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又旅浪漫
ネコとは、毎日が命懸けなのである。
建設会社に到着した俺は
がちゃがちゃと明日の準備をこなす
ニンゲン達を眺めていた。
この仕事にどれ程の危険が潜んでいるのか
ネコである俺にはよく分かるのだ。
やはり、ネコ界とニンゲン界は似ている。
それにしてもいかん。
先程は高揚しすぎてしまったようだ。
「おうキヨシじゃねえか。」
そう声をかけるヒトはタツオ。
家のヒトとは違うが、
ここにも"ヒト"はいるのだ。
家のヒトほど長くはないかわりに
横幅ががっちりとしている。指までだ。
その指で俺をガシガシと撫でるのだ。
俺はこれが大...嫌いでは無い。
礼に少し甲高く、にゃあと鳴いておくか。
「もう行くんかテメェ」
多分何か冗談めいた暴言を言っているが
なかなかに良い奴なのだ。問題はない。
そうこうしてるうちに呼吸も落ち着き、
先程の鉄箱の出来事に
遅れてひやりとするぐらいには
思考がまとまってきたようだ。
無茶は良くないなと思うものの辞められぬ。
オスネコである以上無茶くらい、とも思う。
毛繕いで身嗜みを整え
白ネコを訪ねるとしよう。
日没に追われているが、これもまた辞められぬ。
ぺろぺろと整えた毛並みに
ほぼ真横からオレンジ色の光が射す。
太陽は地面に着地している。