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ぼくらは青春ボディーガード⑤
天空ちさゆ
できれば前回の小説を読んでからお読みになっていただけると嬉しいです!(語彙力ないんで( ;∀;))
あ、楓SIDEもあるかもです!
では、本編へどうぞ(*・ω・)/
第5話「ボディーガードin学校!?」
二人の足音がコンクリートに響く。
今日は、記念すべきボディーガード生活二日目だ。
盗聴器とか、GPSとか、通信機とかいろいろつけられていて体はほんのちょっと重いかもしれないけど。(ほんとにほんのちょっとだけど!)
でも、心はウソみたいに軽い。
二日前くらいは一人で登校していたけど、今日からは夜桜さんとだ。
「あ、もうすぐ青になるよ」
「ほ、ほんとだ。行こう」
俺はあわてて横断歩道をわたる。夜桜さんは、車に乗っているおじさんに向かって、ぺこりと一礼した。
夜桜さんって、六年以上外へ出ていないのに、すごく礼儀がしっかりなってる。
……もしかして、部活や授業のことは何もかも知ってる!?
そうでないと、ミニ作戦を立てておいた意味がないんだけどな……
あっという間に、学校に着く。
門をくぐると、優空が待っていた。
今日は、特別な作戦のために早めに学校に来たから、人はいない。
……まあ、《《全員いないわけじゃない》》けど。
「颯、楓ちゃん、おはよ!」
「わっ、七瀬さん、おはようございます」
「あはは、楓ちゃん、そんなにあらたまらなくていいよ!なんてったって、友達だもん」
「と、友達?私が、七瀬さんと?」
「うん。ダメかな?」
「いえ、全然!むしろ、嬉しくて」
「よかった!じゃあさ————」
夜桜さんは、だんだんと笑みがこぼれている。
人を笑顔にできることが、優空のいいところだよな。
「優空、そろそろ行こう。凛空が待ってる」
「あ、そっか。楓ちゃん、行こう!」
「うん!」
俺たちは下駄箱で靴を履き替える。
俺たちのミニ作戦は、ここからだ!
「凛空~、おまたせ!あと、おはよう」
「おはよう。颯、優空、夜桜さん」
「お、おはようございます!えっと、ここは、教室ではないですよね……?」
そう、俺たちは今、教室とは真反対の、4階の図工室前にいる。
なにをするかっていうと……
「そう!楓ちゃんがさらに学校を楽しめるために、学校探検をしようと思って!」
「優空が企画したんだよね。教室を目指して、わざとあっちこっち遠回りするんだ」
「へえっ、すごく楽しみ!」
学校探検。
俺たちが(といっても優空が)企画したのは、1年生ごろにやった学校探検。
学校に行ったことがない夜桜さんのために、学校を探検する。
でも、凛空の事情があったから、学校探検のルートを決めるは難しかったんだよな……
————ちょっとしたサプライズも兼ねてだったし。
「それでは、学校探検スタート!まず、図工室からだよ。」
「ここは、美術の授業で、のこぎりや版画を利用するときに行く場所。主に————」
げ、俺だけ遅れてる!?
「ここは小中一貫校だから、4階は小中共有スペースもあるんだ」
「へえ……だから、こんなに教室が多いのね」
よかった。少しは話の輪に入れたかも。俺、あんまり説明は得意じゃないんだよね。
あ、そういえば。
「夜桜さんは、絵とか得意?俺は苦手でさ……」
「得意というほどでもないけど、苦手じゃないかな。でも、粘土や工作は器用っていわれるの」
「へー、僕はよくプラモを作ってるから、そこそこできるかな。」
凛空は英語以外最強なの!?でも、会話が生まれてよかった。
やっぱり、学校探検は楽しみながら学ばないと!
俺は、夜桜さんたちと一緒に、学校探検を楽しんだのだった。
「えー……次は3階か。あっちの階段を使おう」
「近いほうの階段を使わないんですか?」
「あー……これにはちょっとわけがあって……」
うわ、珍しく凛空が慌ててる。まあそりゃそうだもんな。
「この先の階段には先生がいるんだ。ちょっと避けて通らないと、厄介でさ」
俺は、いそいで凛空に助け舟を出した。
もちろん、ウソなんだけど。
「早くいこう。タイムイズマネー!」
「ゆ、優空、なんだって?」
「凛空、『時は金なり』って意味。優空、こんなときに英語は使わないであげて」
「そっか、ごめんごめん」
凛空はちょっと赤くなってる。優空はほんとに英語ラブだよな。
夜桜さんが、ほがらかに笑う。
「ふふふ、凛空くんって英語苦手なんだ」
「そうそう、ソーダをそばって読み違えてさ……」
「優空、それまだ覚えてるの?まあ、俺も覚えてるんだけど」
「人の失敗談を勝手に話すなー!」
わっ、凛空が怒った!こういう人は、怒りだすと止まらないんだ!
