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又旅浪漫
カサカサ、ペキ、
出口が近づくにつれ日光の明るさが増し
同時に湿度も下がって行くため
辺りの地面は乾燥した音を立てている。
「今日は静かで歩きやすいな。」
ネコ歩きで
前足が踏んだ箇所を後足で踏んで歩く、
を繰り返し俺は獣道の出入口付近にいた。
余計な音やリスクを回避した歩き方だが
意識して歩くと少し疲れる。
リスの道具屋に到着した。
留守じゃなければいいが...。
コイツは森の中でも
気配を消すのが特に上手く、
いつも顔を見るまでは存在を確信出来ない。
「おおい。道具屋のリッサン、いるかい。」
ギイギイイイギイイ
杉の枝や薔薇の|蔓《つる》で防護してある横の
目印である"杉板"を掻き鳴らしてみる。
カサ...カサカサ...
出てきた。こいつが道具屋のリッサンだ。
まあどこの山にでもいる普通のリスである。
だが酷く怯えている。
「そう呼ぶのはキヨシさんしかいないから
出てきましたけど...一体何してるんですか」
「ニンゲンのオッサンからとっているんだ。
悪くないだろう。しかし、
そんなにプルプル震えてお前こそ、」
いかん。
あまりに振動しているもので、危うく
ヒトのように笑ってしまうところだった。
笑い方などよく分からないが、
ほっぺのあたりがワクワクした。
ネコに"笑う"という概念はないのだ。
「え、いや知らないんですか...」
リッサンが続けて言う。