公開中
Reunion
ハイリスクレッド
ショート・ショートストーリー✍ 28
☆
再会、彼女と彼・幼馴染と初恋。
☆
彼女の姓名は、くれない ふうか ❨紅 風神❩
葉桜の季節に誕生した気まぐれとこだわりの人間である。
☆
彼の姓名は、はいばら らいが ❨灰原 雷神❩
桜の花散る季節に誕生したこだわりと面倒くさがりの人間である。
☆
くれないふうか、はいばららいが、そんな二人、彼女と彼の関係は同い年の幼馴染だった。
彼女と彼が出会ったのは幼稚園児の時、以来、小学校、中学校とまるで姉弟?兄妹?の様に共に時間を過ごしていた。
そんな二人、彼女と彼の関係性が変わったのは高校進学という選択肢で別々の高校に進学したことだった。
彼女は、地元のナンバーワン進学校へ。
彼は、地元の平均的工業高校へ。
☆
彼女の姓名は、くれないふうか。
愛生という市に誕生し、育ち、高校生までを過ごしていた。
大学進学後は大阪の彗田市で過ごした。
中学、高校と頭脳明晰ではあったが特に何かの部活動をすることも無く特に目立つこともせず、大学生活をも粛々と過ごし、少しばかり上場の企業に就職して数年が経っていた。
だが、彼女には敢えて公にしては無い姿が二つあった。
その一つ目は、バイクに乗ること。
バイク女子として、ひとりツーリングを楽しむこと。
愛車のHONDA レブル 250 S エディションレッドカラーで、季節の折々に気の向くままに吹く風の様にただただバイクをはしらせるのである。
その二つ目は、トラディショナルマーシャルアーティストであること。
古武術柔術拳法の正統伝承者であること。
正統伝承者とは古武術の心技体を紛うことなく代々現在に受け継ぎ未来へと伝える使命を背負った家系の者である。
☆
彼の姓名は、はいばららいが。
愛生という市に誕生し、育ち、高校までを過ごし大学進学により鏡都府の紙京区で過ごした。
小学校、中学校と、幼馴染の彼女と彼は共に同じ時間を過ごす日々が当り前で、特に部活動もする事も無く彼女の自宅敷地内にある道場で日々を古武術の修練に費やしてきた。
高校進学という選択肢により彼女と共に過ごす時間は無くなっていた。
それは、彼の高校生活の比重を部活動に費やしていたからだ。
その部活動とは、空手道部だった。
俗に、一般的な知識で言われる寸止めカラテでスポーツカラテで、スポーツとしてのルールが全てでルールさえ守っていれば楽しく盛り上がり、インターハイだとか選抜大会だとか、国民スポーツ大会だとかと目標も分かりやすかった。
彼は、スポーツカラテの各大会で上位入賞を繰り返し有名スポーツ選手として大学進学の助けにもなった。
そんな感じで大学進学後も空手道部の部活動を続けるつもりの気持ちを持っていた、が、実際に入学した後に新たにハマったモノが二つできた。
その一つ目が、バイクであった。
愛車である HONDA CB 250 R マットガンパウダーブラックメタリック を駆ってクールな風になれるひとりツーリング。
その二つ目は、プロレス、大学の交流サークルの学生プロレスであった。
プロレスとは、格闘スポーツエンターテイメントである。観客の歓声と声援にレスラーが雄叫びで応えガッツポーズ、ファイティングポーズで盛り上がり盛り上がげるのを楽しむのだ。
そして、彼は格闘スポーツエンターテイメントの最高峰を求め目指し、大学卒業後にはユーエスエーへと渡った。
☆
彼が、ユーエスエーへ渡って三年が経った。
始めは小さなプロレス団体をいくつか渡り歩きながら、少しずつ少しずつ名が売れてきた時、プロレスの神様からのビッグサプライズとも言えるメジャープロレス団体からのオファーが舞い込んだ。
オファーの条件はひとつ、彼はジャパニーズニンジャの末裔だ。
リングネームは、ジャパニーズニンジャ・イナズマンライガー!