……でも、夜桜さんが笑ってるからいいか。
「り、凛空。一回落ち着け……って、なんだ?あの集団」
「ひっ、あれは……」
ざわざわと固まっている集団が、こちらをふりむいた。
「キャーーーー、絹谷様よ~!♡」「ほんとだわっ♡」「追って~~!」
ドドドドドド!
「「「「ひいいぃぃぃ!」」」」
凛空たちが、顔をひきつらせて悲鳴を上げる。
「凛空、なんで!?3年生たちをさけて通ったのに!」
「いや、あれは3年生ではなく2年生だ!」
そうだ、2年生もいた!って、納得してる場合じゃなくて!
「わっ……ちょっと、押さないでくださいっ」
このかよわい声は……夜桜さん!
「「颯~~!こっちも助けて~!」」
うわ、凛空たちは、もうあんなところに!
まずい。
ここで夜桜さんを見失えば、ボディーガード失格で、青春どころじゃなくなる!
かといって、凛空たちを見捨てるわけには……
俺の中で、何かがはじけた。
「夜桜さん、つかまって!」
「えっ」
俺は、夜桜さんの手をつかみ、人ごみから助け出す。
あとは————凛空と優空!
でも、あんなに遠くじゃ、俺が行ってもまた夜桜さんを見失う!
————あ、あれなら!
俺は、手をメガホンにして、言った。
「ゆーあ~~!思いっきり、————って、叫んで!演技派バージョン優空で!」
「な、なにその名前!でも、やってみるっ!」
すうっ———と、息を吸う音が聞こえる。真剣な証拠だ。
「大変~!もうすぐで見張りの井田先生が来る!」
「ええっ」「うそ!」「でも、あそこに人影が———」「逃げて~!」
ドドドドドド!
先輩たちの足音が遠ざかると、俺たちは|安堵《あんど》のため息をもらした。
「はあ~、やっと生還!ていうか、颯ってば大胆な作戦を実行したよね」
「真相は……窓から見える理科室の模型が影になって、上手く先輩をだませたってわけか」
「あはは、凛空には分かるんだ」
ま、理科室の倉庫がここから見えるってことを知ってる人は、俺ぐらいじゃない?
「ふふ、井田先生ってそんなに怖いんだ」
「そうそう、怒るとツノがはえるしさ。でも、すごく動物好きらしいんだよ」
あ、優空ってばまた井田先生のことを話してる。
でも、これはこれで楽しいし、先生のことも知れて一石二鳥?
次第に、凛空と優空、颯と夜桜さんに分かれていったとき、夜桜さんが口を開いた。
「あ、あの、青陽くん。さっきはありがとう」
「へっ?」
ドキッ
「い、いいよそんなの。勝手に手をさわってごめん」
「ううん、手を引っ張ってでも助けてくれたよね。本当にありがとう」
夜桜さんは、俺の目を見て、率直に言った。
……そんな目で言うなんて、反則すぎる。
「こっちこそ、学校に来てくれてありがと。ほら、行こう。凛空たちはもう着いてるかも」
「うん」
夜桜さんは、髪をなびかせて小走りで移動した。
っと、俺も置いてかれちゃ、困るな。
いそいで凛空たちに追いつくと、凛空が意味深な笑顔で近づいてきた。
「さっきの颯、大胆だったよね」
「え、なんのこと————」
まさか!
「作戦のこともあるけど、手をつないで————」
「凛空ストップ!」
そこからはシークレット!っていうか夜桜さんにバレててもはずかしい!
「あれは……つないだんじゃないし!引っ張ったの!」
「ふーん、ざんねん」
「なんで優空まで……」
そんなところまで見てたなんて、反則すぎ!
……まあ、《《夜桜さんと本当に手をつないだ》》ってことは、凛空たちには一生の秘密。
「1階まで来たね……」
「ちょっと疲れちゃったかも……」
「僕も、走りすぎて……」
まあ、たしかにあれは大変だったかも。
でも、ここから、ミニサプライズが加わる。
次に向かうのは、1階の購買。
俺が所属しているのは購買部だから、ここに来るのは慣れてる。
……凛空と優空もなんだけど。
「ここが購買ですか?」
「うん。えーっと、ここは……」
凛空……は、すごく疲れ切ってる。説明は無理かも。
「ここは、文房具とか、食べ物が買えるところ。俺と、凛空と、優空はここで部活してるんだ」
「あ、せっかくだから中に入らない?」
優空ってば、あんなに疲れ切ってたのにいつの間に!?
