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禪院家の落ちこぼれ
unknown
どうやら、俺の父はどうしようもない人間だ。呪術御三家、禪院家という名家に生まれながらにして、若くして不貞の行為に及んだらしい。…そして生まれたのが、俺だ。
「貴様は我が人生の汚点だ。出ていけ。二度とその顔を見せるな。」
煩い。産ませたのはどこのどいつだ。糞親父め。
「この禪院扇、これより貴様を息子ではなく、知らぬ家の知らぬ子として扱おう。さぁ、早急に出ていけ。荷物はこちらで処分する。」
俺は5歳の時、父、禪院扇から勘当された。俺の母は、俺を産んだきり姿を見せない。俺は5歳にして、家と家族を同時に失った。
「んで?こいつ?禪院家の落ちこぼれ、不貞の子って言われて捨てられたヤツは」
俺がすべてを失ってから10年と1年が経過した。俺はすでに、禪院家という枠組みから遠く外れたために、孤児院で人生を過ごしていた。そんな折、俺の元に、目に包帯を巻き、白髪の男が姿を見せた。
「や。初めまして!僕は五条悟。呪術師だ」
呪術師。見慣れない単語に、俺は当惑した。しかし、その言葉は、奇妙な安心感を伴って俺の心に届いた。そして、それは、俺が幼いころから見えるものに関係があるのかもしれない。そう思わせた。
そこからあれよあれよという間に、俺は呪術高専という教育機関に入学した。東京校との人数につり合いを持たせるため…だったか、俺が入学したのは京都校なるところだった。しかし、俺は長年を孤児院で過ごしたため、義務教育課程の知識がまったくと言っていいほどない。かつて禪院家で受けさせられていたため、簡単な英語は理解できるが、それだけだった。
「僕は東京校の教師だからあんま口出しとかできないけど、京都校はぶっちゃけレベルがウチより低いからね。底上げ頼むよ」
「底上げ…ですか?」
俺は混乱した。当然である。己の肉体に刻まれている、術式というやつが何かすら分からないのだ。
「でも先生、俺は術式というものが何か、全くわからないんですが...」
「ん?あー、まぁ大丈夫っしょ。京都校の教師が教えてくれるんじゃない?...京都校の生徒だって、なかなかに個性的な子が多いよ」
なるほど。教えてくれるのか。ならいい。...勉強はどうするのだ、勉強は。
「あー...でも、一人だけ君と折り合い悪そうな子がいるね」
「…?」
俺と折り合い付かないやつ、だと?俺はこれまでの人生、殆どを人とかかわらずに過ごしてきた。そんな俺としがらみのある人物となれば...
「禪院家のヤツですか?」
先生は答えず、ただニヤニヤと笑っているだけだった。
「さ、そろそろ行っといで。君は今日から、呪術師だ。...期待してるよ」
その言葉を背中で受けながら、俺は呪術高専京都校の敷地に足を踏み入れた。
門をくぐり、一度振り返った。しかし、そこには先生はもういなかった。
「呪術師...か」
俺は呟き、高専へと入っていった。
扇結構好き