小柄で素速く躍動する彼の能力を活かしジャパニーズマーシャルアーツをエンターテイメントなプロレス技にアレンジして使用する事だった。
まさかの21世紀の昨今でも日本にはふつうに忍者がいると信じていた信じているユーエスエーピープルには、ニンジャ・イナズマンライガーはおおいに受け入れられた。
おおいに受け入れられれば、人気が上がる人気が上がれば当然の流れでタイトルマッチに抜擢された。
タイトルマッチは大熱戦を見せ、見事にチャンピオンとなった。
ユーエスエー認定ワールドJrヘビー級チャンピオンとなったのだ。
彼が、ユーエスエー認定ワールドJrヘビー級チャンピオンを奪取した事は日本のプロレス関係者やプロレスファンの間でも大きな話題となった。
そして当然の流れの様に日本のメジャープロレス団体からのオファーが舞い込んだ。
イッテンヨンビッグエッグドーム・ニューイヤー大会!
逆輸入、ジャパニーズニンジャの末裔、イナズマンライガー!見参!!
ユーエスエー認定ワールドJrヘビー級チャンピオン
ヴァーサス
エヌジェイピー認定インターナショナルJrヘビー級チャンピオン。
ダブルタイトルマッチ!決戦!!
こうして、彼は数年ぶりに日本の地に帰国したのだ。
☆
彼女の姓名は、くれないふうか。
社会人生活も数年経てば彼女を慕う後輩も幾人か出来てくる。
その彼女をもっとも慕う後輩女子が、プ女子と言われるプロレス大好き女子であった。
やたらと熱く勢いよく事あるごとにプロレストークを炸裂させ、彼女を、くれないふうかを巻き込んでいった。
そして遂に、プ女子の後輩女子は彼女とイッテンヨンビッグエッグドーム・ニューイヤー大会の観戦を共にする事となったのだ。
彼女もせっかく自分を慕ってくれる後輩女子を無下にはできず、新年休みのレクリエーションの一日として快く巻き込まれたのだった。
彼女の、くれないふうかのプロレスへの認識としては、身体を鍛えた者達がエンターテイメントとして格闘パフォーマンスをすると言う程度だった。
当然、リアルな古武術などとは異文化だと言う認識であった。
☆
ニューイヤー大会、イッテンヨン当日のビッグエッグドームの観客動員は大入りとなった。
そしてその日は、彼女、くれないふうかにとっては初めて尽くしの信じがたい光景ばかりだった。
ファーストマッチから出場選手の名がコールされるたびに地鳴りのような歓声が起き、地鳴りのようなBGMが鳴り響くと同時にレーザー光線が目まぐるしく煌めく、その空間に圧倒されていた。
さらに試合の内容には摩訶不思議な感覚に入り込んでいた。
実に単純明快に殴る蹴る投げるを仕掛けたり仕掛けられたを互いに全身で受け止め、独特な間合いを計り唸り声や雄叫びを上げると観客達が盛り上がる。
こうして、シングルマッチ、男子、女子。タッグマッチ、男子、女子。トルネードランボーマッチと試合が進んでゆき休憩時間がもたらされた。
そして、今迄の雰囲気を変える新たな演出が休憩時間あけに待っていた。
ドーム内の照明が突然落ちスポットライトがリングのみを照らし出し、リングアナウンサーが高らかにコールをおこなった。
「本日、イッテンヨンニューイヤー大会、ダブルメインイベント、パート、ワン、タイトルマッチをおこないます!」
このコールに観客達の歓喜の声が湧き上がる。
「ユーエスエー認定ワールドJrヘビー級チャンピオン、ヴァーサス、エヌジェイピー認定インターナショナルJrヘビー級チャンピオン、ダブルタイトルマッチ、尚、この試合の勝者は統一チャンピオンと認定されます」
おぉ~と観客達の感嘆の声が大きく漏れる。
選手入場口一点にスポットライトの位置が変わる。
選手入場のコールがされ、エヌジェイピー認定インターナショナルJrヘビー級チャンピオンが花道に現れ軽快なBGMにノリ、軽やかなステップでリングへと向かい、リングインする。
続けてユーエスエー認定ワールドJrヘビー級チャンピオンが花道に現れ凛とした和風な音色のようなハード・ロックなBGMにノリ、舞う様なステップでリングへと向かい、リングインする。
「コーナー、逆輸入ジャパニーズニンジャ、イナズマン・ライガー!」
リングネームをコールされると共に真っ白な道着ジャケットのフードを払いのけ、燃えるような紅色でペインティング、隈取りされた顔を曝け出す。
同時に観客達の歓声と共に彼女の隣に、くれないふうかの隣にいた後輩女子、プ女子の後輩が悲鳴にも似た声を出していた。
キャー、キャー、きゃ~、ライガー〜、イナズマン・ライガー!超クール!
