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20.課外授業1
さっきの先生からか、クラスメイトからか、もう噂が回ってくれたのだろう。次からの授業では、先生たちにはいつも通り、当てられずに済んだ。誰だか知らないけれど、噂を回してくれた人に感謝するわ。
そして、放課後。
わたくしは、教室から出ると、リルトーニア林の学園から一番近いところに向かった。下見だ。
わたくしは、別に明日の課外授業を楽しみにしているわけではない。
ただ、この前、あの先生の言い分を認めるのなら、神々のせいとなるけども、一般的には危険と呼ばれている目に合いかけたのよね。
リルトーニア林は、一般的には強いと言われている魔物も多くいる。だから、危険なものに逢うかもしれない。けれど、あのクラスにそこまで強そうな人はいなかったような気がするのよね。だから、下見に来てみた。
この前、わたくしが行ったときは強めの魔物に多くあっていたのかもしれない…考えてみれば、という感じだけれども。
剣も準備した。危険なものがいたらすぐに排除できるはずだわ。
「やぁ、クラン・ヒマリア。」
「誰ですか?」
「あぁ、そうだったね。俺が一方的に知っているだけだった」
最近、一歩的に知られているのが多いわね。どうしてか不愉快に感じるわ。
「俺はここくんの友達。土と呼ばれている。」
「ここくん?」
「心だよ。俺はそう呼んでるんだ。」
あぁ…神様なのね。
「あなた達って地上に降りれるの?」
「俺は降りれるぞ。」
「そう、それで何の用かしら?そういえば、先生が予想していたけれど、ドラゴンはあなたが寄越したの?」
確かに土の神は生と死を司ったりもするくらい、生き物にも関わってくる。別に関わっていてもおかしくないように思えるわ。
「そうだ。」
「ありがとう。」
「え?」
何を驚いているのかしら?ドラゴンなんて貴重なものを贈ってくれて感謝しないわけがないじゃない!
「お陰で貴重な素材が手に入ったわ。」
「あれ?俺は喜ばれるためにあれを贈ったわけではないのだが…まあ喜んでくれたのならそれでいい。今度、また強いのも贈ってやる。」
「いいの!?」
「なぜ、そこで喜ぶんだ?」
「だって…飽きてたんだもの。み~んな一撃で死んじゃってつまらない。」
「そうか…どうしようか…贈るのやめようかな…」
「え!?」
ちょっと!?そんな悲しいことしないでほしいわ!
神だからって自由すぎるし酷いわよ!
「うん、贈るのはやめよう。贈ってしまう動物に申し訳ない。」
「…神々って無慈悲だと思っていたけれど、申し訳ないとかは感じるのね。」
「当たり前だろう!」
「なんか安心したわ!」
ふふふ…と笑うことはできず、あっはっは、と口を大きく開けて笑ってしまった。
「ごめんなさい。この笑い方は見逃して。」
「別に俺は貴族ではない。気にするな。それに…これのほうが楽しい。暇つぶしになる。」
「暇つぶし…神々は本当に暇つぶしでこの世界を作ったのね!」
また笑ってしまった。
「あ、土。」
「なんだい、俺を呼び捨てにする失礼な人間。」
「あら、ごめんなさい。明日、多分この森に来るんだけど、そのときは何も贈り物をしないでね。」
「それ、俺達の性格を知ったうえで言っているのか?」
「あぁ…そうだったわね。…けど!わたくしには心からの呪いがある。だから『約束』してくれれば大丈夫よ。」
「するわけ無いじゃんか。」
「えぇ…じゃあちょっかい出すなら今にしてくれる?」
「ヤダ。」
あら、これは「約束」かしら?
「あ、今というのは今から24時間以内のことね。約束してくれてありがとう。」
これで土は明日のこの時間までちょっかいをかけてこないことが確定したわ。安心して挑めるわね。
「この俺を…引っ掛けるとはいい度胸だな。」
「ふふっ。褒め言葉として受け取っておきますわ。」
「また会いに来るね。」
あら?あらら?
「あなた神じゃないの!?そんな簡単に人間に接触して言い訳がないでしょう!?神聖さも糞もないわよ!」
「いやぁ、もともと俺達には神聖さなんてないからな。」
「あら…そうなのね。かわいそう。」
「ちょっと!?なぜ俺が憐れみを向けられているんだ!?」
「ではまた、土の神。お気をつけて。」
土の神は、帰るとき、
「クラン・ヒマリア。君のことが気に入った。」
そう、呟いたのは、神々しか知らない。
疲れた…。
さぁ、さっそと討伐して帰りましょう。
まったく、土の神め。あなたのせいで時間を結構使ってしまったじゃないの。
急いで討伐にかかる。
強めの動物は…一体いた。まぁこれも一撃なんだけれど。
これが明日出ていたらわたくしまで仕事が回ってくるところでしたわ。
「クラン様!」
「ノア!?なぜあなたがここにいるの!?一応危険な森なのよ、ここは。」
なぜかノアがいた。神出鬼没な子ね。
「皆のために、先に安全を作っておくとは…流石です!」
あら、処世術を見られてしまったわね。そして、何か勘違いされているわ。
「わたくしは明日わたくしが動かなくてもいいようにやっているだけよ、それに、本当にみんなのことを思うのなら、魔物は残しておくべきよ。」
説得出来た…はずよね?
さすがにそこまで物わかりは悪くはないだろうと思い、ノアは置いて、帰ることにした。
いかがでしょうかねーちょっとは意外に感じていただければ嬉しいです。