「す、すごい……こんなにたくさん」
夜桜さんが周りの商品を見ていると、複数の人影がとびだした。
パーン!
「「「夜桜楓さん、日の上中学校へようこそ!」」」
「わっ!」
購買部の仲間・|小豆田雄大《あずきだゆうだい》、|水梨るるか《みずなしるるか》、|稲森芽衣《いねもりめい》が、クラッカーを盛大にならす。
俺も、内心びっくりした。こんなに盛大に祝ってほしいとは言っていなかったし……
水)「ふふん、大成功!やっぱり、誰かを祝うのはあたしに任せてよ」
小)「オレはこんなに盛大に祝うとは言ってないからな」
稲)「まあいいじゃん。雄大ってば照れ屋さんなんだから」
俺は、頭に降りかかってきた紙吹雪をはらった。
夜桜さんは……?
「す、すごい。ありがとうございます!こんなに盛大に祝ってくれるなんて……ちょっと驚いたけど」
「どういたしまして!あらためて、日の上へようこそ」
「るるかってばいいなぁ。私も楓ちゃんと同じクラスがよかったのに」
「しかたないだろ。颯のとこのほうが人数が少ないんだし」
よかった。喜んでもらえた。雄大たちも喜んでる……っぽい。
やっぱり、人に喜んでもらえるのは嬉しい。優空も、いつもこんな気持ちなのかな?
あと、るるかがゲストからのプレゼントを用意してるって言ってたけど……
「るるか、ゲストって誰なの?」
「ふふん、それはね……購買部全員、いつも会ってる人!」
いつも会ってる人!?そ、それってもしかして……
裏口のドアが音を立てて開いた。
「楓ちゃんだっけね、ようこそ。これはおばちゃんからのおまけだよ」
いつも会ってる人・|森谷夏子《もりやなつこ》さんが、名物のおいもパンを夜桜さんにさしだす。
森谷夏子さんは、購買のおばちゃん。フレンドリーで、手作りのおいもパンも美味しいから、大人気なんだ。
優空や凛空の人気のおかげでもあるんだけど。
うっ、見るだけでつばがでてきた!ほんとにいつみても美味しそうだ……
「えっ、いいんですか?えっと……」
「森谷夏子です。なっちゃんって呼ばれてるわ」
「あ、じゃあ、なっちゃん、ありがとうございます!美味しそう……お昼に食べようかな」
よかった。お金持ちだから、庶民っぽいのは嫌がると思ってたけど……
もしかして、夜桜さんって甘いものが好きなのかな?
「あれ……?」
ん?どうしたんだろ。凛空が頭を|傾《かし》げるなんて珍しいな。
「どうした?」
「いや、今時計を見たら、7時59分だからさ……」
え?
ほ、ほんとだ。ちゃんと7時59分———
「あ~~~!」
突然の大声にその場にいる全員がびくっとする。
優空だ。
「ごめん、みんな!私、時間をドジって間違えたみたい!」
ウソだろ!?
優空ってば、ドジ中のドジじゃない!?
「「「「「「え~~~!?」」」」」」
「みんな!タイムリミットは1分だ、善は急げ!」
「ごめんなさい~!」「なっちゃん、ありがとうございます、さよなら!」「早く!まだ間に合うっ!」「また井田先生に怒られる~!」「急げえぇぇ!」「職員室の前を通るよ!」「静かに!」
凛空の声に続き、ドドドドドド……、職員室の前だけ、スタスタスタ。と、7人の足音が廊下を渡る。
ぷっ、わざとやってるのが先生にバレバレだ。
その後、ギリギリ、滑り込みで間に合ったけど。
結局、学校探検の1階はコンプリートできずじまいになったのだった。
楓SIDE
「ふう……」
やっと2時間目、終了。
算数は予習のかいがあったのか、簡単に感じた。
「楓ちゃんすごいね!算数、得意なの?」
「私、大の苦手!算数なんかずっと3でさ~」
クラスの女子が、四方八方からやってくる。
わっ、正直言って、こういう質問攻めは苦手。しかも、いろんなひとが、一度にたくさんの質問を投げかけてくる。
お城と違って、騒がしいし、落ち着いて判断できない。なんていえばいいのかわからないから、「ありがとう」とか、「私はこうかな」とかで、ひとまとめで応える。
でも、優空は苦手じゃない。
ちゃんと、次々に質問するんじゃなくて、ゆっくりしてくれる。(初めて会ったときは……まあまあ困ったけど!)
