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【赫霊】魔の怪異研究会@妖学院
ただ、紅、紅。
赤黒く、臙脂色。
そこにあるのは、べしゃりと地面にくっ付いたまだ温かそうな鮮血、肉塊、鮮血。
その光景を、ぼんやり眺める少女がいた。
彼女は、守れなかった。
「…そん…な……」
自分の些細なミスで、三人程は死んだ。
(……わたし、殺しちゃったのかな…)
治癒魔で癒せば治るか。
いや、原型がないと元には戻せない。
「間に合ったっすか?」
不意に声が掛かる。
振り返ると、黒味がかった蒼色髪の少年が。
「……駄目…だった……」
少女ーー|雅《みやび》の顔はもはや蒼白で、血の気が無かった。
少年は、感情が完全に無いというような真顔。
そのまま、肉塊達の方を見る。
「やりましたっすね〜、先輩」
むしろ楽しむような声色で、少年は呟いた。
「『天秘めたる力よ彼の者たちを癒せ』」
「だから、無理なんだっ…」
少年が詠唱した直後。
みるみる内に、肉塊達は原型を、…。
やがて、人型に戻された。
「…っ!?」
雅は、信じられなかった。
確かに|煌音《ひね》は「最高の力を持つ奴」と言ったけれど。
こんな回復力は、神格以上。
「時間を戻してください」
いつの間にか雅を向き直っていた、少年ーー|琉生《るお》。
「わ、分かった」
突然のことに狼狽えながらも、雅は
「『時刻む、様逆にて』」
呪文を詠唱し終わると。
ただの肉塊だった者たちは、立っていた。
人型を保っている。生きている。
不思議そうに、こちらを見ている。
***
「るおったら、まさかあんな<超回復>という強力な呪をーー」
さっきからあの台詞しか話せなくなった雅に付き合わされているのは、|柳樹《ゆうき》という銀髪黄瞳の男。
「ぁぁぁあ、もう分かったって、てか知ってたって」
柳樹は呆れたように、というか呆れて耳を塞ぐような仕草で机に突っ伏している。
「雅ィ!部長とか先生じゃないけど部長とか先生みたいな位みたいな人に迷惑かけて」
「部長だって〜っ!」
誰もが馬鹿馬鹿しいな、と呟くその光景を静かに眺めている少年。
名は|彾雨《りょう》。
顔に被る前髪を、貸してもらったヘアピンで留めている静かそうな年頃十四歳ほどの少年。
彾雨は頬杖をついて、無表情のまま。
「ねぇ、そういえば〜、お菓子持って来たんだよ私。暇人部長の奇行に付き合わされるの面倒なので!」
「言ったな貴様ッ!!」
「お菓子という洋菓子…ケーキ何ですけど。いりませんよね、部長は」
「いるているてめちゃいるーーッ!!」
「彾雨くんはケーキ、食べます?」
「…ケーキとは?」
彾雨は聞き返す。
…柳樹は「無知だなさては」と呟く。
「ケーキとは、洋菓子の一種で、ふわふわしたスポンジに」
「…ぼくが肉食と知っていて?」
《《まさか》》の告白に、三人は恐怖する。
「にっ…肉食系男子!?ずっと草食系男子だと捉えてました!!申し訳ありません!先輩!」
「?」
肉食系(性格)とは、恋愛等において積極的な若者の呼び方であり、草食系(“)とはその対義語だ。