公開中
憎らしいあの人
私は、美人だ。目鼻立ちの整った顔をしていると思う。だって私が通るたびに、すれ違う人たちはみんなして振り向くの。だから私は、きっと凄い美少女なのよ。それでいて、そのことを他の人たちに自慢したりしないのよ。こうやって、自分の心の中におさめておくの。私ってば、完璧なのね。私は美人な私がとっても好きなのよ。……でもね。私には、嫌いなものがあるわ。それはね、醜い人よ。中身の話じゃないわ。外身……外見の話よ。だってそういう人って、美人を妬むじゃない?美人は美人を妬まない。だって、いくらその人が美人でも、自分もそうだって分かってるから。それに、妬む必要がないくらい、最高の人生を送っているからよ。でも醜い人たちって、最低な人生しか送ってないじゃない?そこはちょっと可哀想だけれど、だからって妬んで恨んで憎んでっていうのは違うじゃない?だからね?私は醜い人が嫌い。あら、何をそんなに他人事のような顔をしているの?貴方よ。貴方のことよ。私は今、遠回しだけれど、貴方の話をしているの。ねぇ?分かってるんでしょ?本当は、自分のことだって。目を見れば、分かるわよ。いいえ、目を見なくたって分かるわ。何故って?————貴方のことが、大っ嫌いだからよ。
私は、目の前の鏡を叩き割った。
好きの反対は嫌いじゃないなら、嫌いは好きな類語かもね?