのこれだけじゃないの、動くの好きだったもんね」
「え?」
何かに浮かされてふわふわの雲に乗せてもらった
「…!やったぁ」
ねこちゃんも隣に座ってくれてふわふわのまま
どんどん四角を離れてく
はじめて動いた周りは真っ白じゃなくて
緑とか青とか赤とか!いっぱい見えて
沢山声が聞こえたの
「たくさん、わんちゃんとかねこちゃんがいる!」
「たのしい!」
「どう?本当は みたいな子はベッドが絶対なんだけどすごくお願いしてね」
「そ!ここだけなら大丈夫になったんだよ 、楽しいか?」
「うん楽しい!ありがとうねこちゃん!」
もっと、いっぱい楽しいこと、したいな!
「…やっぱり、起きないな」
「仕方ないよ、あんなことがあった上病気にもなって、簡単には目覚めない、わかってたでしょ」
「わかってる、でももうこれで5年だろ、ずっと起きなかったら…」
「間違いなく、どこかで諦めなくちゃいけなくなるわ」
「なぁ、聞こえてるなら…早く起きてくれよ」
点滴の先にはまだ目覚めない俺らの友達がいる
5年前にこいつ以外の一家全員が転落事故で亡くなって以来ずっと寝てる、2年前にはそれに足して病気も始まって
ずっと俺ら2人はお見舞いにきてる
好きだった雪は見せられない代わりにスノードームを
うさぎや猫が好きだったからぬいぐるみを
甘いものが好きだったから果物を
動くのが好きだったから車椅子を借りた
どれだけやっても
どれだけ話しても
身じろぎの一つもしない
ただ、息だけをしてる
「なぁ、起きてくれよ」
「その夢から、覚めてくれよ」
「…もうすぐ面会の終了時間よ」
「わかってる…またな、また明日も来るよ」
「次は、犬でも持ってくるよ、ゆめ」
「そうね、また来るわね、ゆめちゃん」
扉を閉めて、また明日のことを考えた