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PROLOGUE 土砂降りの日に
主人公設定です
https://tanpen.net/novel/83eff3cb-25f3-40e2-9964-59d6b30ff990/
グシャリグシャリ、ザァザァザァザァ_
霧のかかった英国の、雨に濡れた石畳の上を、傘も差さずに笑みを湛え悠々と歩く男が一人いた。
曇天から弾丸のように降り注ぐ雨粒は、そのオリーブアッシュの長い結髪と、先端まで綺麗に整えられた長い睫毛をしとやかに濡らしている。
彼を挟むように立ち並ぶ煉瓦造りの家々は、空の濁りを受けて彼の表情とは対照的に悩ましそうな色を放っていた。
その建物のうち一つの路地裏の入り口で、彼は足を止める。
そしてその細い闇にまるで吸い込まれるように入っていった。
その奥には男の胸ほどの高さの、子どもの秘密基地の入り口のような小さな扉がある。
ひんやりと冷えたドアノブに手をかける。
扉はドアベルを鳴らして滑らかに開いた。
「ただいま帰りました。」
男は無駄にだだっ広い、音楽ホールほどの広さのこの部屋で、自分の声の反響に耳を澄ませた。
そして電気のスイッチを入れて天井のシャンデリアを点灯させる。
眩い灯りに一瞬目を瞬かせた男であったが、すぐに慣れると辺りを見渡した。
椅子はテーブルの上に逆さにかけられており、そのセットがいくつも並んでいる。
床は綺麗に磨き上げられ、シャンデリアの光を反射している。
そんな豪華な部屋だが、中には誰もいない。
「あぁ、今日は一年に一回の休日でしたね。さてと。」
彼、このレストランのオーナーであるジョン・リドゥルは、だだっ広いホールの奥にある廊下に向かってカタンカタンという小気味よい靴音を立てながら歩いて行った。
不思議なことに先程まで雨でずぶ濡れだった衣服と髪は、部屋に入った時にはすでに乾ききっていた。
廊下の突き当たりの扉の前に立つと、ふと、ジョンが笑みをこぼす。
「ふふ、楽しげに動き回っていますね。」
コートの、右のポケットを手で探り、とあるものを取り出す。
取り出したものは透明な手のひらサイズの小瓶だった。
その小瓶の中をみると_
親指の爪ほどの大きさの、青く輝く蜘蛛が大量に収められていた。
その蜘蛛は宝石のように光を反射させながら瓶の中でウゴウゴと蠢いている。
その様子を満足そうに笑顔で眺めて、ジョンは自室の扉を開ける。
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翌日。
ジョンは扉から出てくる。
昨日と全く同じデザインの黒スーツと高級ブランドのロゴがちらりと見える深緑色のネクタイを身につけ、隙のない笑顔を貼り付けたまま。
ホールに入ると馴染みの顔があった。
「おはようございます。」
馴染みの面々に軽く挨拶をした後
「早朝早々申し訳ありませんが、お願いがあります。」
そう言って不気味な笑みを浮かべた。
ついに始まりました!「違法で魔法なレストラン」!
自主企画参加キャラの登場順番は、「主人公との出会い方」に記していただいたものや役職から考えて、ストーリーに都合の良い順番で登場させます。ゆえに参加順というわけではありません。もちろん贔屓とかもありません。気長にお待ちください!