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20240418
この投稿からぐぐっと来たら投稿する感じになります。
前週を合わせて5句。
**入社式一人は白きコンバース**
新入社員の集まる入社式は、就活同様黒の革靴を履いて出席するはずだ。しかし、新入社員の一人が白いスニーカーでやってきた。
「なんであいつだけスニーカーなんだ?」
「まったくこれだからZ世代は……」
などと社員はひそひそ話をしながら後ろ指をさしている。スニーカーを履いた人は一人馴染めずに恐縮する。
欧米の文化を受けて、日本でもオフィスカジュアルなどスーツを着用しないで仕事をするものも増えているというのに、さすがに入社式からスニーカーは鳴り物入り扱いなのだろう。
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**風光るピボットの軸は|逞《たくま》し**
大会が近いのか、体育館のなかは熱気がこもっている。
体育館シューズの滑り止めの音がキュッキュッと響く中、バスケットボールの練習をしていた。
今、ボールを保持するプレーヤーが、敵チームに渡さまいとボール捌きを見せている。
秒単位で決められた厳格なルールである。それは片足を軸足として固定した筋肉量のある太い足と、もう片方の足を動かすステップの素早さを見れば、おのずとわかるはずである。
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**|故郷《ふるさと》と同じ遊具や春の風**
上京したてで不器用な新生活をしている自分。
この先やっていけるのか不安な気持ちを抱えたまま、まだ慣れない郊外の町を散歩していると、小さな公園とさびれた遊具を発見した。
こんなところに公園があるのか。あっ、このブランコ、地元と同じタイプのやつだ。なるほど……。
そう思うと、近くに地元が引っ越してくれたみたいで、母親のように陰ながら自分を応援しているのかなと安心した。
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**ふわっとふらここ水平になる手前**
ブランコを漕いでいる。
振り子のように上下運動をしながら自分の揺れが大きくなっていくのを感じる。ブランコに乗った自分が地面と水平になろうとした途端、身体がふわっと浮いていく。
ブランコを漕いだことがある人ならわかるリアリティ、その瞬間を「手前」という単語に凝縮して、詠んだ者たちのあの頃の自分を追体験できるようにしている。
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**廃校や夜がぶらんこ揺すりおり**
四半世紀も経てば、すでに廃校となっているところがある。
日が落ちると、校庭だったところから、キィー、キィーとぶらんこのきしむ音が聞こえてくる。普通に考えれば風の仕業だろうが、昼になると途端に聞こえない。夜だけ、深夜中だけなのだ。
夜になると、廃校全体でぶらんこを揺らして、住民たちを驚かしているのであろうか。
そういえば数日前に某心霊スポット探索系YouTuberが来ていたな。廃校で一夜を共にするつもりだと意気込んでいたが、無事だろうか……