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その9 弟子騒動
自室…という名の研究室で今日も自分は独り、薬の研究に励んでいる。何に使うわけでもない、ただの趣味だ。
「ガチャッ…外唖!少しいいか?」
「おぉ、碧空か!どうしたんだい?」
「風邪薬って作ること……出来るか?」
「まぁできるが…それがなんだよ?」
「いやぁ…少しあるヤツが風邪引いちまってよ…」
「そういうことか。ああ、任せてくれ!…とはいえ症状が分からないと適切なものを処方できない。そいつに会わせてくれないかい?」
「OK!着いて来い!」
前言撤回。使う機会が来たようだ。
「コイツだぜ!」
「ゲホッゴホッ…碧空?そこの者は……?」
「初めまして。自分は黒骸 外唖。…坊やの名前を教えてくれるかい?」
「……日輪天道。」
「Sorry外唖!コイツ少し人見知りなんだ!」
「はっはっは!構わないさ!…っと、天道、よかったら今のお前さんの体調について詳しく教えて欲しい。」
「ゲホッゴホッ…咳出る。鼻水出る。熱ある。ゲホッ…」
「ふむ…喉や頭の痛みは?」
「ある。ゴホッ…」
「成程…大体わかった。ありがとう。」
「ゲホッ…」
「……Sorry外唖!オレ少し業務があるから頼んだぜ?」
「ああ、任せてくれ!上手くやるさ。」「……」
症状的には…恐らくあれとあれだな。幸いにもストックがある。
「よし、じゃあ自分は少し席を外す。待っててくれ。」
「分かった。ゲホッゴホッ…」
よし、一度自室に戻るとして…右から三つ目の棚にあるはず。…あった!使用期限は…問題なし。持っていこう。
「入っていいか?」
「問題ない……ゲホッ」
「ん、ありがとさん。で、お前さんにプレゼント。」
そう言って自分は薬の入った袋を差し出す。
「これは……?」
「薬…といって聞いたことがあるかい?」
「ない。ゲホッゴホッ…」
「はっはっは!だろうな!今はお前さんの体調を良くする手助けになるもんとでも思ってくれ。」
「……これどうすればいいの?」
「この袋の中にはさらに小分けの袋がある。それを取り出してくれ。…中に粉があるのはわかるかい?」
「うん…」
「その粉を水と一緒に口ん中に流し込む!…できれば飯を食った後がいいが。」
「…危なさそう。」
「咽せなきゃ大丈夫さ。あと、一回につき小分けの袋一つ分な?」
「…これで治るの?」
「しっかりそれを飲んで、飯食って、寝る!それさえすれば治る。」
「ふぅん…飲んでいい?」
「待て、お前さん、飯は食ったか?」
「全然…」
「なら軽く食った方がいい…空腹時に飲むとかえって身体に悪いからな。」
「…食欲ない…ゲホッ」
「軽くでいい…口に入る量で。…自分でよけりゃ何か作ろうか?」
「…お願い(ボソッ)」
「ん、分かった。食材は借りるぞ。」
そう言って台所と食材を借りて適当に料理を作った…。…期待はしないでくれよ?簡単な調理しかできないんだから。
「っと…はい、スープ。食えそうか?」
「…いただきます。」
「ん。」
「…✨」
「美味いか?」
「コクコク…」
「はっはは!そりゃあ良かった!まだあるから食べられる分だけ食べてくれ。」
「……✨」
…結局天道は鍋にあるスープを完食した。口にあったのは良かったし何より食欲があるのはいいことだ!これなら案外早く治るかもな。
「…薬…」
「ああ、さっきの説明通りだ。水は用意した。」
そう言って水の入ったコップを差し出す。
「…ゴクッ!……苦い」
「苦いか。水をもう少し注いでこようか?」
「…(首を横に振る)」
「分かった。もう一種類あるがそれも飲めそうかい?」
「……ゴクッ!……苦い」
「だろうな!基本は苦いもんさ。」
「後は夕飯を食べた後にまた飲んでくれ。朝と夜の食後。そしてしっかり睡眠をとる。できるかい?」
「頑張る…」
「よし、じゃあ自分は部屋に戻る。お大事にな。」
そう言って自分は天道の部屋を立ち去った。
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後日
「く…黒骸さんっ!」
「ん?日輪だったか。どうしたんだい?」
「あっ…この前はありがとうございました!」
「いいさ。それより体調は?」
「全然回復しました!あの…それより…その…」
「ん?」
「あの…黒骸さんの…弟子にしてください!✨」
「……ん???」
「弟子に…してください!!✨」
「弟子…????」
「はい!!!」
「…」
多分、この時の自分は酷く動揺していたんだろう。
「…碧空!!!助けてくれ!!!!!!!」
…こんなことを大真面目に叫ぶくらいにはな。
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「かっかっか〜(笑)なんて事もあったな!………お師匠!今では儂…一人前の薬剤師になれていますでしょうか?」