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路地裏の中華ガチャ
いちごりら
金曜日の夜、俺の胃袋は「反抗期」を迎えていた。 健康診断の結果? 知るかそんなもん。今の俺が求めているのは、サラダチキンでもスムージーでもない。「茶色い暴力」だ。
ふらふらと吸い込まれたのは、看板のネオンが半分死にかけている町中華『昇龍』。店主は、首に巻いたタオルが油の粒子でコーティングされたような、頑固そうな親父だ。
俺「……親父、レバニラ炒めと、餃子。あと、瓶ビール。それと――」
俺は品書きの隅、手書きで「中毒性あり」と殴り書きされたメニューを見つける。
俺 「この『悪魔のスタミナ炒飯』ってのもくれ」
親父はニヤリと不敵に笑った。
親父「兄ちゃん、明日の仕事は? 匂うぜぇ、これ」
俺 「明日なんて来なきゃいいと思ってますよ」
親父「合格だ。待ってな」
まず運ばれてきたのは瓶ビールと、主役を食う勢いの餃子だ。 表面は
パリッ
なんて可愛いもんじゃない。
バリッ!
と、まるで薄氷を砕くような快音が響く。中からは、ニラとニンニクの香りをこれでもかと詰め込んだ肉汁の弾丸が飛び出してきた。
俺「熱っ……! ふ、ふはっ、旨めぇ……」
冷えたビールで、火傷しそうな口内を強引に冷やす。喉越しという名の快楽が、仕事のストレスをまとめて胃袋へ流し込んでいく。
そこへ、親父がフライパンを爆破させるような勢いで煽り倒したレバニラが登場する。
親父「はいよ、鉄分補給だ」
レバーは一切の臭みがなく、表面はプリッと、中はレバー特有の濃厚なコクがとろけ出す。シャキシャキのモヤシには、オイスターソースベースの濃い目のタレがドロリと絡み、俺の理性という名の防波堤を粉砕した。
そして、真打ち。**『悪魔のスタミナ炒飯』**が机に置かれた。 見た瞬間、俺は確信した。これは「食い物」の顔をした「燃料」だ。 黄金色の炒飯の上には、これでもかと刻まれたニンニクの醤油漬けと、カリカリに焼かれた豚バラ肉。頂上には生卵の黄身が、今にも決壊しそうに鎮座している。
俺「おいおい……これ、致死量のニンニクだろ……」
親父「死なねぇよ。元気になるだけだ」
俺は震える手で蓮華を突き立てた。 黄身を崩すと、熱々の米に黄金の川が流れる。それを一気に口へ放り込む。
ッ……!!!
暴力だ。味の、暴力。 醤油の焦げた香ばしさと、ラードの甘み、そしてニンニクのパンチが、三位一体となって脳の報酬系をフルボッコにしてくる。
俺「……親父、これ、合法かよ」
親父 「うちの店じゃな」
俺は無言で、ただひたすらに蓮華を動かし続けた。 一粒残さず平らげ、皿にこびりついた脂すら愛おしくなった時、俺の腹はパンパンに膨れ上がり、呼吸すら少し苦しくなっていた。
俺「……ごちそうさま。最高だった」
親父 「おう。明日、誰かに殺されそうな匂いさせて帰んなよ」
店を出ると、冷たい夜風が火照った顔を撫でる。 だが不思議と寒くない。
俺の胃の中には、明日を生き抜くための「汚くて最高のエネルギー」が、パンパンに詰まっているからだ。
2連続のチャーハンでしたねー。食後に書いたらダメですねー