☆
格闘パフォーマンスエンターテイメント。
単純明快に殴る蹴る投げるを仕掛け仕掛けられ互いに受け止める。
さらに跳ぶ飛ぶ、リングの中から外へ、外から中へ、3本ロープを駆使し上から間から蹴り飛びぶち当たる受け止めるを互いに。
さすがに、タイトルマッチともなるとパフォーマンスの手数、種類の豊富さに、彼女は、一段と感心見惚れさせられた。
パフォーマンスタイムが長く、長引く程に彼の、イナズマンライガーのペインティングが隈取りが剥がれ落ちてゆく、そして完全に隈取りが剥がれ落ち彼の素顔が露わになった。
その素顔に彼女は目を見開き、目を疑い、目を奪われた。
えっ…ライガ…?
彼女は無意識に呟いた。
その呟きをプ女子が聞き漏らさず聞き返す。
先輩、イナズマンライガーに惚れました?
リング上で、彼が、イナズマンライガーが天を仰ぎ天を指差し雄叫びの様に絶叫する。
!イナズマ!ラウンディングニールラリアット!!
その声に確信を得るようにまた呟いた。
はいばら、らいが…
その呟きを聞き漏らさないプ女子。
えっ…はいばら?らいが…?って?
彼が、イナズマンライガーがリング上で素早くロープへ駆ける、反動を利用した勢いで身体が翔ける、身体が回転しニールラリアットがターゲットの延髄へ衝撃を打ち込む。
ん?古武術式、胴回し踵蹴り?
別名、イカズチ落とし!
その技、その技の切れ、動作を見た瞬間、その場から彼女は、くれないふうかは駆け出していた。
駆け出し、リングへと向かう彼女。
観客席と観客席の間の通路を彼女は駆けた。
駆けながら、くれないふうかは叫び彼の名を呼んだ。
らいが!はいばら!らいが!!
観客の歓声と雑音の中、その声に、彼女の声に応えるように彼は動きを止め辺りを見回す。
そして彼は駆けてくる彼女を見止めた。
ふうか?くれない…ふうか!?
彼は無意識に呟いた。
リングへと向かい駆ける彼女に気付いた若手たち、セコンドにいたヤングタイガーたちが立ちはだかりる。
立ちはだかったヤングタイガーたちが彼女を制止にかかる。
右側から制止を試みるヤングタイガー、彼女は右手の掛け手一手でその場に薙ぎ倒す。
左側から制止を試みるヤングタイガー、彼女は左腕の一振りでその場に崩し落とす。
正面から両腕を広げ制止を試みるヤングタイガーを両手掌底打で弾き飛ばし、何事も無かった様子で彼女はリングサイドに立っていた。
☆
再会、彼女と彼。
10年ぶりの再会、くれないふうか、と、はいばららいが。
幼馴染の彼女と彼。
灰原雷神は、紅風神の初恋の彼であり、紅風神は、灰原雷神の初恋の彼女であった。
☆
彼女との再会を期に彼は、プロレスラー、イナズマンライガーは主戦場を日本の地に移し、ユーエスエー認定とエヌジェイピー認定のチャンピオンベルトを返還返上しフリーランスレスラーとしてインディーズ団体からメジャー団体まで拘ることなくリングに上がり格闘パフォーマンスエンターテイメントを繰り広げた。
くれないふうか、と、はいばららいが、の過ごす時間は再び同じ時間となっていた。
END。