よりそってくれてる気がして、安心する。
それが、好かれる秘訣なのかな、って思ったりする。
「ありがとう。得意ではないけど、好きかな。毎日予習してるから」
「へえ~、すごいね!てか、ごめんね。こういうのは苦手でしょ?」
「え……」
心を読まれた気がして、どきっとした。
”こういうのは”っていうのは、質問攻めのことかな。
「ううん、こっちこそ。あんまり面白くないよね。私の話なんか」
「全然!こっちは聞いてて楽しいよ。よかったら友達になってくれる?」
「えっ、ずるーい!私も、美の秘訣とか教えてほしいな」
優しい。
思った以上に。”はるかに”っていう言葉が、一番正しいのかも。
人って、こんなに温かかったっけ。
「いいよ。もう友達でしょ?」
「もちろん!」
「あらためてよろしくね」
———よかった。
ここに来て。友達をつくれて。
優空たちや、颯くんと出会えて。
「おーい、楓ちゃん、来て!」
急に、優空に呼ばれてはっとする。
窓のふちにもたれかかっている。どうしたのかな。
「なあに、優空」
「えーっとね。特に何にもないんだけど、ほら。颯たちがバスケやってるよ」
「え?」
颯くん?
私は窓をのぞく。そこに、友達に囲まれた颯くんがいた。
———ボールを取られる!
楓がはらはらしていると、颯は一瞬で友達の間をすり抜け、バスケットゴールまで近づく。
入れられる?でも、凛空くんがいる!
颯の前に、凛空が立ちはだかる。
スッ
一瞬だった。嘘みたいに、ボールが入った。
窓は閉めていて音は聞こえないけど、はっきりと、歓声が心の中で響いた。
……かっこいい。
その姿に見とれていると、颯くんと目が合った。
そらそう———と思ったら、颯くんは私に向かって手を振った。
どくどくどくどく……
心臓が鳴りっぱなしになった。こんなにドキドキしたのは、初めてだ。
「あ~、凛空ってば惜しかったね」
「う、うん。ほんとに」
優空に話しかけられて、我にかえる。
ドキドキしてるの、気づいてないみたいだ。よかった。
そのとき、ちょうどチャイムが鳴った。
私たちは、急いで席に着く。続いて、颯くんが隣に座る。
さっきのこともあるから、ちょっとはずかしい。
「次は……っと、社会か。ラッキー」
「颯くんは、社会が好きなんだ」
「えっ!」
あ、しまった。
颯くんって呼ぶの、初めてだった。驚くのも当然だよね。
ちゃんと誤解させないように、落ち着いて謝らなくちゃ。
「ご、ごめんなさい。優空のことも”優空”って呼ぶことにしたの。だから……”颯くん”って呼んでいいかな?」
「もちろん。凛空のことも、好きに呼んであげて」
颯くんが目配せすると、凛空が手をひらっと振る。
「じゃあ、凛空って呼ばせてもらうね」
「夜桜さんも、楓って呼ばせてもらう」
私は小声で言うと、凛空も小声で返してくれた。
本当の友達って感じがして、すごく嬉しい。
あっ、私のこと、颯くんは何て呼んでくれるんだろう。
「じゃっ、じゃあ、か、楓で、いいかな?質問されてたっけ、歴史って武士とか戦うところが面白いから好きなんだ」
「へえ、そうなんだ。私は平清盛|VS《バーサス》源義経が一番好きかな。」
「分かる!特にさ————」
颯くんの好きな教科について知れた。
やっぱり、颯くんと話してると、楽しい。
日の上中学校に来て、本当に良かった。
ここから、私の青春物語が幕を開けたのだった。
図工室の配置に問題があれば本当にすみません。そういう配置としてみてもらえるとありがたいです💦
次回は、運動会(体育祭)でハプニング連続!(変更ありかもです)
ぼくボディは、『事件を解決する』OR『青春、恋愛系』で書いていきたいと思います!番外編もあるかもです
あと!コメントしてくれてるみなさん(ていっても少人数だけど)、本当にありがとうございます!お返事ができなくてすみません。本編ナシのときとかにのせるのでわかっていただけると嬉しいです!
ではまた(^.^)/~~~